第五話 デイセーラーの実力

考えてみれば当然の事ではありますが、デイセーラーというのは、いかにセーリングをするかというのがテーマであり、キャビン等は付属品としての考え方を持っているだけに、セーリングにおいては、他のヨットとは一線を画す。

特にその安定感は別格の感があり、単なる腰の強さという表現より、安心感につながり、よって体が非常に楽にセーリングができる。この事は、一人でセーリングするうえにも、気軽さを持って臨む事ができますので、大きなメリットになります。

例えば、キャンピングカーを運転して感じるドライブ感とスポーツカーを運転して感じるドライブ感は全く違うでしょう。それと同じで、スポーツカーがキャンピングカーと同じ性能では話にならないわけで、キャビンを諦めた分、走りを追求し、重心を低く、足回りを固め、風の抵抗を考慮し、エンジンもブレーキもそれに合わせた造りをします。これで走りの性能が同じなわけが無い。でも、レーシングカーではありません。

デイセーラーもこれと同じ事が言えます。帆走性能を第一に考え、でもレーサーでは無いので、扱い易さ、乗り心地、等々も考慮されている。当然といえば、当然の事であります。

結局、キャビンを遊ぶか、セーリングを遊ぶか、この違いの選択になると思います。面白さをどこに見出すか?そこに選択の道があらわれる。キャビンヨットでもセールはある。デイセーラーでもキャビンはある。でも、質的には違う事になります。

みんながみんなスポーツカーを買うわけではありません。ドライビングに面白さを見出す人だけかもしれません。車は多くの場合、交通手段になるからです。でも、ヨットの場合は交通手段にはなりにくい。という事はセールフィーリングが主体になっても可笑しくないと思うのですが。ヨット本来の面白さという点では、セーリングに勝るものは無いと思います。従って、セーリングを遊ぶならデイセーラーはもってこいのスポーツヨットです。

アレリオンに乗っていますと、セルフタッキングジブですから、簡単です。いつでも、簡単にタッキングができる。ぐるっと回って360回転だってできる。でも、このヨットの面白さは、そういう簡単操作というところより、むしろ、操作が簡単になったので、よりセールトリミングができるというものです。
そういう操作を遊ぶ事ができる。各シートのみならず、バング、バックステーアジャスター、カニンガム、アウトホール、メインのトラベラー、こういう操作がし易い。そういう操作をもって、もっと深く遊びましょうという提案でもあります。簡単だからする事無いのでは無く、もっと遊ぶ事ができる。動けば良いという次元から、もっと深く入って遊んで見ましょうという提案でもあります。それが面白いんですから。しかも、ひとりでも簡単に操作ができる。

デイセーラーの実力というのは、より深いセーリングを容易な操作で堪能できる。何もハッスルする事無く、いろんな調整をして、その変化を感じる事ができる。そういうヨットかと思います。まさしくスポーツカーと同じ、スポーツヨットです。ヨットは操作して楽しむものであります。その操作がハッスルしなくても、容易に任意の位置に調整できるなら、後は、自分の知識と過去の体験と、学んできた事、頭脳のゲームをしながら、その反応を楽しむ事ができる。

レーサーでは無いにしても、セールのドラフトの深さ、位置、角度、等々を考えながら、調整しながら、それに対してより良い反応を見せてくれるなら、これが面白くないはずが無い。セーリングとはそうやって遊ぶもの。もうちょっとこうしたい、ああしたい。こういう時はどうしたら?そんな謎解きゲームも加わっていきます。それで、快走する時の気分はどうでしょう?そんな味わいを是非、味わって頂きたいという提案です。

次へ          目次へ