第十話 特別な遊び

ヨットは特別な物です。誰もができる遊びではありません。ですからステータスにもなります。特別な遊びですから、遊ぶ時も特別と考えます。つまりは、特別に計画を立てて、楽しむ事を考えます。
しかしながら、特別と考えれば考える程、ほんのたまにしか遊ぶ事ができなくなります。

今度の日曜に、誰々を誘って、どこどこに行く。そういう計画が出てきます。しかしながら、何も考えずに、ぶらりと行って、ぶらりとヨットを出すという気軽さがありますと、もっと遊ぶ事ができるのではないかと思う次第です。

ヨットは確かに特別な物ではありますが、自分の気持ちの中では特別から普通の事と思うようになれると、この気軽さが出てくるのではないか?端は特別に見ますが、自分はもっとカジュアルです。
普段に、気軽にセーリングができる、何ら特別な事は無い。計画も無い。出て考える、風向きで考える、誰と行くかも、その時考える。そんな気軽さを持てれば良いなと思います。

ちょっと暇が出来て、ならばマリーナに顔を出す。あたりは暖かくなってきたし、良い風が吹いていたら、ちょっと出してみたいなと思う。それで、気軽にチョイと出し、2時間ばかり走ってくる。そんなお気楽なセーリングを普段からやる。たまたま出合った人を誘うのもお気楽、別に遠くに行くわけじゃなし、そこらをくるっと回ってくるだけ。それでも、セーリングの面白さを味わう事ができる。

こういう乗り方は実に気軽です。何ら気負う事も無く、その為には気楽にヨットを動かす事ができなければなりません。という事はシングルでも簡単に動かせると、こういう気持ちにもなろうと言うものです。奥さん誘っても良いし、子供でも良い、思い浮かんだ友達に電話しても良い、それでもたまたま都合がつかなかったら、ひとりでも良い。そういう遊び方ができないかと思います。

サーっとセーリングを楽しんできて、コーヒーの一杯も楽しんで、そしてまた次の所に行く。或いは、かみさんの買い物に付き合う、映画を見に行く、いろいろあります。マリーナまで遠いと、なかなかこうは行かないかもしれませんが、できるだけ気持ちの中では気軽さを携えておくのは、悪くは無いのではないかと思います。マリーナに電話して、今日の風の具合なんか聞いて、それで出かけても良い。

クルーが居ないと動かせないヨットは、こうは行きません。余程、相手も乗りたくてうずうずしているなら別ですが。人が集まっても、特別にご馳走なんか考えない。宴会もしない。コーヒー一杯で充分、メインディッシュはセーリングですから。

特別な機会を持つ時は、前準備をして、友人を誘い、天候も考慮しながら、特別イベントとして計画を立てる。それはそれで良い。でも、普段はカジュアルに、気楽に、無計画に、そうなるとセーリングが日常の風景になります。セーリングは非日常を求めて、なんか言いますが、その非日常であるセーリングを日常化してしまう。そうすると日常が変化に富む事になります。日常が面白くなる。
毎日とは行かないにしても、セーリングという非日常の行為が、少し日常に入り込んでくる。何ら特別な事では無く。特別な事では無いが、行為は非日常性をやはり味わう事ができます。

この気楽さを何とか取り入れる事ができたなら、もっと面白くなるのではないか、と思う次第です。
いつも計画するイベントばかりですと、計画しないと乗れなくなります。どこかに行かないと乗れない、誰かを誘わないと、宴会をしないと、乗れない。それでは不十分。無計画が一番です。風の向くまま、気の向くまま。これこそ自由自在。

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