第二十九話 海域

日本が海に囲まれているとはいえ、ホームポートがどこになるかでは、その環境は違ってきます。回りに島々が点在するような海域では、変化に富、のんびりと島周りをしてくるだけでも結構楽しめるかと思います。でも、もし、何も無かったら、どうやってヨットを楽しめば良いのか?タックしても良い、しなくても良い。何しろ、何も無い広い海域、そんな海域ではどう楽しむか?

島でもあれば、それを回ってくるという指針ができますので、回る為にタックしたり、アビームになったり、ダウンウィンドになったり、いろんなセーリングを楽しむ事ができます。回る事で360度回転しますから、あらゆる方向に進む事になります。しかし、島が無かったら?

島が無いから、近所で遊べないので、遠くに行く。そういう方もおられるでしょう。でも、ここで、近場でも遊べる事を考えて、気軽に近所でも遊べる方法を考案する必要がある。そうしますと、もっとヨットが楽しくなる。近所では、ただのんびりセーリング+おしゃべりとなりがちですが、そこをちょっと考えてみます。島は無い、しかし風はある。ならば、島という陸地を目標に置くのでは無く、風を目安にするというのはいかがでしょうか?

風の角度にもっと敏感になって、風に対して、ギリギリで上る。ちょっと油断するとすぐに裏風が入る。その時のスピードは何ノット出ているか。セールのリボンがどのように流れているか、きっとリボンは真横からわずか上側に流れているでしょう。わずか舵を切って落とし、リボンが真横に流れる。スピードは少し増す。角度とスピードの関係。タックしてみる。どのようにタックするか?楽に、スムースに、タック後の上り角度は?

角度を少しづつ落としていく。スピードの変化は?どんどん落として、ジェノアで走れる効率の良い限界は、どこまで落としたらジェネカーを出すか?各方角でのスピードは?

考えようによっては、島が無いので、その分風向とスピードに敏感になる。そう考える事もできます。ならば、是非、風向風速計とスピード計を設置して、その目安を明確にしてはいかがでしょうか?
そこにGPSがあれば、潮の流れも簡単に解りますね。

何度も乗っていますと、何か面白い工夫をするもんです。それによって、得られるものも多い。島が無い事によって得られる何かがあると思います。海と風さえあれば。島が無い事によって、もっとセーリングの動き自体に敏感になれるかもしれません。また、島周りをしていますと、コンパスを見なくても島を目安に回る事ができます。しかし、島等の目安が無いと、コンパスを目安にします。
風に対して、真風向45度で走り、タックして315度で走り、今度は90度落として、225度をジェネカーで走り、ジャイブして135度で走ると、再び元の位置に戻る。真北からの風ならそうなりますが、実際は角度が30度方向から来ますと、全て30度ずれて計算する事になります。これが見かけの風ならどうなるか?こんな事して遊んでますと、方角について極めて詳しくなりますね。GPSがあるから簡単ではありますが、そうでは無く、コンパスで遊んで見る。後でGPSの軌跡を見ますと、どういう軌跡を描いているでしょうか?自分の計算とセーリングと、GPSの軌跡、そんな下らない遊びをする事もできますね。セーリングは見かけの風を使いますが、動きはコンパスの角度、コンパスの角度をキープして、シフトする風にセールをあわせて走る。舵はそのままでも、風がシフトしますから、セールの角度は変わります。逆に、セール角度を一定にして、シフトする風にあわせて走る方法もある。考えれば、いろんな方法ももっとあるかもしれませんね。

近場の島周りセーリングをしていますと、コンパスの角度に疎くなりやすい。自分が何度の角度で走っているかより、島に対してどういう位置に居るかが目で見て解ります。島が無ければ、コンパスで走る。そうしますと、コンパス、角度など、自然に身につきますね。何にせよ、悪い事ばかりじゃない。

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