第四十一話 充実のヨットライフ

充実というのはあまりにも抽象的で、具体的には良く解らない。しかも、ライフですから、1回の使用が楽しかっただけでは不十分で、全体的に、いろいろあるが面白いというのが必要かと思います。どうすればそうなるのか?

ヨットに毎日乗るという事もなかなかできませんから、回数で測るというより、回数も必要ですが、そのたびごとに使う充実度が必要でしょう。どうしたら、充実するのか、充実を感じるのかが重要になると思います。

結論から言えば、それは集中度によると思います。今やっている事にどれだけ集中できるかによるのではないかと思います。でも、頭で解っても、実行は別です。ですから、集中できるように自分でもっていく必要があると思います。

例えば、セーリングをする。2時間のセーリングの中で、10分でも20分でも、集中して、セーリングのバランスを楽しむ事ができたとしたら、その時間はかなり比重が重いものとなると思います。集中する時間とその度合いによると思います。但し、風が思うようには吹いてくれません。ですから、この集中力を維持するのは、簡単ではないかもしれません。でも、そんな中でも、人によってはいろんな場面で集中力を発揮できるかもしれません。集中力の度合いが高い、トータルの集中している時間が長い、そういう時、マリーナに帰ってきて、リラックスする。その緩んだ時、充実感が沸いてくるのではないかと思う次第です。集中してセーリングしている時は夢中ですから、充実とかは考えません。帰ってきて、リラックスした時、ああ〜今日のセーリングは良かったと思う。

つまり、緩む時間ばかりでは充実感は無い。緊張したからこそ、弛緩と合わせて、充実感が感じられる。緊張しっぱなしでは身が持たぬ。でも、ホームポートに帰れば、誰でも緩みます。ですから、セーリングにおいて、いかに集中できるかにかかっているのではないかと思います。

弘法筆を選ばずと言いますが、達人はどんなヨットでも、どんな場面でも集中できるのかもしれませんが、我々、凡人としては、好きなヨット、美しいと思うヨット、そういうヨット、道具、筆が必要かと思います。それはセーリング中の集中度を高める効果もある。自分の気持ちを高める為です。そのヨットを磨いて、整備して、きれいな姿に満足するのも、その効果のひとつかと思います。ただ、そこで止まったのでは、やがて、飽きも来る。

家族とにぎやかにセーリングをゆったり楽しむ。これも良い事です。これもセーリングのバリエーションのひとつかと思います。そして、これも集中セーリングの時の変化の違いとして、気持ちを高める効果がある。

よくある宣伝の言葉として、充実したヨットライフをこういう家族や仲間との団欒なんかの写真がありますが、本当はこれが充実では無く、充実させる為の効果ではないかと思います。それは、家族や仲間と一緒でも構いませんが、兎も角、集中度を高めたセーリングが時々散りばめられていてこそ、全体に充実感がみなぎるのではないかと思う次第です。かと言って、集中ばかりに気をとられると疲れてしまいますから、たまに、家族とのんびりセーリングも良し、自分の気に入ったヨットを磨くも良し、コクピットで宴会するのも良し、全ては集中の為にあり、集中は他ののんびりセーリングや宴会等が支えているともとも言えます。何故なら、感じるのは人間で、人間は理屈では無く、あいまいで、気分をいかに高めてやるかは、案外、集中は集中しない時があるからこそ、集中できるのかもしれません。のんびりがあるからこそ、集中もできる。

ですから、次の集中したセーリングの為に、お気に入りのヨットを整備して、緊張感のあるセーリングをする為に家族とのんびりセーリングしたり、或いは、風の具合によってはシングルでものんびりセーリングがあります。いろんな使い方をして、その中に緊張感を持った、集中したセーリングを織り交ぜていく。そうしますと、のんびりやってる時も、スリルに満ちたセーリングの落差を楽しむ事もできます。緊張は緩和が支え、緩和は緊張が支える。どちらが欠けても、充実感は失われるのではないかと思います。

1回のセーリングに緊張と緩和があり、1ヶ月のセーリングに緊張と緩和が混じり、全体にもバラエティーに富んだセーリング、使い方がある。多くの方々は楽しい場面、つまり緩和だけを楽しいものと考えられるのではないかと思いますが、それだけでは人間は満足しないと思います。集中する時としない時、緊張する時としない時、その両方をうまくコントロールする必要がある。別に危険な事をするのでは無く、自分が集中できる場面を数多く作るよう演出が必要です。

今回はのんびりセーリングする。漂うように、でも、これがあるからこそ、次回のセーリングに集中する事ができる。そういうもんかと思います。これがうまくコントロールできた時、ヨットライフは充実していると感じるのではないでしょうか。

では、いかに集中できるようにするか?

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