第四十三話 夏から秋へ

ようやく秋の気配がちらほら感じられます。今年の夏も暑かった。水温も上がり、春に船底塗装をしていても、もうかなり汚れている。キールやラダーのエッジ部分、特に金属であるプロペラ部分は汚れが目立ちます。もし、機走が遅くなったと感じたら、またスロットルを上げると黒煙を排くようなら、ペラをチェックした方が良いです。

秋は本格的ヨットシーズンの到来です。暑かった夏が終わり、これからは涼しくなって、気持ちの良いセーリングができます。是非、シーズン前の点検や掃除などをして、スッキリした気分でシーズンを迎えられると良いと思います。各可動部には潤滑剤を吹きかけて、全てがスムースに動くように、気持ちの良いセーリングの準備をします。

秋には温度が下がってきて、もうちょっと深くなると、冷たくなる。夏の生ぬるい風とは違い、気分もピリッとしてきて、適度な、心地良い緊張感を得るには良い。集中力も増してきます。こうなりますと、セーリング派にとりましましては、年間で最高のシーズンになります。この時期を楽しまない手はありません。スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋、食欲の秋、いろいろと形容されますが、何をするにもベストシーズンなのでしょう。本当なら秋休みがほしいくらいです。

この秋、風向風速計やスピード計などを設置したり、シングルハンドに挑戦してみたり、ジェネカーを新調してみたり、何か新しい事を始める事も良いかと思います。セーリングにおいて、ただセーリングしていたのを、メインやジェノアのトラックののブロック位置を調整してみたり、オートパイロット無しでやってみたり、セールトリミングをもっと追求してみたり、走る方角と風向きをもっと考えたり、いろいろトライしようと思えばできる。そういう意欲が湧いてくる時期でもあります。このベストシーズンにそれをやると良いと思いますね。そういう意味ではステップアップの時期かもしれません。

ついでに、今の帆走状態を良く観察してみるのも良い。どんなヨットなのかが解るというのは、改善できるところは改善すれば良いわけですから、自分の走り方を見直すのも良いかと思います。エンジンでの機走という面では、艇の種類によって、そう大きく違ってくるという事は無い。スピードは違いますが。しかし、帆走となりますと、いろいろ違う。そういう自分のヨットの帆走性能を良く観察して、こういう時はこうなるとか、いろいろあると思います。そして丘に上がった時、他のオーナー達とヨット談義です。すると、自分がこういうもんだと思っていた事が、他のヨットではそんな事は無かったり、そういう事が解ります。すると、もっと楽に乗れる方法があったり、ヨットによる違いが解ったりしますので、ヨット談義というのは、楽しくて、面白くて、為に成る。もちろん、良い事ばかりじゃありませんが、そこはそれ、大人の判断で。

オーナー同士の集まりで、ヨット談義をする。それがクラブハウスの役目のひとつ。ここではシングルハンドの方も、仲間がたくさん居ますね。それぞれヨットも違えば、乗り方も違う。互いに乗せてあげる事もできるようになります。すると、世界は広がる。デイセーリングはシングルで乗って、遠いところに旅をするような場合は、大きなヨットを持っている方に乗せてもらう事もできる。もちろん、乗せてあげる事もできる。オーナー同士のクルーの役目にもなります。乗せてもらった時には、相手がオーナーですから、オーナーの指示に従うのがルール。そうやって、いろいろ輪を広げますと、いろんなヨットに乗る事ができますので、いろんなセーリングを味わう事ができます。すると、自分のスタイルがもっと明確に解るようになる、というのは良い事でしょう。

ヨット談義をしましょう。ヨットに乗らないと参加しにくいですから、ヨットに乗って、自分のスタイルを守りつつ、同時に他の世界も聴いて見ましょう。ひょっとすると、何か発見もあるかも。そして、オーナー同士の集まりができる。いわば学生時代のサークルのようなもんです。自然発生的にできれば一番良いですが。それには、係留しているご近所さんだけでは無く、クラブハウスなんかがありますと、そこで寛ぎながらなんて事から始まる。相談もできれば、アドバイスも出来る。相互扶助で成り立つ。オーナーズクラブ?否、ただのその日の集まりで良い。調子どお?で始まる会話。様々な業種からきて、年齢もバラバラで、いろんな考え方があって、損得が無くて、助け合いで、気楽で。ヨット談義をしましょう。秋は収穫の季節と言いますが、秋は始まりの季節と付け加えます。

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