第七十四話 艤装を考える

艤装と言ってもあくまでレースでは無いけれども、デイセーリングとして、セーリングをより楽しもうという事での艤装を考えます。これにもシングルかダブルハンドかによっても考え方は異なろうと思います。

クルージングヨットにおいても、殆どのヨットに無い艤装はジェノアのリードブロックを前後に動かすテークルを組んだシステムです。これが無くても、使用していない風上側のリードブロックの位置を動かしてタックするという方法がありますが、できればそのままで動かせないかと考えた事は無いでしょうか?

真っ直ぐ走っている時、ジェノアの下部のリボンはきれいに流れているが、上部側が乱れているとか言う場合、例えば、少し開きすぎてる場合ですが、リードブロックを少し前側に移動させて、上部を内側に引き込みたいと考えます。できればタックなしで、このまましたい。そういう場合はジェノアトラックにテークルを組んで、前後に調整できるようにします。これはメインのトラベラーと同じ事です。メインのトラベラーにはどれにもテークルが組んであって、左右に動かす事ができるようになっていますが、何故か、ジェノアトラックにはそれがありません。考えてみれば不思議ではないでしょうか?

まして、最近のヨットはジェノアが大きくて、メインが小さい。それなら、もっとジェノアを調整できるようにしておく必要がある。でも、小さなメインができて、大きなジェノアはできないわけではありませんが、やりにくい。いちいちタックしてやるなんて、面倒です。

リードブロックを後ろ側に移動させるのは、さほど力が要りません。テンションをゆるめれば、ジブシートの力で後ろに移動していきますので、適当なポジションでまた固定すれば良いわけです。しかし、このブロックを前側に移動させたい時は、ジブシートの力に逆らうので大きな力が必要となります。という事はウィンチの力が必要です。で、考えて見ますと、そのウィンチにはジブシートが巻かれています。これを解く必要がある。という事はシートのターニングブロックにストッパーが付いているのが必要で、このストッパーで固定して、シートを解く。今度はリードブロック調整のロープをウィンチに巻いて引き、ブロックを前側に移動させ、このロープもストッパーで固定して、今度はウィンチに元のジブシート巻く。ウィンチが1個なら、こういう按配になると思います。それでも、ダブルハンドなら、こうやって遊んでも良いわけです。面倒なんじゃなくて、面白いんです。
つまり、小さなメインに大きなジェノアのコンビネーションなら、ジェノアをもっと調整できるようにしておきたい。考えれば、他にもあります。

上りから少し落として走る場合、ジブリードブロックは内側から引かれます。本当はもう少し外側にブロックがあれば、もっと良い。艇によっては、アウトボードジェノアトラックというのもありますが、殆どはありませんので、トウレールか、サイドデッキに設けたアイにブロックをおいて、シートをそこを介する方法もあります。つまり、よりきれいなセールを作りたい。どこまでやるかは、レースじゃないので、どこまでやりたいかによります。これらは、クルージング派の方々は、これまで行う事はありませんでした。レーサーだけがやってた事です。でも、遊びとして、面白いという観点で、やりたい人はおおいにやって良いと思うのです。遊びですから。

メインセールは大抵どのヨットにもブロックを左右に動かすトラベラーがついてます。バングもあるし、アウトホールもある。これにバックステーアジャスターまでは何とか設置したいもんです。

考えてみれば、通常の艤装では、メインセールの方がはるかに調整の範囲が広いです。ジェノアの方が少ない。但し、ジェノアもやろうと思えばいろいろできます。そうすると、今度はそれなりの艤装とクルーをも必要としていくでしょう。という事はセーリングを楽しむという観点からすると、大きなジェノアに小さなメインの場合はクルーがほしい。逆に、シングルでやりたい場合は小さなジブに大きなメインの方がやり易い。という事にならないでしょうか? どっちも無理という事では無く、やろうと思えばどうにでもできますが、どっちがやり易いかという観点です。

シングルよりもダブルの方が遥かに楽になりますが、それはオーナーの考え方で、俺はシングルで乗りこなしたいと思えば、そういう艤装を考える。その場合は、小さなジブ大きなメインの方がやり易いのではないかという事です。

面倒な艤装や面倒な作業と思えば、それまでです。でも、レーサーでも無いヨットが、ただセーリングを遊びとして、いろんな艤装を考えて、実際、いろんな遊びをしている。それだけに知識も豊富で、これって結構カッコ良くないですか?面倒と思えばそうかもしれませんが、面白い遊びなんだと思えれば、どんどんやったって良いのではと思います。クルージング艇だって、カッコ良く、すいすい走った方が面白いし、それででかいヨットなんか追い抜いたりしていけばカッコ良いし、それに一人しか乗ってなかったら、もっとカッコイイですよね。ヨットなんて、何の役にも立たないのですから、やるとしたらそれぐらいのもんでしょう。のんびり、ゆったりも良いですが、こういうスイスイ走るのも悪く無いですよ。

それで、いっそのこともっと小さなジブにして、もっと大きなメインにするとしたのが、昨今のデイセーラーヨットです。これはただジブを小さくしただけでは無く、マストの立っている位置が前側に移動しています。つまり、フォアステーからマストまでの長さ ”J” よりもブームの長さ”E”の方が長い。おまけに、フォアステーの出てくる位置もマストトップから下の方です。つまり、影響力はジブよりも遥かにメインセールにあります。それはシングルをも視野に入れて、ジブはそこそこに、メインを主に調整できるようにしています。

これをさらに進化させたのが、ジブブームという考え方です。これがあれば、ダウンウィンドまで、ジブをきれいに開けます。小さなジブとはいえ、きれいに開ければ、150%のジェノアを使うよりも、ダウンウィンドでは効果的です。でも、ジブブームが無ければ、今度はファーリングジェネカーです。
かくて、シングルの理想は、小さなジブに大きなメイン、それにファーリングジェネカーを使う。或いは、ジブブームを使う。と思うのですが、いかがでしょうか?

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