第四十八話 ヨットの概念

ヨットと一言で言いましても、細かく言えばいろんな種類があります。それに合わせて、いろんな使い方があります。量産艇が一般的と言えると思いますが、一般的な使い方と言いますと、多分、たまに仲間と集まってデイセーリングをするのと、年に1,2回のちょっと足を延ばしたクルージングではないかと思います。それも仲間が集まらないと動かないのが一般的なようです。これに使われるヨットというのは、特に何かを求めるというより、広さ、快適さという事になり、昨今の猛暑では、コクピットにはドジャーとビミニトップ、できればキャビンにはエアコン、艤装においてはメインファーラー、大きなヨットになりますと、電動ウィンチをという事になりつつあります。

さて、これ以外の使い方になりますと、求める物がもっと具体的になると思います。つまり、どこかが強調されてくる。例えば、レースになりますと、船体の強度と同時に軽さ、よって高価になり、大きなセールエリアとハイテクセール、動き易いコクピットという事になり、それに合わせて、キャビンは必要最低限という事になっていきます。また、外洋に行くなら、頑丈な船体、大容量の燃料と水、丈夫なリグ、重めの排水量、装備も違ってきます。

レースや外洋に行かない限り、一般的なヨットで充分使えるとも言えます。但し、仲間が集まらないと動かしにくいという点があります。という事は仲間と集まって面白いヨット、そうなりますと、仲間との食事やおしゃべり、そういう事に焦点が集まってくるというのは自然な事かもしれません。つまり、仲間との交流をヨットという手段で行う。これはこれで楽しい時間を持つ事ができます。ただ、問題はいつでも仲間が揃うのか、という事になり、そうは行かない場合は、動かない事になる。

仲間や家族との集い、1ヶ月に何回ぐらいそういう集まりをするでしょう。多分、1回もあれば多い方で、数ヶ月に1回ぐらいが平均なのではないかと思います。もし、そうなら、ヨットは数ヶ月に1回動かすという事になります。後は、メインテナンスをする。動かさないで、ヨットで過ごす。

一般的な使い方は、ヨットを使った集い、時間の過ごし方にあります。ヨットでセーリングを楽しむというのが主たる目的では無くなり、過ごす時間、楽しい時間が主になってくる。これが一般的な使い方かと思います。

そこで、マイナー的ではありますが、セーリングを主たる目的にするヨットの使い方を提案してきました。それは二種類あって、一見一般ヨットとは違わないように見えるが、ちゃんとセーリングの事を考えて建造されたヨット、遠くへもいけるようなキャビンも充分ありますが、セーリングもないがしろにはしていないヨットです。もうひとつは、遠くには行かないで、近場でセーリングを主にしたヨットです。

どちらもセーリングを楽しむヨットです。前者はクルーを必要とするかもしれませんが、後者はクルーを必要としない。セーリングを楽しむヨットなので、セールハンドリングが何もしなくて良いという楽さを求めるのでは無く、電動を使おうが、アクションを起こして、リアクションを楽しむという事に重点がおかれ、仲間との集いは、みんなでチームワーク良く、みんなでアクション&リアクションを楽しむゲームをする事になります。そして、集いを楽しむのは、おしゃべりや食事を楽しむのはセーリングが終わってからです。

つまり、ヨットは、その使い方によって大きく違ってきます。ヨットを使って、他の何かを楽しむか、或いはヨットそのものを楽しむか?どちらに主をもってくるかです。もちろん、両方を楽しむわけですが、どちらに重点を置くか、どのくらいの比率で使い分けるかで、ヨットは違ってくる。否、ヨットの前に意識の問題で、自分がどっちに重点を置くか意識する必要があると思います。

大勢で乗るとレースかレースの練習というテーマがないと、なかなかセーリングを主に楽しむ事は難しいのではないか、乗組員の数が少なければ少ない程、セーリングに集中しやすくなるのではないかと思います。ですから、必然的に仲間が増えると、集いになります。ならば、集いかセーリングか、その時に応じて臨機応変に対応するのが良いかと思います。そうしますと、両方を楽しむ事ができ、意識的にも、自分がどっちがより楽しいのかが解ってくる。集いの楽しさとセーリングの楽しさは異質ですから、それを意識するのが先決かと思います。

人は一度楽しい思いをすると、それをもう一度と思います。しかし、同じメンバーが揃っても、同じ場所に行っても、同じように楽しいとは限りません。むしろ、以前に勝る事は稀です。ですから、今ある状況でいかに楽しくするか、その都度演出する事が必要になる。より楽しむ秘訣かと思います
でも、その方がトータルで考えた場合は、ずっと楽しい事になると思います。

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