第四十話 こだわり

遊び物、男の道具、こういう物にはそれぞれのこだわりというのが出てきます。それは性能である事もありますが、見た目の渋さやこのカーブが何とも言えないとか、他人から見たらつまらない事に見える事もありますが、そういう事がとっても大事な事だろうと思います。それは美的センスであり、遊び心です。そこに理屈は不要なのです。

ヨットに関して言いますと、レーサーならば速いという条件が最優先されます。もちろんレーティングを含めて勝てる船という事になるでしょう。クルージング派にとっては、速さという事も無視できませんが、もっと大事な事があります。極端な言い方をすれば、乗り心地が良いとか、キャビンが広いとか、装備が良いとか、そんな事よりもっと大事な事がある。それは見た目の美しさではないかと思います。総てではもちろん無いんですが、かなり多くの部分では見た目がかなりの部分を占めてくるのではないかと思います。もっと言うと、使い勝手とかよりも見た目のデザインを優先する場合も無きにしもあらずではないでしょうか。その美しいヨットをかっこよく乗りこなしたいと考える。ここはとっても大事なところです。

どんなに性能が良くても、装備が良くても、安くても、理屈で選んだ場合、実際の運営上では気に入らないところもでてくる。そうすると、どうしても気持ちが離れてくる。そう思います。でも、理屈では無く、どこかこだわりの部分で、感覚的に気にいった部分があると、それは同時に他の部分も受け入れていることになり、よっぽどひどい何かが出無いと、そのヨットを気に入らなくなるという事は無いと思います。そのいろんなこだわりの中で、見た目というのは非常に大きな要素ではないでしょうか。

昔、外車自慢で、雨漏れはする、電気系が壊れるとか言って、困るような口ぶりなんですが、顔は笑ってる。そんな人がたくさんいました。壊れるのは困りますが、そのスタイルとか、速さとか、そういうのが他には無い心地良さをもたらしてくれる。そういう事はとっても大切です。特にヨットなんかは実用性が無いわけですから、ここは他のヨットでは味わえない素晴らしい感覚をもたらしてくれるという事が魅力であるし、遊び心におは必要な要素だろうと思います。

しかしながら、実用性は無いにもかかわらず多くの人達は、価格と理屈で選択する事が多い。もちろん、価格は重要ですが、その気に入ったヨット、どこが気に入ったのか、それがキャビンならば、そのキャビンを最大限に使う演出をする事が大切だろうと思います。それはキャビンが主役になるし、それで良いと思います。その代わり、セーリングとかで多少不満でも、それは仕方無いと受け入れる事が必要です。逆に、見た目のデザインが気に入って、それをかっこよく走らせる、乗りこなす事を夢見たならば、それをおおいに楽しむ演出が必要ですし、それができたら、キャビンに多少不満があっても、それは許せる、受け入れる事ができるんだろうと思います。

大きなキャビンを買って、それを使う演出をあまりせずに、セーリングに不満を持つ、或いはその逆の場合、これではヨット遊びはできません。気に入った部分をおおいに演出する。そうすれば、他の部分は笑っていられる。総てを満足させる事はなかなか難しいので、どこがポイントであるのかそれを知る事、演出する事、とっても大事な事かと思うのです。しかしながら、そうでは無いケースが非常に多いと思います。その選択は間違っている。でも、みんなが同じ選択なので安心なのです。でも、それで良いんでしょうか?

ヨットは外洋に行くという事以外は、セーリングこそが重要視すべき事と考えています。もちろん、どんなセーリングを望むかはまた意見が分かれるところでもありますが、とにかく面白いセーリングが優先されるべきと考えています。そして、美しいヨットです。美しいヨットを美しく乗りこなす事以上に素晴らしい体験は他には無いと思っています。ですから、ヨットは美しくなくてはいけませんし、その為には多少キャビンを犠牲にしても構わないとも思っています。その犠牲になったキャビンを狭くても受け入れる事ができます。その受け入れる事が苦でも無く、笑っていられます。

総ての方がそうではありません。キャビンを優先した方はセーリングを犠牲にした。ならば、セーリングを笑って受け入れる事が必要です。その分キャビンが楽しくないいけません。私の見るところ、多くの方々の選択は間違っています。キャビンを買って、そのキャビンを楽しく演出していない。
キャビンを買ったら、セーリングはそこそこに、キャビンをおおいに使いましょう。キャビンを居心地の良い空間にして、ハーバーライフを満喫しましょう。それが出来るなら良い。

セーリングヨットを買った人は、どんどん乗って、熟達して、乗りこなせるようになって、美しくセーリングできるようにしましょう。中途半端はいけません。その両方を充実させようと思うと、サイズを大きくしなければなりません。当然価格も上がれば、気軽さを確保しておく事ができるかどうかも問題になります。

私は、構造のしっかりしたヨット、美しいヨット、そういうヨットを美しくセーリングできるようになりたい。それで充分です。是非、自分のこだわりを最優先して、満足のいくヨットライフを満喫して頂きたいと思います。自分らしさを演出していただきたいと思います。どんなに良いヨットでも、総ての人に良いわけではありませんし、どんなに速いヨットでも、どんなにキャビンが広いヨットでも、総ての人に良いわけではありません。ただ、欧米ではキャビンヨットが良いという人が多い。彼らのキャビン演出は上手です。それで量産艇はみんなキャビンヨットに力を入れています。一番市場が大きい
それにチャータービジネスという大きな市場もありますから、そうなる。でも、日本の事情は違うと思うんですが。欧米のヨットは遊びではあるんですが、暮らしの中に随分入り込んでいるような気がします。その点、日本はまだ遊びなんです。それにはこだわりが無いと、遊べない。暮らしでは無いんですから。

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