第十二話 デイセーリング V

基本は真っ直ぐ走る事にあると思います。いろんな変化のある中で、兎に角いかに真っ直ぐ効率良く走るか?これだけでも相当なもんだろうと思います。微風から強風まで、いろんなセッティングの仕方があって、そのいろんな状況に対応できるようになり、快走できるようになる事、ここに多くの要素がが含まれていると思います。上り、少しづつ落として、ダウンウィンドまで、真っ直ぐ走るにもいろいろある。そのいろいろの中で、真っ直ぐ走る時、より良くは走れるようにするには?

そこには求めれば、向上があり、スポーツになります。そして真っ直ぐ走るだけでも、フィーリングはピタリと行けば、何とも言えない快感になる。タックとジャイブは瞬間の事、これもスムースにできるようにした方が良いですが、まずは真っ直ぐ走る、あらゆる角度で、これが簡単なようで、実は難しい。より良くという意味では難しい。デイセーリングのセーリングは、このより良くを目指すセーリングになろうかと思います。そして、より良く走れれば、気分もそれに伴って良い気分になる。デイセーリングのセーリングは質を求めるセーリングになる。

ですから、艤装の全てを使って、より良いを求めますから、知識が必要です。シートだけの操作では限界がありますから、少しづつでも知識を増やして、より良いを求める。もちろん、レースのように素早くする必要は無く、ゆっくり、自分のできるペースで良いわけですが、それでもより良くを求める。デイセーリングのセーリングは質の向上を目指すセーリングです。インテリジェンスが必要です。体力はたいして無くても、観察力が要る、判断力が要る、知識が要る、そして感性が要る。
簡単な話、うまくなればなる程、面白くなる。まるで、ヨットを手足の如く、一体感を持って操船できるようになる。そうなれば、きっと面白いに違いない。

あるオーナー、もう熟練した方ですが、強風の時に、みんながリーフしている中をフルセールで走られた。緊張の中を、でも、解っている。動きが解っているから大丈夫なんだと言われていました。うまくなると、自分で緊張感をバランスを取りながら楽しむ事ができる。是非、うまくなって、自分の緊張感を楽しめるようになりたいもんです。何もアクロバチック的な、特別の事をしようという事では無く、自分の緊張感が解って、ヨットが解って、風と波が解って、それらのバランスをうまくコントロールしながら楽しむ。その緊張感はそれぞれ異なる事になりますが、自分の今のレベルで、向上を図りながら遊ぶ。危険な事をするという事では無く、解っているという事が大切で、うまくなるとはそういう事かと思います。自分の緊張感を遊ぶという事になります。

反面、デイセーリングには穏やかなセーリングもあります。風が弱い時、ゆったりとはったセールにゆったりと走る。それでも、うまくなればセールはより適切に展開されている。突然のブローにも、何かにも対応がすぐにできる。彼女を誘ったデートセーリングなんかも、ゆったりと楽しむ事ができますし、楽しんでもらう事もできる。子供や孫や、或いは奥さんなどを誘って、季節の良い日には是非、デートセーリングを楽しんで頂きたいと思います。何度も言いますが、何もご馳走なんかは要らない。セーリングこそがご馳走なのです。

シングルハンドでデイセーリングを堪能する。しかし、最後はやっぱりひとりでは充分じゃないと思います。面白味、楽しみが完結しません。何が必要かと考えますと、やはりその楽しみを分かつ事、誰かと一緒に乗るだけでは無く、話を分け合ったりする仲間、聞いてくれる家族があればこそ、その楽しみはそれで完結されるのではないかと思います。

ヨットは乗り方次第で、戦闘的にもなれば、ゆったりにもなれる。それをオーナーがコントロールして、自由自在を目指す。そして、時折、友人を奥さんを、子供、孫、誰かを乗せてあげる事は絶対必要かと思います。喜びは、自分だけでは完結せず、誰かと分かつ時、完結されるでのはないでしょうか。マリーナに行って、たったひとりしか居なくて、ひとりで出して、堪能してきたとしても、マリーナに戻って、また誰も居ないとしたら、ちっとも楽しくない。やっぱり、誰かに居てほしいものです。
例え、一緒に乗らないにしても、誰かに話を聞いてもらいたいものです。しょっちゅうじゃ無いにしても、たまに誰かと酒でも飲んでヨット談義なんかしたいのです。それで、やっと楽しさが完結するのではないかと思います。

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