第五十九話 使用頻度

ヨットの使用頻度が極めて低い、という事を時々言いますが、車を考えてみますと、車は通勤に使う、買い物に使う、誰かの送迎、荷物運び、そしてレジャーと、使用用途はいろいろ多岐に渡ります。このうち、純粋にレジャーのみとしたら、どれぐらい使っているかと言いますと、案外頻度は少ないのかもしれません。それでも、車は自宅にあるので、とっても身近です。

車をレジャーに使う時、宛も無くドライブするという事もあるかもしれませんが、大抵はどこに行くかの方に重点があります。つまり、車は殆どが足という事になります。

ヨットはレジャー100%の乗り物ですから、誰かを迎えに行くとか、買い物に行くとかで使う事はありません。純粋に遊びです。しかも、ヨットの保管場所は自宅から遠く離れた場所ですから、ぶらりとドライブに行くというより大きなエネルギーが必要になると思います。そして、車と同じように、どこかに行く時というのが、頭に浮かぶかもしれません。ヨットでちょっとドライブするというのは、余程身近に感じていないとできない事かもしれません。

車にしてもヨットにしても、レジャーとしての使用頻度は低い。皆さん忙しいのです。その忙しい中で、レジャーを考えたら、どこかに行こうと考えたら、いつも身近にある車で行った方が手っ取りばやいという事になります。そうしますと、ヨットはますます使う頻度が落ちる。それをもったいないと思うのは貧乏人根性かもしれませんが、でも、ちょっと使い方に工夫を必要とするような気がします。

ヨットをできるだけ身近に置くというのは、アクセスがとっても便利、すぐに行けるというメリットですが、使い方としてはキャビン重視かデイセーリング重視。これまで見てきた通り、キャビンは使いきれないので、デイセーリングを重視する使い方として考える。

或いは、ヨットを例えば、瀬戸内海あたりに置く。あのあたりは島々がたくさんあって、そりゃあセーリングが楽しそうです。たまにしかいけないのなら、ちょっと休暇を取って、回数は少ない代わりに、濃厚なレジャーを楽しむという方法もあります。ヨットに泊まれば、キャビンの活用とセーリングの両方が楽しめます。そこで海水浴や釣りもあるでしょう。

つまり、近くに置くというのは、デイセーリングをどんどん楽しむのに都合が良いし、クルージングを楽しむなら、どこか気に入った場所、瀬戸内海とか長崎とか沖縄とか、そういう場所に置いておくと
いう割り切り方も考えられます。どうせ頻度は少ないのなら、その方が遥かに楽しめるかもしれません。場合によっては、数年経ったら、また場所を変えるという事だって可能です。

そういう地に、ホームポートから出かけていきますと、そりゃあ道中が大変です。本当はこの道中を楽しめれば一番良いのですが、決まった場所に、決まった日程で行くとなりますと、そうは行きません。大抵1日ぐらいは時化たり、もちろんエンジンで行かなきゃ日程が狂ってしまいます。そして、行けば、帰らなくてはなりません。こういう道中を楽しむのはなかなかできません。それなら、いっそのこと、自宅から最も近いマリーナはどこかと探すより、最も好きな場所はどこかと探した方が良いかもしれません。田舎は係留費が安いですから、家族みんなで飛行機で行っても、都会の係留費でまだお釣りが来る。年間経費がそれで安ければ、一考の余地はあると思います。

純粋な遊びとしてのヨットの使用頻度が少ないという事実は仕方が無い。とすると、その内容を考える事で、充実度を高める。身近なデイセーリングか、遠くのキャビン&クルージング、それによって、選ぶヨットの種類も違ってきます。これ以外は外洋セーリングとなり、これも違うヨットになります。

日本で、使用頻度を高めるには、身近においておけば、何か楽しさが無いといけませんので、デイセーリングを楽しめる人か、キャビンを楽しめる人になります。そして、仕事の都合がつく人か引退した方です。そうで無い方は、身近にあったらキャビンを楽しめない方でも、旅先では趣が異なり、長崎に行ったらヨットに泊まるのが楽しみになる可能性は大きいと思います。デイセーリングにしても、気軽なデイセーラーなら、気軽に出せるようになります。使用頻度を上げる事か或いは1回の使用を濃縮する。そういう風に考えてはいかがでしょうか?

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