第三十五話 ワンルーム

自分が住む住宅には、家族構成などによって、個室が必要になりますが、別荘には長期滞在できるようにいくつもの部屋がある場合もありますし、長期では泊まらないなら、ワンルームでも快適に過ごせます。ゲストが来たら、その時はソファーに寝ても良いわけです。

それと同じように、一般的に見るヨットは部屋が2つとか3つとかあるわけですが、長期に寝泊りする以外は、あまり必要性の無いものです。最も活躍するスペースは外のコクピットであるし、次にサロンでしょう。雨でも降らない限りは、コクピットで過ごす方が気分は良い。

キャビンから見たデイセーラーはそういう考え方です。長期の寝泊りは重視せずに、短期と設定しますと、部屋がいくつもある必要性が無い。そう割り切った場合のメリットは、重心の低下、風圧面積の低下、高い安定性です。この事がどんなセールフィーリングを与えてくれるかは簡単に想像する事ができます。車でも地面に張り付くような車は重心が低いし、安定感が違う。まして、舗装されない海を走るなら、影響はもっとあります。背の高いワンボックスカーなんかで、突然の風にハンドルが取られる事があります。これも風圧面積が大きいのと重心が高くなるからです。ヨットの場合はマリーナからの出し入れにも影響します。

デイセーラーは大きな別荘では無く、見方を変えれば、ワンルーム的です。気軽に使う別荘、でも、そのメリットはロケーションにあるでしょう。つまり、部屋の外にあります。コクピットに居て、マリーナからの出し入れが簡単で、ひとりでもセーリングが堪能できる。

部屋が2つ、3つあるようなヨットは大きな別荘です。そんな大きなヨットを動かす必要があります。
どちらが良い悪いの問題では無く、使う用途の問題ですが、全ての方にとは言いませんが、大部分の方々には、こういうデイセーラー的使い方が合うと思います。長期滞在型でない限りです。

仕事が忙しい方、或いは、仕事では無いが、いろんな用事がある方、他にも趣味がたくさんある方、純粋にセーリングを楽しみたい方、気軽にセーリングしたい方、そういう方々にはデイセーラーがうってつけではないかと思います。ワンルームマンションの気軽さがあると思います。でも、セーリングを重視した造りですから、品質は非常に高い。セーリングには強い船体が必要ですから。

長期滞在になりますと個室がほしくなります。自分と子供達、或いは自分とゲスト、1日か2日程度なら個室は不要かもしれませんが、長くなりますと、プライバシーもほしくなる。何しろ24時間一緒なんですから。それがもっと大きくなると、オーナー用、ゲスト用とそれぞれトイレとシャワーが付き、もっと大きくなると、クルー専用の部屋が付く。そういう風に使う場合は、ロングでのクルージングではそうなっていきます。でも、近場なら、ゲストが来ても、その日の夜は陸に寄るなら、場合によっては快適に過ごす為にホテルに泊まるという方法も有りです。ならば、食事も快適エアコン付きの部屋もあるし、温泉だってある。そして、翌日はまた快適セーリングです。そういう場合は部屋はあまり必要ではないと思います。荷物の置き場、雨避け、走っている時は、セーリングでもエンジンでも、キャビンの中はあまり快適では無いように思います。

快適な使い方、ヨットライフをトータルで点検して、考えてみてはいかがでしょうか?

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