第五十六話 ジェントルマンズ ヨット

ゴルフはジェントルマンのスポーツとか言います。マナーを守る事、正直で誤魔化しの無いフェアーな事などが要求されますが、ヨットも同じだろうと思います。別にレースする以外はルールはありませんが、ジェントルマンらしく、いつもヨットはきれいに整備しておく。海外では、ヨットを購入する時、このサイズ、このヨットならオーナーが自分で手入れができるとか、このサイズならオーナー自らでは無理で、業者に頼むとか、そういう暗黙の了解があります。そのサイズがどのくらいかはそれぞれ違うでしょうが、自分でやるか、業者にやらせるか、その辺りの経費なども考える必要があります。そして、常に、ジェントルマンらしく、きれいにしておく。

購入するだけでは不十分で、そのヨットをいかに維持していくかをも考慮しなければなりません。大きなヨットを買える方はそれだけ予算もある。よって、自分でできなければ、業者にお金を支払っていつもきれいに保つ。或いは、自分でやりたいので、小型にするという事もあるでしょう。大型でも自分でできない事はありませんが、やはり相当な時間と労力を要します。セーリングする時間も必要ですから、そこの所を考えると、仕事しながらでは難しい事もあるでしょう。

大型であろうが、小型であろうが、自分でやろうが、業者にやらせようが、自分でヨットについて把握しておく必要があります。小型なら簡単な事も大型になると装備も増え、複雑にもなる。よって、クルーにも手伝ってもらって把握する。という事はやはり大型にはクルーが必要となる。これもオーナーが自分で理解する事もできますが、しょっちゅう関わっている必要があります。でないと、なかなか理解できない。どこに何があるか、配管などどこを通っているか?バルブ、スイッチ、切り替え、等々、大型になればなる程、便利であればある程、複雑なヨットになっていきます。それをきちんと把握する事は大切な事かと思います。

陸電があって、インバーターがあって、切り替えがあって、バッテリーチャージャーとか、バッテリーの数も多くなり、いろいろ考えるべきところがあります。それらを全部頭に入れておかなければ、せっかくの設備が使い切れない。或いはトラブルを引き起こす原因にもなる。単純にスイッチ入れて使うという事だけでは無く、バッテリー消耗、充電は?思いっきり電気使って、エンジンが駆けられなくなったら大変です。

セーリングするという技術も必要ですが、昨今のヨットはいろんな装備が設置されており、それらを頼りにしている以上、いろんな知識が必要になります。そして洋上では、頼りは自分だけですので、自分の為でもあります。洋上から携帯電話で連絡をする事はできる。でも、その時、解っている人は的確に話ができるし、原因を掴み易いのですが、知らない方は要領を得ないので、応えようが無いという時も多々あります。解らないでは済まないのです。

自分で全てを把握するのが一番ですが、大型で複雑になるなら、クルーと一緒にでも全体を把握する事が大切かと思います。そうしますと、初めて遭遇する場面、トラブルでも、応用が効く。全てを把握して、きれいに保つ。これがジェントルマンヨットではないかと思います。ですから、操船から維持管理まで、自分でするのもおおいに結構ですし、是非お奨めしますが、どうしてもできない場合はクルーや業者に頼む。そして、いつもきれいにキープし、ヨットの事も充分理解する。そして、気持ち良くいつでもセーリングできる環境を整えておくこと。そんなヨットはジェントルマンズ ヨットと言える。

日本の車は非常にみんなきれいです。しかし、海外に行きますと、ボロボロの車が走っています。火を吹いているのを何回かみかけた事ありますし、日本では考えられないぐらいボロの車が走っている。この点、日本の平均レベルは非常に高いです。しかし、ヨットになりますと、これが逆転して、日本の平均レベルは非常に低い。何故でしょうか?車よりヨットの方が高価です。しかも、古くなっても売れます。大事な資産です。これからは大事にされたヨットはその分高く売れるようになっていかなければなりません。でも、みんなで、ヨットほったらかして値を下げている。ジェントルマンは物を大事にしなければなりません。もはや使い捨て時代は過ぎ去ろうとしています。環境もうるさい。ならば、良いヨットを手に入れて、存分に使いながらも、きれいに維持管理して、大事に長く使う事を考える時が来ています。ヨットは誰でもは乗れません。それはステータスにもなります。ほんの一部の人しか、ヨットの味わいを経験できない事実があります。そんな選ばれた方々はジェントルマンでなければならないと思います。お金さえあればヨットのオーナーになれますが、これからはヨットオーナーであるという事は、ジェントルマンであるという事にも繋げていく事が、さらにステータスを押し上げるという事になるのではないでしょうか。誰でもヨットオーナーにはなれません。オーナーになるという事は選ばれた事、名誉ある事です。その名誉はジェントルマンである事によって、さらに高められる。ジェントルマンのセンス、価値観、それがヨットに現れる。そしてトータルでヨット社会を作り上げる。レディース&ジェントルマンの社会です。誇りに思える社会です。大きなヨットだろうが、小さなヨットだろうが、古かろうが新しかろうが、みんなジェントルマンになって、ヨット社会を作り上げて、誇り有る社会にしていく。ヨットをやるというのは、ジェントルマンですと、宣言している事、そういう社会にしていくというのはいかがでしょう。

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