第三十話 五感

食事はうまければ良いというわけではありません。きれいな皿に、きれいに盛り付けられる。そういう目で楽しむという事も大事です。スーパーで買った食糧も、パックのまま出されるより、きれいな皿にきれいに盛り付けた方が良いわけです。目で鑑賞します。臭いもそうです。うまそうな臭いを嗅いで楽しむ。食べて食感も楽しみ、味を楽しみ、物によっては音も楽しむ。食事も五感で楽しめれば、それにこした事は無い。うまい食事は良いのですが、他の要素もそのうまさを引き立てる事になります。まずいのは論外ですが。

ヨットも同じで、目で楽しむ。それはデザイナーの美しいデザインばかりでは無く、きれいに磨いてあるとか、シート類が古くなって、カビなんかでてたら目で楽しむ事はできません。鼻は潮の臭いを嗅ぎ、耳は波と風の音を聞き、舵を握る手に、シートを握る手に感触を得、体でも感じます。それらがみんな揃って、セーリングの味わいを盛り上げる事になります。

そして、食事の主役が味にあるように、セーリングの主役は性能にある。その性能もいろいろあって、中華やイタリアンや和食があるように、いろんな味がある。どれが他より優れている事は無く、どれが好みかという事になります。スピードであったり、波に対する強さ、、柔らかさであったり、復元性であったり、これもいろいろあります。食事のように、今日はフレンチ、明日は刺身とかのように、ヨットの性能を変える事はできませんが、その味わいのバリエーションは味わう事ができます。風邪が違う、波が違う、上り、下り、スピード重視の走り、のんびりセーリング、いろいろです。ですから、その都度の乗り方において、面白い演出ができれば最高かと思います。

日本人に食事は和食がメイン、後はバリエーションでしょう。そうなると、ヨットでも主は何か?何を最も好むかが、そのヨットの主たる使い方になります。ピクニックでも旅でもセーリングでも良いわけです。そして、それだけでは寂しいので、時に、違うバリエーションをくわえる。違う乗り方をする。
セーリングが主なら、それがもっともしやすい状況を演出し、それをメインとして遊び、時に、誰かを招待してピクニックや、ちょっとした旅や宴会、キャビンに泊まったりがバリエーションです。逆に、ピクニックが主役なら、誰かを誘って、いろんな人を誘って、気軽に出る。そして他の事がバリエーションになる。

できるだけ五感を使って、楽しめるように、汚いヨットには乗る気が失われます。音が聞こえなかったら、多分気分も違うでしょう。自然と五感で感じているものですが、それを意識してみると、どうでしょうか?五感に頭脳を足して、おおいにセーリングを演出して、楽しみ、人を楽しませてあげる。
ヨットも活きてくると思います。特に、目で感じる事が比重が大きいですから、いつもきれいに保ちたいものです。

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