第八十四話 CITY SAILING

周りに島々があって、自然が満喫できて、きれいな海があれば、ヨットマンとしてはあこがれでしょう。そんな海で、自由自在にセーリングしたいですね。しかしながら、都会に住む方々が、それを実現するには、都会から遠く離れたマリーナにヨットを置くか、長時間かかって、ヨットでそこまで行くかのどちらかです。遠くに置くと、行きは良いのですが、帰りのドライブはかなりしんどい事になります。それを思うと行くのが億劫にもなります。それで、今度は都会のマリーナからそういう所に行くには、日帰りは無理。泊まりになる。そうすると、いつでもというわけにはいきませんね。

それで私の提案はシティーセーリングです。きれいな風景は高層ビルに変わり、きれいな海とは行きません。でも、そこで、ヨットを自由自在に乗りこなす乗り方です。
全ては考えようですから、この際、シティーセーリングと割りきって、都会人は都会人らしく、その代わりおしゃれに、粋にヨットを乗りこなしてはいかがでしょうか。それには美しいヨットが似合うし、大きすぎるヨットは無粋です。小粋なヨットを、気軽にさっと出して、セーリングを堪能してくる。それにはシングルハンドが良い。だれかを誘っても、シングルで自由自在に操船できるのが良い。遠くになんか行きません。荒波なんか越えません。なんせシティー派ヨットマンは荒波を乗り越えるよりも、美しいセーリングを目指す。

ですから、セーリングはビシッと決める。美しく走る。滑らかに走る。ホームポートから10マイル圏内ぐらいですか、それでも結構な広さです。スピードを追求して、細かいセールトリムに確かな舵操作、そういう乗り方はいかがでしょうか。ヨットの持つ知性に挑む乗り方です。それとヨットの微妙な変化さえも楽しむのり方です。

ヨットというのは、簡単な操作でもそれなりにも前へ進む事ができます。でも、やろうと思えば、それぞれの艤装が複雑に影響しあう。する事はたくさんあります。ワイルドな外洋をオフロードの車に例えるなら、これは都会派のスポーツカー的乗り方になります。知識をフルに使って、軽い肉体の運動と頭脳の運動を楽しんでくる。それは最高の感覚として返ってきます。

外洋としてのナビゲーションなんかは必要無い。舵に伝わる微妙な感覚を得ながら、セールを細かくトリミングして、快走を目指すんです。スムースなタックとジャイブ、自由自在に、手足の如く、人馬一体ならぬ、人船一体を目指す。それには何十時間も続けてヨットには乗らない。せいぜい4,5時間ぐらいでしょうか、1,2時間でも良い。出航準備は10分以内、さっと出るのが良い。もたもたしててはいけません。

こういう乗り方はいかがでしょうか。そりゃあ、田舎の方へ行けば、島々があって、美しい風景ときれいな水。それはそれは羨ましい、あこがれでもありますが、近くに無けりゃ仕方がありませんから、都会に住む人は諦めて、その代わり、カッコ良く、スポーツカーのように乗り回してはいかがでしょうか。

そういうヨットには、荷物はたくさん積んじゃいけません。いつも身軽で、小奇麗に、短時間ですから荷物も少なく、その日に必要な分だけを持ち込む。こういう乗り方にはある程度うまくなる必要がありますが、その気になれば、すぐに慣れます。良いヨットは助けてくれます。それにちょっと小型なら、慣れる。操作もし易く、大きなパワーも不要。頭脳と少しんばかりの体力、軽いスポーツ感覚で、縦横無尽にセーリングをするんです。頭脳と体と心にちょっと汗をかいてスポーツを満喫する。
これが都会派のシティーセーリングです。

是非、シティーセーリングを目指して下さい。都会派は美しいセーリングをめざしましょう。これこそデイセーリングの真骨頂です。シティーヨットマンにはデイセーリングを!

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