第二十五話 性に合う
多くの方々がセーリングさえできるようになれば良い、そしていつかどこか遠くへでもクルージングに行けるようになれば良いと思ってあるようです。これが一般的な考え方かもしれません。しかしながら、これだけではなかなか充実したヨットライフを永く続けて行くには今ひとつ。 ある方は既に引退されて、時間もたっぷり。日常ではメインテナンスしたり、キャビンでお茶飲んだり、そしてたまに遠出されます。一旦出航されたら、長期間帰ってこられない。多分、このロングクルージングが性に合っているのでしょう。それが充実している、面白いから、ホームポートに居る時はヨットを出さなくても、次にどこ行くか、次の旅への準備としてメインテナンスされて、それが愉しいのだと思います。もちろん、ホームポートに居るより、出ている期間の方が長いです。当然ながら、ヨットもそういうロングクルージング用です。 ある方も既に引退。この方は年に2,3回のちょっとロングに出られます。だいたい1週間から2週間程度ですから、多くの時間はホームポートにおられます。ホームポート滞在期間が長いので、当然ながらホームポートで何をするかは重要です。殆ど毎日マリーナに来られて、風の良い時はデイセーリングを楽しみ、風が無いか強すぎる時はメインテナンスやお茶飲んだりして過ごしておられる。 ある方はロングでは出られない。時間のせいもあるでしょうが、デイセーリングが中心になります。そうすると、メインテナンスはされるが、あまりキャビンで過ごすというような事はされない。当然、シングルハンドのセーリングが主体です。 人にはそれぞれの使い方があり、それが性に合うかどうかです。時間がたっぷりあったとしても、ロングがみんな性に合うわけじゃないし、キャビンでじっとしているのは性に合わんという方もおられるし、セーリングにしても追求していくのが性に合う方、合わない方がおられるでしょう。でも、ロングの旅が性に合うという方は意識がそっちの方にありますから、セーリングの細かい部分につてはあまり興味が無い。逆に、ロングが性に合わない人は、たいていセーリング追及型ではないかと思います。 もう一度、じっくり見直して、自分の性に合った使い方を考えてみてはいかがでしょうか。旅が性に合う人は、その旅を充実させる事に重点を置くべきでしょうし、セーリングが性に合う方は、デイセーリングを充実させる事が重要かと思います。その性に合う何かが充実していれば、その他の事についても、気持ち的に余裕で楽しめるものです。ロングを楽しんできた人が、ホームポートに帰ってきて、しばらく居る。そんな時、コクピットでコーヒー飲んでるだけでも結構楽しめる。次にどこに行こうかと思案しているかもしれませんし、その準備にどんな事をすれば良いかを考えながら、楽しんでおられるのかもしれません。日頃セーリングを楽しんでいる人も同じでしょう。次はどんなセーリングをするか想像されているかもしれません。この1杯のコーヒーが楽しめないのは、性に合う何かがあるはずなのに、それが充実していないからではないでしょうか。 旅もセーリングもチャレンジですし、エキサイティングです。どちらが性に合うかです。そのどちらも充実せずに、チャレンジ性の薄いキャビンで過ごすとか、ピクニックセーリングとかが性に合って充実しているという人を知りません。少なくとも日本人では、出合った事がありません。きっと、どこかに自分なりのチャレンジ性を感じていないと、面白さは沸いてこないのかもしれません。面白さが無いとしょっちゅうはできませんし、永くも続けられません。 あるペンションのオーナー曰く、風景を見ながら一日中おしゃべりしたりお茶飲んだりしながら過ごせる人は居ないと言います。必ず、何かをしたがる。テニスだったり、町に下りて行ったりです。何もせずに過ごす事ができる人は居ないと言います。ヨットのキャビンをどれだけ充実させても、そこで長時間過ごせる人は少ない。必ず、何かが必要です。旅をしたからキャビンが生きる。セーリングしたからキャビンが生きる。キャビンが充実していても、キャビンだけでは生きません。他の何かが充実して、面白かった事で他が生きる。 誰でも日常はデイセーリングをと思っていましたが、そうも行かないようです。ロングの旅が好きな方は、追及型のセーリングは性に合わない。それで日常はピクニックセーリングでも良い。デイセーリングが性に合う方はロングが性に合わない。そういう方もたまにはピクニックセーリングをする。つまりは、ピクニックセーリングは合間に行う息抜きみたいなものでしょうか。これも性に合う旅かもしくはセーリングが充実しているから愉しいのではないかと思います。 旅を楽しみ、セーリングを楽しみ、そしてたまに息抜きで、仲間や家族とクルージングを楽しむ。こういうピクニッククルージングはデイセーリングから数日間のクルージングも楽しめるます。そういう時はワイワイガヤガヤ、エンジン駆けて、おしゃべりと食事と流れる風景を楽しむ。こまかい事は気にせず、おおらかに、楽しむ。こういう乗り方はだいたい年に1回とか2回とか。後は、性に合った乗り方を充実させてください。デイセーラーのヨットでも、こういうウィークエンド的なクルージングもできます。キャビンは狭いでしょうが、ちょっとキャンプ気分です。行った先でホテルにでも泊まるなら、快適そのもの。何の問題もありません。息抜きですから、何らこだわる事もありません。 但し、ヨットが息抜きだけでは充実しない。仕事の疲れを癒す目的だとしても、好きな事に集中して、それが充実していた方が遥かに精神的には癒しになると思います。是非、お試しを。 |