第六十六話 ゲストを招待

ゲストを招待するのも楽しみのひとつです。ヨットの楽しさを味わってもらいたいと誰でも思います。危なく無いように、ゲストにはコクピットに座ってもらって、爽やかに、緩やかにセーリングをする。
コクピットに座ったゲストは、始めて乗るヨットに感動するかもしれません。オーナーは気を使って、コーヒーやビールでもてなしをします。たまに舵を握らせてその感触をほんの少し味わってもらう事もあるでしょう。

でも、そうやって、穏やかに、1時間が過ぎ、2時間が過ぎ、おしゃべりに興じるしか面白さが無くなってくるかもしれません。そうやって、多くのゲストが社交辞令的に、また今度乗せてくださいと言いながら、2度目は無いか、ずっと後かになってしまう。

ゲストにとって安全確保は大事ですが、爽やかとかいう事は長くは続かない。おしゃべりに興じるも
それは必ずしもヨットである必要性も薄れてくる。ですから、ヨットの面白さを少しでも見せてあげる事が必要かと思います。それが地上では味わえない感覚、グッドフィーリングではないでしょうか。
風が無い時は仕方無いですが、ある程度あるなら、ちょっとスリルを感じさせてあげる。おしゃべり主体ではゲストも飽きてくる。飽きるという感覚は無いでしょうが、こんなもんかとなるでしょう。楽しいには違いない。でも、また今度という時は、そのうちにで良い事になってしまう。ヨットの魅力はそんなところでは無い。スリルを味わうところにある。

その為には、自分が普段味わっておかなければなりません。自分が習熟していればいる程、ゲストにも味わって頂ける。あるオーナーはゲストを乗せた時、穏やかでおしゃべり中心だった時は、そのゲストは2度目に来る事は少なく、多少スプレーでも浴びたような時の方が2度目に来る人が多いと言われていました。なるほど、解るような気がします。

それはゲストで無くても、自分自身でも同じではないでしょうか。いつも、穏やかに走るとすると、どんな印象が残るでしょうか。2回目、3回目、オーナーは何十回も乗ります。セーリングに駆り立てる動機は一体何でしょう。やはり、スリルとグッドフィーリングの味わい、これ以外に強い動機にはならないのではないかと思います。ゲストも同じだと思います。

野球観戦をしますと、あの美しい球場で始めて野球を見る時、わくわくします。でも、試合がたんたんと進んで、何のたいした変化が無いより、ホームランが出るは、盗塁があるは、或いは、素晴らしいピッチャーの息づまる投手戦の緊張感など、そういう方が面白いになります。

ヨットは味わうものですが、プレーするものです。乗せてもらうよりプレーした方が面白い。ゲストはコクピットで穏やかにセーリングしながら、おしゃべりに興じるより、プレーに参加した方が面白い。例え、何もしていないにしろ、コクピットで左右に移動しながら、スリルを垣間見るのはプレーに参加しているようなもので、それが面白く無いといけません。

是非、ゲストを招待して、ヨットの面白さを味あわせてやりましょう。もし、そのスリルが嫌なら、いずれにしろ、このゲストは2度とは来ない。

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