第八十三話 アフターセーリングの演出

セーリングでの演出は自分でしなければなりません。自分でするところに面白さが出てくる。でも、プラス・ワンの寛ぎには、いろんな人の助けを得てでも演出するのが良いと思います。まずは、セーリングに出る前から、今日は、アフターセーリングでどうするかを決めておく。

何人かでセーリングするなら、みんなの持ち合いでとか、船酔いする奥さんなら、アフターセーリングの帰ってくる時間に料理を持ってマリーナに来てもらうとか、簡単なサンドイッチでも良いし、どこかで買ってきた弁当でも良いし、コクピットでゆっくり過ごす。或いは出前を取る。マリーナのレストランが出前してくれるなら都合が良い。その代わり、家路の途中には奥さんの買い物に付き合うとか。

いつもいつもでは無くても、たまにそういう演出をしてみてはどうでしょう。シングルの方でも、アフターセーリングを楽しむ事も考える。それがメインテナンスである事もあるでしょうが、何か楽しい事をする事もプログラムに加えてみる。とびっきりうまいコーヒーを入れて、コクピットで寛ぐのは、アフターセーリングでは至福の時になるかもしれません。

2〜3時間の集中したセーリングでは緊張感を伴います。緊張感無しではセーリングは堪能できない。そこで、アフターセーリングも活きるというものです。この緊張と緩和を楽しむ。そうすると、セーリングもアフターセーリングも、両方が充実してくるのではないでしょうか?多くの方々が、セーリング中にお弁当を開ける。それでも良いのですが、メリハリだけは付けた方が良いと思います。そして、アフターセーリングはバタバタと片付けて帰路に着くより、そこでゆったりと過ごす。

今の時期はとっても良い季節で、寒くも、暑くも無い。海に出るとちょっとひやりとした感じで、緊張感を持って走るには最高でしょう。夏は暑くて、ちょっと御免こうむりたいですね。それに今の時期はコクピットで過ごすにも丁度良い。そんな時、たった一杯のコーヒーの香りが無性に寛ぎ感をかもし出す。まさに、セーリングの緊張感と寛ぎの緩和の対比が、何とも言えない安らぎを感じさせます。

セーリングで緊張した後、そそくさと片付けて帰りますと、緊張感を引きづったままです。その緊張感はほぐしてやった方が良い。30分でも良いから、おいしいコーヒーを入れて、緊張感をほぐし、安らぎを感じると、そのたった30分間でも、セーリングを含めたトータルでの楽しさ、面白さが感じられるのではないでしょうか?ただ、疲れて、そのまま帰るのは、あまり良くないような気がします。
その疲れが、その日の記憶の最後に残ります。それではいけません。最後は、寛ぎで、緊張感をほぐし、体をほぐし、ゆったりした気持ちを、その日最後の記憶として残す。疲れた印象では無く、寛ぎの印象です。するとセーリングの記憶は、良い場面としてだけが強く残るのではないかと思います。

海に出ればいろんな事がありますから、恐怖感を感じる事もあるかもしれません。そのまま帰るのは感心しません。そういう時こそ、おいしいコーヒーの一杯をゆったりと味わって、緊張をほぐしてから、帰るのが良いように思います。最後に良い記憶を残しておきましょう。

アフターセーリングの演出は、いろいろあるでしょうから、何か工夫されてはいかがでしょうか?マリーナにもよりますし、場所にも寄るでしょうが、ここに何か工夫が必要かと思います。ここはマリーナにも期待したいところですが、無い物は無いので、それでは自分でいろいろ考えるしかありません。ヨットは自分で自分を接待する物であり、誰かがやってくれるエンターテインメントではありませんので、全ては自分次第という事になります。アフターセーリングは、ひょっとするとセーリングを楽しむ為にも必要な事かもしれません。スポーツの後のクールダウンとなるのではないでしょうか。

今まで、セーリング、セーリングと言ってきましたが、これからは、このアフターセーリングとセットで考える方が良いように思います。たった一杯のコーヒーでも良いんですから。要は安らぎを、その日、一日の最後の記憶として残しましょう。

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