第六十七話 日本の気候

穏やかで、爽やかなセーリングを期待すると、日本の気候は条件としては、あまり良くは無いようです。寒い冬があり、暑すぎる夏があり、雨も降れば、台風も来る。そんな中で、家族や仲間と気軽な、そして爽やかな快適クルージングをするとなると、年間に何回、そんなチャンスがあるでしょうか。おまけにそれが、週末の土日と重なる日となると、実に少ない。という事は、ヨットは日本のレジャー産業としては、なかなか難しい事になる。

昔ですが、海外の大手チャーター会社が、日本に調査に来ていました。その結果は、日本ではチャータービジネスは難しいという結論でした。チャーターでは快適セーリングが可能な日数が安定して必要になります。日本は風がころころ変わるし、波も出る。これでは、チャータービジネスでは安定した運航が難しいという事です。

日本の気候がヨットに向かない?それはある側面だけを見た結論ではないでしょうか。確かに、チャータービジネスという面ではそうでしょう。快適セーリングのレジャー産業としては、そうかもしれません。しかし、見方を変えてみると、つまり、ヨットに対するセーリングの仕方を考え直すと、案外面白いセーリングというのができる気候なのかもしれません。

ヨットが単なるレジャーだけに留まらず、面白いセーリングをする環境として捉える。いろんな変化を持つ日本の環境を、いかにセーリングするかという面白さ追求として考えますと、様相は一変します。確かに、台風の時は乗れないし、冬の雨も嫌ですが、いろんな場面がある日本の海では、今日はこの風だから、こんな風に走るとか、微風とか軽風とか、強風とか、波の具合とかによって
同じ場所でもいつも違うフィールドになります。それがいつも程よい風で、同じ方向から吹いてくるとしたら、快適で、レジャーには持ってこいかもしれません。チャータービジネスには良いかもしれません。でも、面白味には欠けてくる。いろんな環境があるからこそ、それをどう乗りこなしていくかが面白いと考えれば、日本の環境も悪くない。

そういう環境の変化の中で、その時が穏やかで、波も無く、というのであれば、そういう快適、爽やかセーリングを楽しめば良いし、そうで無い時は、それに応じたセーリングをする。つまり、その気になれば、いろんなセーリングができるという面白い環境です。爽やかだけなら、年に数回しか乗れないかもしれません。だから、爽やかも、スリルも、みんな味わうつもりなら、面白くなります。ですから、日本の海は面白いという事になります。

つまり、ヨットをレジャーとみなすと、年間数回のクルージングしか使えません。楽しい時はそんなもん。でも、もっとスリルを味わう、セーリングを堪能する、追及する、等々の姿勢を持つ事が肝要であろうと思う次第です。ですから、日本の海にはセーリングヨットが合う。セーリングする為のヨットが必要なのです。セーリングをいかに遊ぶか、それが日本に合う乗り方だと思います。あるオーナーは昨年1年間に100回近くセーリングをされたそうです。もちろん、デイセーリングのシングルハンドの方です。日本の海で、楽しさだけを追求するなら、こう多くは乗れませんが、面白さを追求していくなら、こんなに乗れるようになります。

日本の海の環境では、ヨットがレジャーとして広がる事はなかなか難しい。いつも同じ快適さを提供する事はできないからです。日本でヨットを楽しむには、面白さを追求する気持ちが必要ではないかと思います。面白さとはいかにセーリングするか、スリルを味わいコントロールするかです。変化に富む日本の環境はセーリングには面白いと考える事ができます。人間、楽だけを求めると飽きてきます。スリルを味わうのは、脳の活性にもなるとか。

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