第二十一話 クルージング＆セーリング
| クルージングと言えばロング、ロングと言えば機帆走、そういう考え方が一般的なようです。一体、セーリングとは何でしょうか？決して、そういう乗り方を否定しません。それどころかおおいに結構です。どんどんクルージングに出られたら良いと思います。仲間や家族と島々を巡り、その地の良さや人との触れ合い、まさに旅の醍醐味だと思います。人は旅が大好きです。クルージングとは旅そのものです。 そこで、セーリングの醍醐味はと言いますと、セーリングするエリアや行き先にあるものでは無く、セーリングそれ自体にあります。セーリング自体が果たして面白いのか？それが疑問になります。 クルージングが旅なら、セーリングはスポーツです。スポーツとしてのセーリングは面白いのでしょうか？ 旅をされる方はエンジンを使います。エンジンを使わないセーリングはどんなものか？何をもたらしてくれるか？そこが、ヨットをスポーツとして遊べるかどうかの分岐点になります。今まで、長い事 セーリングをお奨めしてきました。それは、ひとつはあまりにもクルージングの方々がセーリングでは無く旅としてしか使っていないからです。そこに、セーリングという要素を是非採用して頂きたいと思っているからです。セーリングもしていると言われるかもしれません。でも、多くは仲間との集いのセーリングになります。もちろん、これも多いに賛成で、どんどん乗っていただきたいと思います。しかし、もう一歩進めると、例え、仲間との集いがあったとしても、意識はセーリングにあるという乗り方、これがスポーツセーリングだろうと思います。できれば、そういう乗り方も採用して頂きたいと思っています。 面白く無ければ、誰もやらないのは当然です。ではセーリングは面白いのか？という疑問になります。結論から言えば、セーリングはオーナーに興奮をもたらす。場面が整えば脳内にアドレナリンが噴出して、最高の気分を味わえる。つまり、クルージングやピクニックセーリングとは異なるエキサイティングなセーリングが味わえる。ところが、問題はいつもというわけには行かない事です。 旅はいつも、行けば、そこの旅を味わう事ができます。仲間との集いも行けば味わえる。でも、セーリングだけは不確定なのです。いつも出ればセーリングの最高気分になれるのであれば、もっとセーリングは流行ったと思います。しかし、残念ながら、そうは行きません。風や波の具合が整う事で予期せぬ時にそういうチャンスに遭遇すると言えるでしょう。そうだとしても、最高のエキサイトメントがある事には間違いありません。たまたま出たらそういう場面に遭遇する事もあります。何度も何度も乗ってやっとという場合もあるでしょう。この不確定な要素はなかなか思うようにはなりません。 しかし、言える事は、求める人にしか与えられないという事です。しかも不確定ですから、誰でも簡単には味わえない。そこで求めないようになるのは解ります。ですから、人々は旅に出る。旅に快楽を求めるようになります。その方が確実にそこにあるからです。でも、旅は毎日というわけには行きませんから、結果、多くのヨットがめったに動かないという現象が起きているのではと思います。そこで、旅以外は、日常においてセーリングを求めてはいかがでしょうか。これが一貫して主張してきた事です。より良いセーリングを求める乗り方をお奨めしてきました。 そうやって求めると、必ずしも最高の状況にはならない場合でも、面白さが発見出来る事が解ります。風が全く無いのは論外にしても、微風から強風までの間で、必ずしも最適の風だけが面白いわけではない事に気づきます。それは知能の遊びです。こういう遊びを多くの人達はレースに求めてきました。あらゆる知識を動員して、レースに勝つという目的を持ってセーリングする事が、より良いセーリングを目指す結果として、とても解り易いです。しかしながら、レースというのはいつもいつもやってるわけではありません。レースも結構、でも、レース以外の場面、つまりは多くは何も無い場面ですが、そういう時にでも遊べる。それがセーリングそのものを遊ぶという事に他なりません。 レースでは無く、単独セーリングを遊ぶには、意識する事がとても重要になります。セーリングを意識する。セールの形状を意識する事によって、リードブロックの位置、シートの引き具合、バング ハリヤード、等々いろいろな要素を意識する。タックやジャイブのスムースな手順、舵、そういうものを意識する。それらを動かす事によって変化する動きを意識する。意識して動かすには知識が必要ですから、学ぶ事が大事になります。学び、試し、観察し、体感する。言わば、セーリングを遊ぶという事は知性的遊びという事になります。その世界を遊ぶには知的でなければならない。また、同時に観察し、感じる敏感さも要求される。つまり、体力を消耗するフィジカルな遊びというよりも、知能と感性の遊びだと言えます。一旦この面白さを味わえば、誰でも虜になってしまう。しかし、それには、そういう意識を保ち、セーリングする事が必要になります。前も言いましたが、うまいへたの問題では無く、意識の問題です。意識すれば、直ちに知性と感性が緊張します。そうすれば、変化を受け取る準備ができます。その変化の流れが、感じられ、だんだんと面白くなっていきます。面白くなれば、もっと学びますから、その度合いはもっと増幅されていきます。 単独でのセーリングは緊張感を保つ事が難しいかもしれません。でも、そこをある時間保ち、より良い知的遊びをしますと、その面白さがわかってくる。そうすると、遊びの世界をひとつ増やす事になります。この遊びは、気軽であり、その気になれば誰でもできて、しょっちゅうできるという大きなメリットがありますので、是非、セーリングそのものを知的に遊んでいただきたいと思います。 頭を使う遊びは面倒でしょうか？スポーツには、ただ無心に体を動かすというのもありますが、こういう知的なスポーツもあります。サッカーや野球は知性以外にも体力も大きな鍵ですが、セーリングの場合は、体はそんなに使わないで済むという方法もあります。乗り方次第です。ですから、誰でも楽しめる。軽風は軽風なりに、強風は強風なりに、どんな走り方をしたら良いか、自分のヨットでできる走り方、自分の好きな走り方、無駄の無い動き、そういう遊び方があります。そうしていきますと感覚的な満足感が沸いてきます。他人から見ても解りませんが、本人はとても充実したセーリングができるようになります。 |