第九十三話 スピード

クルージングヨットにおいて、スピードが話題になる事はありません。しかしながら、実際にセーリングしていて、速いという事は結構面白いもので、逆に後ろから来た小さなヨットに追い抜かれると、クルージング派とはいえ、気持ちの良いものではありません。但し、スピードを何が何でも追い求める事とは違います。取り扱いや乗り心地などがある程度満足できるものであれば、その範囲内で、やはり遅いより速い方が面白いと思います。

昨今の造船所の動向を見ましても、クルージングヨットではあるができるだけ性能の高い方向を目指しています。クルージングとしての機能を備えつつも、重くならないようにとか、そういう事を考えます。車でも今時のセダンは充分速く走ってくれます。その方が行動範囲は広くなるし、気持ちも良いです。今更、昔のように遅い車なんか、ストレスがたまってしまいます。

それで、最近の新艇の資料を見ますと、データの中にPHRFレーティングの数値が出ているのがボツボツ出てきました。これはレースに使うハンディキャップのレーティングです。数値が低い方が速いという計算です。例えば、PHRF100と120のヨットがあるとしますと、100の方は1マイル走るごとに20秒間のハンディがあり、5マイルの距離を走る場合、100秒、つまりハンディ120のヨットより100秒速くゴールして当然の速さがあります。つまりハンディ120のヨットが99秒遅れでゴールすれば、120のヨットの勝ちという事になります。

何もレースをしなくても良いのですが、こういうデータなんかが性能の目安になりますから、自分の知ってるヨットのPHRFが解れば、どの程度のスピードかが解ります。クルージング艇と言っても、セーリングする事もあるでしょうから、そういう時には速い方が面白いですから、こういう事も参考にされたらどうかと思います。ちなみに、いろんなヨットのPHRFレーティングのリストがあります。
参考にされたらいかがでしょうか。但し、レーティングは持っているセールにもよりますし、ファーラーとか、プロペラが固定やフォールディングなんかでも異なります。
http://en.wikipedia.org/wiki/PHRF 左記をクリックして、開いたページの中程に青字でSAMPLEというのがあります。これをクリックしますと、たくさんのヨットのPHRFレーティングが記載されています。数値が低い方が速い。どれだけ速いかは、他のヨットと比べて、1マイルにつき、その数値(秒)だけ速いとされています。見てみますと、レーサーやスポーツヨットばかりでは無く、典型的なクルージングヨットもリストアップされていますので、結構面白いと思います。

速さを競うわけではありませんが、速いという能力はクルージング艇であっても悪い事ではありません。それどころか、セーリングを遊ぶにおいて、面白い要素のひとつだと思います。とにかく、何でも遊びですから、まあ、固いこと言わずに、ちょっと覗いて見てください。

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