第四十六話 知識

セーリングの条件は常に異なります。風も違えば、波も違う、それにヨット自体がそれぞれ違います。ですから、これと断定的には言えません。それで、自分のヨットでひとつづつトライして、確かめていく必要があります。

レースをすると勉強になると言います。それはレースではいかに速く走るかが命題ですから、みんな勉強するからです。ジョギングセーリングでも、勉強して、その知識をより多く得る事は大きなメリットになると思います。例え、使わない知識であっても知って損はありません。重たくもなりませんから。

レースではただ速いだけが良いわけでは無く、目的はゴールにあります。ですから、上りではスピードもさる事ながら、上り角度を稼ぐ事も大事です。VMGという言葉をご存知かと思います。これは艇のスピードと上り角度の両方を効率良く稼ぐ最適コースという事です。角度を稼げば、スピードは落ちる、スピード求めれば上り角度が落ちる。その両方の丁度良いコースという事です。

 左の図はポラーダイヤグラムと呼ばれるもので
 す。ちょっと見にくいですが、最左の縦に並ぶ
 数値がボートスピード、右側は角度です。赤い
 ラインは15ノットの風速です。上の方を見ます
 とカーブを描いて、最も高い位置、だいたい
 45度ぐらいで6.5ノットぐらいのスピードが出
 てます。 これ以上登るとスピードは落ちる、こ
 れ以上走る角度を落とすとスピードは上がるが  角度が落ちる。その両方の丁度良い角度です。 これは風速によっても異なります。風速は真風
 速、角度も真風向です。ですから、見かけの風
 としてはもっと上っている感じになります。

 レースではスピードを犠牲にしてでも角度を稼
 ぎたい時もあるし、その逆もある。ジョギングセ
 ーリングではこんな事は考えませんが、まあ、
 知識として知っても損は無いでしょう。

 ところで、上りで全てのリボンがきれいに横に
 流れている状態はきれいに風が流れているわ
 けですが、上りにも幅があって、ジェノアの風
 上、風下全部が横にきれいに流れている状態
 はややスピード重視、このまま舵を切って少し
 登ると、風上側のリボンが上に少し跳ね上が
 る。これが角度とスピードの両方の接点、VMG、 
さらに少し登ると風上側のリボンがさらに上に跳ね上がる。
これは角度重視。これ以上は上れませんし、登ると裏風が入りだす。全てのリボンがきれいに流れている場合はこれ以上落とすと、まずは風下側のリボンが乱れてきます。その時は舵をきって再び登るか、セールを少し出す。

ジョギングセーリングではそこまで考えなくても良い。きれいに全部が流れる事に注意しながら走る。でも、ちょっと余裕が出てきたら、どんなもんか試しても良いと思います。ちょいと舵きるだけですから。

風向が変わり、でも風速が同じなら、一旦全てのリボンがきれいに流れるようになったら、後は、舵操作で、風向に対する角度を常に同じになるように、風が右行けば艇も右に、左にシフトすれば
左に、同じ角度を保てば、常にリボンはきれいに流れます。左から風を受けて、風が左に行くとすると、目的地に対しての角度は良くなり、逆に右に風がシフトすると上り角度は落ちる。落ちたらタックして、右から風を受けるようにする。すると目標地に対して角度が良くなる。

ややこしいのは風速も変化するという事ですね。このややこしさを面白い要素に変える方法は、やっぱり知識を得る事ですね。知識があれば、それに対処できる。それもより多くの知識を得る事で
より面白くなります。例え、その知識を実行しないにしても、知っておいた方が面白さはあると思います。自分のヨットの走る基準から、風が落ちたり、強くなったり、リーフのタイミングを知る事にもなります。あくまで遊びです。試験を受けるわけでもありませんし、高成績を取っても、何の商品もありませんので、ただ、自分の面白さを高める意味で、ゆっくりと時間をかけて良いと思います。それに実際に実行するにしても、レーサーは素早く、ジョギングセーリングはゆっくりで良い。しんどいと感じたら、やめとけば良い。でも、知らないと余裕があっても実行さえできません。自分のヨットが今どんな風に走っているのか、知らなくても走ります。でも、知ると、面白くなりますから、面白くなったら、もうちょっとこうしたいとか出てきます。それが面白さの増幅効果だと思います。

レーサーはそんな事までやってるのかと感心する事がありますが、ジョギングセーラーは実行しなくて良い。でも知るとそういう効果があるのかと解ります。それがどうした?と言われればそれまでなんですが、知的遊びを高める役目はします。若者には体力ではかないません。しかし、知っていれば、知性では勝てます。勝負ではありませんが、何か、嬉しいじゃないですか。

こんなセーリングは、ゲストを乗せて走る場合は不向きです。人数にも、ヨットの大きさにもよりますが、タックの度に、済みません、ちょっとこっちに移動してくださいとかやってますと、なかなかこうは行きません。ですから、ゲストが居る時はゲストを楽しませる範囲でやる。自分だけ、又は自分とクルーだけの時はにやります。

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