第九十一話 旅はあこがれ

普段仕事で忙しい方、年に1回取れるか取れないか解らない長期休暇、それでも、遠くにクルージングに行って、のんびりしたい。そういう方々も少なく無いと思います。気持ちは良くわかります。年に1回行くか行かないかぐらいなら、日常はデイセーリングをと言ってきましたが、その気持ちは変わりません。今、できる事を楽しんだ方が良いと思うからです。

しかしながら、それでも遠くへ行きたいと思う方も多いのは事実です。年に1回なら、決まったクルーも居ないでしょうから、行く時は家族か、或いは友人を誘うかになると思いますが、こういう場合もシングルハンドというのは役に立ちます。例え、仲間が居るとはいえ、航海に関してはあまり頼りにはできませんから、自分でプランを立て、自分で操船する。多くの場合、エンジンで走る時間が長くなると思います。たまにしか乗らないなら、尚のこと、整備については、毎年、きちんとしたメインテナンスをされる事をお奨めします。

その整備を兼ねて、ヨットに行き、全ての装備を動かす。そしてチェックしておく必要があります。エンジンはもちろんですが、ポンプ類、水漏れ、ある物は全てです。旅に出てからのトラブルは嫌なものです。春には必ず、上架して、全てを点検しておいた方が良い。この年遠くに行かないとしてもです。普段、動かないヨットは、ちょっとロングに出ると、トラブル発生というのはよくあるものです。

年に1回のロング、それを快適にする為にもメインテナンスが重要ですが、それをより確実にする為にも、ロングが好きなのでしょうが、たまにはデイセーリングをして、あらゆる装備を使って動かしてやる事が、より良い整備に繋がっていきます。デイセーリングぐらいなら、いくら忙しいとはいえ、年に何回かはできるでしょう。それもロングに行く為の準備になります。いきなりロングでは危ない。業者に整備しといて、と頼んでも、通り一遍の整備となってしまいますから、実際に使って、もし不具合が出たら、それを修理しておく。そういう意味でも、デイセーリングは重要かと思います。それに動くが少し異音が出るとか、そういう前兆みたいな事も解ってきます。

形ある物は壊れるものです。それが使っていないならもっと確立は高くなります。よく船底の開閉バルブが固着して動かなくなっているのがありますが、これも普段から動かして固着しないようにしておかないと、いざという時にバルブを閉められないで困る事があります。

こんなところにもデイセーリングの効用があります。日常にはデイセーリングをお奨めしていますが、たとえ、そうでなくても、日常にできるだけ短い時間でも乗るという事は、ヨットにとっても良い事ですし、自分自身もヨットの状態が解ってきますから、ちょっとした異常にも早期発見ができますから、それは先々の大きな出費を抑えてくれます。

ロングに行かれる方、旅を楽しみたい方、おおいに結構です。当社もコメットやセーバーを販売してます。でも、そういう方々にも、少ないチャンスかもしれませんが、デイセーリングを時々は組み込んでください。マリーナに行って、エンジンかけるだけでもプラスですが、本当は実際にヨットを出していただきたい。1時間でも2時間でも良いのです。動かさないが為に、塩で固着したり、そういう事があります。1ヶ月に1回でも、2,3時間出すのは無理でしょうか?動かすのは最高のメインテナンスかもしれません。一般の方々は我々と違って、マリーナ以外でヨットの事を考える事は少ないと思います。より多く接する事で、ヨットの事を考える。それは自分のヨットの事をよりよく知る事になります。この事はとっても大切な事ではないかと思います。

海は気持ちが良いものの、同時に怖い事もあります。それなのに、よくもまあ、整備なんかほとんどせずに平気で出られるものだと、逆に感心してしまいます。

ですから、ロングに行く方も、デイセーリングをたまには楽しみ、メインテナンスとしての効果もありますから、是非、お奨めします。ここにもデイセーリングの効用があります。つまりは、できるだけヨットに接する多くのチャンスを持つという事ですね。それがヨットの為にも、自分の為にもなるという事、それにはデイセーリングを組み込む事は良い事です。それなら、デイセーリングを楽しみながらメインテナンスも兼ねるという具合に考えた方が良いわけです。

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