第四十五話 3拍子

気がついたら、キャビン内であっても金属類がやや錆びてきてたり、トイレの手洗いの蛇口が汚れてきたり、ドアの兆番も錆がきたり、ひとつひとつは細かい事ではあるが、やはり環境の事もあり、汚れてくるとどうもいけません。装備が増えれば増える程に、そういう手はより多く必要になってきます。たまには、キャビン内も掃除を、特に金属類は磨いておいた方が気持ちが良い。

ヨットは乗るにも手間がかかり、維持にも手間がかかる。世話のやける彼女みたいなもんです。彼女にはいつも美しくいてほしい。ならば、自分でやるか、誰かにお金を出してやってもらうか、そうしないと、彼女はそのうち美しさを失う。

購入時には、どうやって動かすかとは考えますが、どうやって維持できるかはあまり考えない。考えたとしてもマリーナの保管料ぐらいか?しかしながら、ヨットは車と違って、数十年は大丈夫、となると、新艇時の作り方も重要ですが、それから先はいかに維持できるかにかかっている。暇があるなら、つきっきりで可愛がる事もできますが、忙しい方にはそうもいきません。

ヨットには、乗るという事の他に、機械的なメインテナンスと、美しく保つ為の維持があります。これらを全てできる事が必要になります。この3つは、本当はどれも欠かす事のできない要素ではないかと思います。自分で全部できるか?できなければ誰かに頼むか?その費用も考える必要がある。誰かに頼むにしても、頼む側も充分に自分のヨットの状態を把握しておいた方が良い。その方が、頼み方も違ってくる。

手間のかかる物はやっかいです。でも、手間のかかる物が、いつも美しく、最高のコンディションで居るというのは実に気持ちが良い。それに乗るというのがまた良い。本当はそうでなければならない。ヨットのサイズ、性能、操作性、それらに加えて、保管料、メインテナンス、維持費、それらを自分でやるか、誰かにやってもらうか、それによってはサイズも変わってくる。装備も変わる。

日本では、なかなかこの維持にお金をかける方が少ない。自分の労力を費やす方が少ない。それでは、20年、30年経って、二束三文になっても仕方が無い。半年に1回、年に1回でも、内外をきれいにクリーニングしてやる。隅から隅まで、そういう必要がある。あっちこっち覗けば、事前に不具合も発見できるでしょうし、なにしろ、自分のヨットがどうなってるのか良く解る。これらは全てセーリングにも役立つ事になります。気持ちよく遊ぶ為には、その下地が大切。

海外で聞いた話ですが、このサイズならオーナーが自分でできるサイズ、このサイズになるとオーナー個人では無理、そんな事が暗黙の了解のようにあるようです。すると、でかいヨットを購入される方は、そういう維持費も考慮するのが当然になる。ヨットは美しい。その美しさを維持していくのが当然必要であります。ですから、ヨットはやっかいなものです。そのやっかいな物を美しく維持し、乗り回すのがカッコイイわけです。ステータスを物語る。

ヨットのオーナーになる事は簡単ではありません。誰でもとは行かない。だからこそ、いつも美しくしておく必要がある。買ったは良いものの、その後はほったらかしで、状態が悪くなる。どうもカッコイイとは思えません。サイズが大きかろうが、小さかろうが、美しく維持する。それはカッコ良くセーリングする為の支えのようなものかと思います。それがトータルでカッコイイになる。こんな美しいヨットを維持できるというオーナーがカッコイイのです。何故なら、維持するのは簡単では無いからです。サイズに限らず、美しいヨットを自由自在に乗り回すのがカッコイイかと思いますね。大きなヨットを自由自在に乗り回すのは難しい、おまけに美しく維持するのも大変です。欧米人はでかいのが好き。この大変さを乗り越えて、それができるというのがステータスなのかもしれません。いくらスーパーヨットでも、汚くしていたのでは、カッコ良く無いわけです。買えるカッコ良さ、維持できるカッコ良さ、乗り回せるカッコ良さ。3拍子です。どれが欠けてもいけません。

宝くじでも当たれば大きなヨットが買える。でも、維持は難しい。ビジネスの成功者はヨットを買って、維持もできる。しかし、乗り回せないならいけません。3拍子揃えるのは難しい。ですから、尚の事、それができる人はカッコイイわけです。小さくても、大きくても、3拍子を揃えましょう。

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