第十七話 遊びの環境

日本は海に囲まれているんですから、ヨット環境としては、最低限の基本的環境には恵まれていますね。この海が無ければ、ヨット遊びは不可能ですから。日本は恵まれています。

セーリングをするという意味では、海があるからそれで良いわけですが、そうも行かないのが人というもんかと思います。遊びの面から見ますと、海はあるけれども、なかなかエンターテインメント性が無い事に気付きます。マリーナに居て楽しさがあるか?或いは、あっちこっちに桟橋付きのレストランやバーなんかがあったら、良いでしょうね?イタリアだったか、漁港みたいなところに入って、そこに桟橋は無かったけれども、彼らは気軽にアンカー打って、バックで岸壁に近づいて係留、まるで簡単な日常のひとつのような光景でしたね。そこにはこじゃれたレストランがあって、軽くビール一杯飲んで、ブルブラして、適当に帰る。気楽なもんです。車のドライブ感覚とあまり変わらない。この気軽さ、おしゃれさにビックリです。

日本がヨットやボートの先進国になれないのは、ヨットやボートのせいでは無く、もちろんオーナーのせいでも無く、こういう遊びのエンターテインメント性が非常に少ないのが原因ではないでしょうか?欧米のように、そういう施設があれば、もっともっと流行るような気がします。マリーナからちょいと出て、セーリングを楽しみ、1時間か2時間も走れば、いろんな桟橋付きの大人の為のお遊び場があるとしたら、レストランやバー、ジャズクラブとかいろいろです。もし、そういうのがあったら、エンターテインメント性が高いので、なかなかおしゃれな遊びとなって、いつかはこういう遊び方をしてみたい、とかなるんじゃないでしょうか?何と言っても、楽しさが簡単に想像できますからね。それにエンターテインメント性が高いと、逆にたまには、何も無い静かな入り江とか、そういう何も無い所にも価値が生まれてきます。

しかし、無いものは無い。そんな楽しいエンターテインメントが無いなら、どうしよう?どうやって遊んだら良いのか?これが最大の問題です。ヨットがどうこう、性能が、云々、こんなエンターテインメントがあれば、多くの方々にとって、それらはたいした問題じゃなくなります。見栄えが良くて、ちゃんと行って、帰ってこれるなら良い。でも、逆にそうなりますと、本当は性能が良いヨットも売れる。

日本で流行らないのは、係留費が高いからだという話もあります。でも、もし、安く留める事ができたら、流行るのか?というのもどうも疑問です。もちろん、係留費も要因ではありますが、最大の要因はエンターテインメント性の不足にあると思います。ヨット、ボートを所有したとして、どうやって遊んで良いのか、何が楽しいの?と想像が簡単では無い。それで、そんな施設がどんどんできるのが最も良いと思いますが、現実はそうもいきませんので、自分で遊ぶ工夫を強いられる。

つまり、ヨット遊びができる人というのは、相当自主性に富んだ人でしょうね。誰も遊んでくれませんから、自分で考えて行動しなければなりません。じゃあ、今の現状でどうやって遊ぼうか?それで、たまにあるレースに参加する、たまにちょっと遠出してみる。それで、合間に仲間や家族を誘って、ピクニックセーリングに行く。まあ、だいたいこんなもんでしょう。ちょっと向こうのしゃれたレストランにカッコ良くのりつけて、おしゃれに決めるなんて事はできないわけですから。

日本のヨット界の衰退を防ぎ、発展させていく為に、一般の多くの方々に乗る機会を与える。係留費を安くする方法は無いか、漁港を開放するフィッシャリーナ計画はどこへ行った。でも、最も効果的なのは、ヨットに乗ると楽しいよという事実が無いといけないわけで、それは何か?エンターテインメント性が無い今の現状で。

そこで、ある人は外部に無いなら、内部に作るという事で、エアコンを積み、冷蔵庫、冷凍庫、テレビ、CDだDVDだ、カラオケまで積んでるのもあります。でも、それでキャビンに閉じこもっても、楽しさも今一なんですね。今度は誰を連れて行くかで悩まなくちゃいけません。一体どうしたら良いんでしょう?招待された方だって、毎回カラオケじゃ楽しくないですよ。

