第十三話 割り切り

車は一家に1台という時代から、好きな方は2台とかいう事も珍しくなくなりました。奥さんがセダンで自分はスポーツカー、そういう事も考えられます。最近、特に御年配の方々にスポーツカーの人気が高いそうです。これはどういう事か、スポーツカーというのは、遊び心満点、楽しそう、面白そう、そんな気がします。それにもう一台セダンがあるから、割り切る必要も無く、選択する事ができます。

しかしながら、ヨットはまだまだこれからの物です。昔は外洋に行けるヨットだったのでしょうが、それが身近になってきて、外洋には行かないし、それより居住性重視になってきました。居住性を重視するのであれば、そういうヨットが快適ですし、それをもっと発展させて、エアコンなんかも設置します。いろんな装備を設置して、より快適を目指します。それに伴い、それに応じたメインテナンスを必要としますが、これは当然の事ですから、手入れを良くして、いつも快適に過ごせるようにしなければ、付いてる物が動かないでは快適ではありません。また、より居住性が高ければ、高い分、帆走については少し減じられる感がありますが、それは仕方の無い事で、割り切らねばなりません。何でも、かんでも求める事は無理があります。

一方、最近では居住性をあまり求めない方々もおられます。キャビンはシンプルで良い。何も寝泊りしないし、それより快適セーリングを求める。快適がキャンビンからセーリングに変わってきます。かと言って、レーサーのようなセーリングでは無く、簡単操作で快適セーリングです。つまり、これはスポーツカーの割り切りと同じかと思います。ただ、ヨットは2艇持つ事は考えられないので、迷いが出てきます。果たして、それで良いのか?これが割り切りになると思います。割り切れるか割り切れないか?

本当はキャビン重視という割り切りとセーリング重視の割り切りと二通りなのですが、回りがみんな居住性重視なので、セーリング重視に移行するのは、もっと割り切りが必要になりますね。こういう場合、回りに影響されないで、自分の現実的な使い方をじっくり考慮する必要があります。それも今の乗り方、仕事、家族、仲間との関係、それに先々の事、でも、最も重視すべきは、ヨットで最も楽しみたい部分は何か?それを最優先すべきかと思います。その他の事はできないわけじゃない、ただ、ちょっと快適とは行かないだけです。キャビン重視かセーリング重視か、どっちに割り切るか?キャビン重視でも、セーリング重視でも割り切りが必要かと思います。楽しさを仲間との集いに求めるか、セーリングそのものに求めるか?

キャビン重視はキャンピングカー、セーリング重視はスポーツカー、ふたつあれば理想かもしれませんが、そうは行きません。キャンピングカーはキャンピングカーとしての使い方がります。その車で買い物には行かないでしょうし、気軽に、ちょっとそこまでとは行きづらい。また一人だけで乗ってももどうも楽しくない。でも、みんなで乗ると楽しいです。一方、スポーツカーはどこでも行けます。ひとりで乗っても面白い。でも、みんなで乗る風にはできてない。ヨットなら、まあ、4〜5人ぐらいまでが良いとこかなと思います。それ以上でも乗れない事はありませんが、似合わないですね。

さて、どっちに割り切るか?割り切って使う事を考えた方が、先々楽しいと思います。どっちに割り切るにしてもです。スポーツカーはキャンピングカーの居住性を羨むかもしれません。反対にキャンピングカーはスポーツカーの走りを羨むかもしれません。オーナーが楽しいと感じるのはどっちでしょうか?

その両方を実現しようとするヨットもあります。クルージング艇だけれども、帆走性能を重視したヨットです。当社扱いで言うならコメットヨットですが、これとて、デイセーラーのシングルでの気軽さはありません。最低ダブルハンドならお奨めではありますが。

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