第六話 ちょっとカッコ良く

誰でも年を取りますが、他人から見てどうかという事もありますが、自分自身でそれをちょっと感じると、少し寂しさも感じます。いつまでも自分は若いつもりが、確実に年は取ってる。こういうと年を取るなんていう事は悪い事のように聞こえますね。若い時は二度無いとか言いますが、年寄りだって二度無い。同じように貴重です。

貴重な今という時間を、いつも大事にして、ちょいとカッコイイオヤジになるのも悪くは無い。世間で言うチョイ悪オヤジ、ちょっとおしゃれにも気を使って、スポーツカーでも乗り回す。暇があっても、ぐうたらしてたら、あっという間に老けてしまいます。それでちょいと努力も必要になる。

人は楽が好きなので、油断してしまうと、つい何でも楽に走って、老けてしまいます。別に老けても良いんですが、この場合の意味は精神的に弱るという事、ですから、カッコ良い自分にするにはやはり、ちょいと努力が要る。何にでも興味を示した、好奇心旺盛の若い頃、そこまでは行かないかもしれませんが、やはりり何にでも興味が無くなるといけませんね。でも、若い頃は往々にして、する事から見返りを求める。将来はこうなりたいとかです。でも、年とってからだとそういう期待も必要無くなる。それは今のやっている事をそのまま楽しむ事ができるというメリットがありますね。

ちょいと努力が要りますが、ある興味を持った事に、ちょいと努力をしてそれをやる。どうせ、なんか考えずに、それで何かになろうという事では無いわけですから、楽しめれば良いわけです。でも、その楽しさを得るにもちょいと努力が必要になる。エアコンの効いた家に居てできる事は、そう多くは無いので、エアコンの効いていない外に出る。何かをしようとすると、学ぶ事、練習する事も多少はある。そういう新しい物を習得しようというエネルギーを出すには努力が要る。今までやってきた事でも、もっと深く突っ込んでいくにも努力が要る。

この努力は辛いものではありません。むしろ、面白い、楽しい努力でなければならない。だから世間ではこれを努力とは言わ無い。ただ遊んでいるだけ。一生懸命遊んでいる人を見て、世間は努力の人とは言いません。遊び人です。でも、夢中にやってる本人からすれば、努力をせずに、楽しく、面白くやれるなら仕事も勉強も遊びも同じ事。そこに未来の期待があるかないかでは違いますが、期待があれば仕事も遊びも同じ事。期待の無い遊びには、無限の可能性がある。

未来に期待する仕事や勉強にはエネルギーが消耗され、未来に期待しない遊びにはエネルギーの補給になる。若い時はありあまるエネルギーを持っていますから、多少消耗しても良いのですが、年取るとそうはいきません。ですから、年取れば取る程、遊ばなくてはいけません。年齢を重ねることは経験を多く積む事で、その分余裕ができる。その余裕は遊びとして使う事ができる。同じ仕事をしても余裕でできる。余裕があれば、その仕事を遊ぶ事ができるかもしれません。

それで仕事ばかりしてたんでは面白く無いので、スポーツをする。楽器をする。ゴルフでも、山上りでも、サーフィンでも、ヨットでもやる。今更なんて言う人も居ますが、考えてみれば、それをやって未来に何かを期待しているわけじゃないんですから気楽です。プロになろう何てことでは無いんですから。興味があったら、是非、始めて頂きたい。何をするにしても、新しい世界が開ける。新しい世界を切り開いていく事こそが、カッコイイオヤジの原点かと思います。最初はなかなかうまくいかない事も、しばらく続ける事で、いつの間にか少しはカッコ付くようになってくる。最初が肝心です。
第一ステップさえ乗り越えれば、次からはもっと面白くなる。

ヨットはとりあえずマリーナから出航して、ぐるぐる回って帰ってくる。上手下手は別にしてです。これで第一ステップ終了。ここで安心してしまう人が多い。それでみんな楽なキャビンに行ってしまう。そこがいけません。カッコイイオヤジをキープするには、ここからが大事、新しい世界を切り開いて行くという事が大切です。それも興味を持って、面白くです。努力は不要。ただ、ちょいと次のステップのドアを少し開いてみる必要がある。それをしなくなると、前に戻ってしまいます。かっこ悪くなる。そこに留まる、停滞する事、それはかっこ悪い。