それで、無い物ねだりをしても仕方が無いので、エンターテインメント性では無いのですが、基本に戻って、セーリング自体を楽しもうと考えるわけです。それなら、デイセーラーが最も適していると考えるわけです。ひょっとすると一般日本人の考えるレジャー的要素では無いかもしれません。レジャーでは無く、もっと突っ込んだ趣味の世界です。趣味はある程度突っ込んでやらないと堪能はできませんから、一般レジャーとは違うわけです。レジャーのように考えると、エンターテインメント性が少ない現状では、多分物足りなさが生じます。でも、趣味と考えると、これは結構なもんです。趣味ですから、一般レジャー意識ではできないのです。

さあ、趣味でやるかレジャーとしてやるか?そこで大きく違いますから、ここのところは考えなくてはなりません。レジャーでもできますが、多分、なかなか満足感は得られないかもしれません。エンターテインメント性が少ないからです。趣味としてやるなら、自主的に自分が動く必要があります。欧米はもちろん、趣味の人も居れば、レジャーの人もたくさん居ます。どっちになっても、それなりに楽しむ事ができます。でも、日本はエンターテインメント性が低いので、レジャー派がなかなか楽しめない。これがヨット人口が少ない最大の理由かなと思います。それに趣味の人でも、たまにはエンターテインメントがあれば、それを楽しみたいとも思います。

そこで、ヨット遊びを堪能して頂く為に趣味とする事をお奨めしています。何も完全に移行しなくても良いわけで、レジャー的に遊び、たまにでも趣味的意識を持って頂ければ良いかなと思います。セーリングを突っ込んでやるか、旅を堪能するか、レースを堪能するか?そういうわけで、当社としては、この三つの中のセーリングを趣味として堪能する、というジャンルに力を入れています。何故なら、最も簡単に出来て、それでいて非常に深さもあるから、面白いという事になると思うからです。よくやるピクニックセーリングにちょいと意識を変えることから始まります。

セーリングを趣味として、セーリングを突っ込んでやるにはデイセーラーは非常に都合が良い。それにたまのレジャー的な使い方としてもピクニックも出来れば、ショートクルージングにも良い。気軽だし、操作も楽だし、それでいて性能も良い。これをいかにセーリングして、そのフィーリングに酔いしれる事ができるか?それがテーマです。操船の妙、セーリングの妙、快走から来るフィーリング、そういう事を感じて頂ければ、趣味としては非常に面白いと思います。難しい技術を習得した方だけが楽しめるとしたら、それはつまらん事です。しない方がましです。難しいハイレベルに行ける人は少ないからです。レベルは兎も角、どのレベルでも、それなりの面白さが味わえる事が必要です。

結論的に言えば、多くの方々がレジャーとしてのヨットを望んでいる。しかし、日本はエンターテインメント性が少ないので、どうやって遊んで良いかが、いまいち解らない。それで、楽しんでいる人達は、レジャーからもう少し突っ込んで趣味とする人達ではないか?レジャー人口の方が遥に多い事は言うまでもありません。それで、人口を増やすには、エンターテインメント性を高めるのが効果的かと思いますが、これが簡単では無いので、なかなかレジャー派を引き込む事が難しい。そこで、趣味的にやりたい人達にもっと楽しんでもらって、レジャー派に見せ付けてしまおう。レジャーも結構だけれど、もうちょっとだけ突っ込んで、趣味的になりますと、きっと面白くなりますよ、という事です。そうしますと、ピクニックセーリングの2回に1回ぐらい、ちょっと真剣に走ってみますと、ひょっとしてその時にぞくぞくするような感覚を得るかもしれません。

日本で、ヨットを長い期間に渡って楽しもうと思うなら、レジャー+趣味的な要素を加えていくのが、良いと思います。そこで、もっとデイセーリングをしませんか?と来るわけです。

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