第七十一話 欧米との違い

ヨットを動かすにはパワーが必要です。このパワーは肉体的なパワーでは無く、気持ちのパワーです。肉体的パワーは電動や油圧でカバーできます。しかしながら、気持ちのパワーは別です。大きければ、大きい程、このパワーが負ければ、動かす事ができなくなります。それで、欧米人、シンガポールに行った時もそうでしたが、大きなヨットにはクルーを雇っています。給料払って、毎日掃除させたり、メインテナンスさせたりもしています。そうでも無ければ、自分だけではパワーに負けてしまうからでしょう。

という事は、クルーを給料払って雇わないのであれば、自分で動かす気持ちのパワーが必要です。という事は予算に限らず、そういう自分のパワーに釣り合うヨットのサイズにする方が良いようです。そうでないと、パワーに負けて動かす事ができないし、メインテナンスもできません。欧米では、そういう事をきちんと考えているようです。気持ちのパワーはとっても重要かと思います。

いずれにしろ、気軽に出せる事が前提に必要です。でかいヨットであっても、クルーがいれば気軽ですし、自分のパワーに合うサイズであれば、クルー無しでも気軽です。多分、想像ですが、日本では、このパワーに合わないヨットが多いのかもしれません。とにかく、ヨットがじっとしていて、動かない。でかいヨットの方が楽だと思って、でかいヨットにしますが、クルー無しでは気軽に出す事ができません。それなら、いっそ性能の良い、少しサイズを下げたヨットにして、気軽さを取り戻した方が絶対面白くなると思います。

いろんなヨットがありますが、欧米の買う側の人達は、このヨットはこういう使い方、こういう航行区域で使うにはこれで充分とか、そういう事が解っています。何も、湾内で乗るのに、最高級のヨットで無くても良いし、外洋艇で無くても良い。そういう事が解っているようです。ある人、ボートショーでであった人ですが、自分は湾内を家族で楽しむのが目的だから、これで良い。(本当はあるブランドを指していましたが) 安いのでも充分だとの事。日本ではそのあたりが曖昧です。みんなチャンポン?

そこでひとつ疑問があります。ヨーロッパが統合された時、CE規格というのができました。A、B、Cとかです。この規格の基準が今一解らない。何で、あのヨットがAなの?そんな疑問が湧いて来ます。何か、あるのかな?当社扱いのイタリアのコメット33ですが、カテゴリーはCです。これは沿岸用とでも言えば良いと思いますが、これは造船所が何のカテゴリーで申請するかによります。造船所はこの33フィートサイズ、それも帆走性能を高めたヨットで、外洋に行く事を考えなかった。それで、Cというカテゴリーに申請しました。しかし、同じようなサイズでA(外洋)というのがあります。どう見ても、そのAのヨットより、コメット33の方が造りは良いと思いますが。ですから、この規格には疑問なのです。

もっとコンセプトを明確に打ち出す必要があると思います。車と違って、海には危険が一杯です。その危険を乗り越えて進まねばならない時もあります。それ用に造られているのかどうか?誰でも品質の高いヨットがほしいに決まっています。しかし、品質が良ければ価格も高い。使い方によっては、そこまでは必要無いという事もあります。そのあたりを、きちんと打ち出すコンセプトがあれば、買う側も判断はし易いと思います。25フィートの外洋仕様のヨットがある一方で、どうみても外洋仕様とは思えない50フィートがある。

見た目は重要です。しかし、使い方とヨットが持つコンセプトはもっと重要かもしれません。特に、外洋にいくならです。近場なら、何でも良いとも言えますが、近場でしたら今度はセールフィーリングをもっと重要視したいので、やっぱりコンセプトが重要です。一体、どんな使い方で、どんなセーリングを望むのかというオーナー側のコンセプト、そしてそれに見合うヨットのコンセプトです。

これらがぴったり合う時、気軽にヨットライフを満喫できるようになるのではないか、と思います。

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