セールについて学びましょう。舵について学びましょう。ヨットはいろんな学びが必要ですから、その扉を開く。すると次の世界が開けてきます。一辺に大きく開くと圧倒されるかもしれませんので、少しづつ隙間を広げていきます。そして、いつの間にか夢中に遊んでいる。世間ではそれをカッコイイと言います。自分は自分で活き活きしている。それが面白く無いなんて事は無いはずです。

カッコイイオヤジになっても、底の浅い、表面だけなら長続きはしません。その裏にカッコ良さを裏付ける何かが必要です。それは学びと練習だろうと思います。それがあるから他とは違う。そしてその学びと練習をいかに楽しめるかが重要です。表舞台に立つ事が楽しいのでは無く、日々の練習と学びが面白い。そういう裏づけがカッコよさの秘訣ではないでしょうか。自分が面白くて、カッコイイのなら、こんな良い事はありません。

新しい扉を開く度に、ちょいと努力はするが、後は面白くやるのがコツです。船舶免許を取る。殆どの人は持っていない免許です。ヨットをやる。殆どの人はやっていない。それにイメージとしてもカッコイイですね。ちょいと練習して、マリーナからの出し入れを、ちょいと練習して帆走を覚える。これができるだけでも、世間的に見ればカッコイイのですが、みんな慣れてきますので、常に前へ進む必要があります。停滞はかっこ悪いです。

それで、より良いセールコントロールを学び、舵操作を学ぶ。何でもそうですが、スムースになる。それがカッコイイ。そして奥が深いので、いくつも扉を開ける事ができる。コースは三つ。レースに出るコース、航海のコース、そしてセーリングのコースです。この三つとも、どれが上でも下でも無く、ただコースが違うだけ。ジャンルが違うだけです。

このうち誰にでもお奨めしたいのが、セーリングのコースです。誰でも出来て、短時間で出来て、それでいて奥が深い。これは他のふたつへ通じる道でもありますし、基本中の基本かもしれませんが、その中にも深さがある。

スポーツカーは見た目にもカッコイイですが、スロットルさえ開けばスピードは出る。ただ、それを運転するにも技術は必要でしょう。ヨットのセーリングの場合は、簡単にスロットルを思い通りに開く事はできないかもしれません。技術をより要求される。それだけにカッコイイのです。ヨットやるだけでもカッコイイのですが、それをさらに向上させていくのが永遠のカッコ良さを味わう秘訣かと思いますね。是非、この扉を開いて見て下さい。新しい世界が待ってます。

スポーツカーとキャンピングカー、どっちがカッコイイでしょうか?エアコンの効いたキャビンで寛ぐのと、セーリングするのとではどっちがカッコイイでしょうか?家族を大事にする事も必要ですが、ヨットはカッコイイオヤジになる方に向いています。そのカッコイイオヤジが乗る、カッコイイヨットに
家族を乗せる事だってできます。でも主体はカッコイイオヤジの方が、多分家族も好むと思います。家族が来るなら、寛いだ自分よりも、カッコイイ姿を奥さんや子供に見せつけて下さい。家でビール飲んでひっくり返ってる親父の姿を、ヨットでも見てもしょうがない。ヨットでは俄然張り切って、セーリングの何たるかを見せる。一緒に寛ぐだけなら、ヨットであるという場所から来る意外性ははそのうち薄れてくる。それより、カッコ良いオヤジが、カッコ良く操船する。セーリングの醍醐味を垣間見る。ファミリークルージングと言っても、その方がずっと良いと思います。その方が結局は家族を大事にしてる事に繋がる。家族の為にと思った事が、寛ぎの場所を提供する事では無いと思いますね。それに自分の為なら、カッコイイ方が良い。セーリングは自分の為、みんなの為でもある。

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