第十九話 蘇るセーリング

舵誌の新しい企画、プロセーラーが見るヨットという事で連載がスタートしていますが、お気づきの事でしょう。この企画で、新しい流れが垣間見えてきた、という気がします。これまではレースか、クルージングかで、クルージング艇については、内装や装備に重点が置かれてきたような気がします。しかし、日本唯一のヨット雑誌社である舵社が、そういう企画を立てたという事は、それもレーサーでは無く、クルージング艇に対してそういう企画を持ったという事実が、そういう感じを匂わせます。

クルージング艇に対して、プロセーラーが実際にセーリングして、その評価をする。当然ながら、セーリングに目が行くでしょう。そのプロがどんな評価をするかは、それはクルージング艇でもどんなセーリングを味わう事ができるか、そういう観点でヨットを見ます。ヨットなんですから、当然ではあると思います。

やっと、これからは、クルージング艇にもセーリングそのものを遊ぶ気運が高まっていくのではないかと、多いに期待するところです。内装も結構、温水も結構、でも、ヨットはセーリングするのが最も面白い。それが自論です。クルージング艇のセーリングは速さを競うわけではありません。重いヨット、軽目、幅が狭い、広い、船型もいろいろですが、速さだけに重きを置けばレーサーにどんどん近づいて行きます。しかし、クルージングのセーリングは別な味わいを持つ。そのヨットの持ち味を、いろんな事して味わう。

良いか悪いかという評価をしますと、速い方が良いという事になります。しかし、クルージングのセーリングは良いか悪いかでは無く、どんな味わいをこのヨットは持っているか、セーリングからどんな味わいを得る事ができるかではないでしょうか。時化にはめっぽう強いが、重くて遅いというのもありますし、その逆もある。でも、これらは悪い事でしょうか、良い事でしょうか?ですから、良いか悪いかの評価を下さずに、そのままを味わうのが良かろうと思います。このヨットはこういうセーリングをして、こういう味わいをもたらしてくれる。それをじっくり味わう。

そこに人間の方が目的を持つと、それが重点的に見られますから、良し悪しが出てきます。でも、クルージング派のセーリングは目的を持つ必要も無い。ただ、違う味わいを求めたくなるかもしれません。これはこれで良い。でも、次に、こういうセーリングを味わってみたい。そういう事もあるでしょう。決して、良し悪しでは無い。それで、同じクルージングヨットでも、様々ですから、全く別のタイプなんかに乗りますと、このフィーリングは全く違ってきます。

できればいろんなヨットに乗れると良いのですが、そうも行きませんので、できるだけ味わって、感じていけば、きっと自分に合うセーリングスタイルが見つかるでしょうから、最後はそこに行き着く。

これからは、クルージング派のセーリングです。それをいかに面白く味わうか、それはキャビン一辺倒ではわからない味わいです。いろんな味わいがある中で、どんな味わいを得たいか?それがクルージング派のセーリングの遊び方になるのではないでしょうか。

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