第二十二話 小型船舶による統計

小型船舶検査機構の統計によりますと、平成19年度(平成20年3月)における、これまでのプレジャーヨットの在籍数は11,786艇、プレジャーモーターボートは227,482艇だそうです。マーケットとしては、ボートはヨットの20倍です。つまり、ヨットは5%という事になります。

そして、平成20年度、但し、平成20年4月から12月までしか出ませんが、この9ヶ月で、新艇ヨットが82艇、一方新艇ボートは1,941艇が進水しています。世界的にヨットのシェアーの方が圧倒的に少ない。全人口で割りますと、ヨット或いはボートのオーナーは約500人に一人程度、ヨットに関してだけ言いますと、1万人にひとりという事になります。

一万にひとりという割合は実に少ないと言わざるを得ませんが、各オーナーの周りの家族や仲間をヨットに関わる人達として計算しますと、大雑把ですが、5万〜10万人ぐらにはなるでしょう。そこで、せめて、将来は5%シェアーの倍、艇数にして2万艇、これぐらいは行ってもらいたいと思います。

ヨットは確かに景気に左右されますが、モーターボートにしても同じ事、シェアーの10%は不可能では無い。ボートに行こうとされる方の5%の方がヨットに来ていただければ良い事になります。簡単な事?

ヨットとボートの違いは何でしょうか?釣りをする為にボートを購入される方々は、ボートで無ければならない理由があります。しかし、俗に言うサロンクルーザー、そういうボートに対しては、ちょっと見方を変えれば、ヨットになる可能性はあるのではないかという気がします。

サロンクルーザーも稼動率は低いようです。何故そうなるのか?ここには、ヨットのクルージング艇と共通するところがあるような気がします。つまり、航行のプロセス、到着地点での遊び、それに、キャビンの使い方、そういう所に、どうも今一な感がありそうな。

ヨットにしても、近場のクルージングには殆どエンジンで行かれる事が多い。サロンクルーザーも当然そうなります。到着してしまえば、ヨットもボートも同じ。つまり、こういう近場のクルージングというのは、どう扱って良いのか?エンジンで行くなら、ボートの方が遥に手っ取り早いし、楽だし、計算もできます。それで、サロンクルーザーの稼動率が高いのなら、解る。しかし、そうでは無いとしたら、近場のクルージングというのは、一体何なのか?

片道10マイルの距離なら、ヨットで2時間ぐらい。往復なら4時間、日帰りを考え、それも明るいうちに帰る事をかんがえますと、そうそうゆっくりはできません。ボートなら20ノットでも30分ですから、ゆっくりできます。でも、10マイル圏内に、どれだけ行きたくなるような場所があるかも問題です。それで、もっと足を延ばす。ヨットは泊りがけになります。ボートなら日帰りも可能ですが、今度は現地でゆったりする時間が少なくなる。旅先でゆったり感を満喫したとしても、いつも同じ場所では飽きてきますから、また別な場所を探す事になります。

サロンクルーザーの方が、こういう使い方にとっては絶対便利なのです。ですから、ヨットよりボートの方が圧倒的に多い。しかしながら、だからと言って、ボートの稼動率の方が高いかと言うと、そうとも思えません。

つまり、こういう使い方には限界があると思います。楽しく無いわけじゃないが、しょっちゅうは使えない。何故か?多分ですが、道中のプロセスをそんなに楽しんでいるわけでも無く、目的地に急ぎ、目的地頼りになるからではないでしょうか?目的地が面白いかどうかにかかってしまう。当然ではあるんですが。この場合、ヨットもボートも同じです。ヨット、ボートに関係なく、こういう使い方に限界があるという事です。

年に2,3回の近場のクルージング、初年度はもっと多いでしょうが、年数を追うごとに減少していくのではないでしょうか?この近場のクルージングを楽しむには、別荘的使い方が必要かと思います。それも、何も無くても、自分達で楽しみ方を演出できる人、或いは、何も無いのを楽しめる人、そういう条件が必要ではないでしょうか?ところが、日本人にはこれがなかなか難しいようです。別荘に行っても、周辺の何か面白いものを求めてしまいます。それで、別荘地は閑古鳥。

つまり、近場のクルージングを考えた場合、ヨットでもボートでも、年に2,3回使うというのが関の山という感じになりそうです。多くの方々が、こういうスタイルを考えておられると思うのですが、だからこそ稼動率が低いのではないかと思う次第です。

そこでもうひとつ考えますと、ヨットとボートの違いは何か、となりますと、ヨットにはセールがあるという事です。ヨットはセーリングというもうひとつの遊び方があります。そのセーリング自体を楽しむ事ができるのなら、年に2,3回のクルージング以外は、セーリングを遊ぶ事ができる。という事は、セーリングについて、もう少し考えた方が良いという事です。セーリングの面白さについてです。セーリングさえ楽しむ事ができるなら、遠くに行く必要もないし、しょっちゅうでもできる事になります。そして、たまにクルージングに行けば良いわけです。

ボートに行くもうひとつの理由には、ヨットは面倒くさそう、難しそうに見えることです。実は、そうでも無い。入門はやさしく、もっと行けば奥が深いので、それは何年も何年も楽しむ事ができるという事になります。是非、ボートの方、5%の方にヨットへの移行をお奨めします。それでも、という方には当社お奨めのヨットマンズボートなんか、いかがでしょう。

さて、ヨット遊びの秘訣はセーリングにある。セーリングをいかに面白く遊べるかい否かにかかっていると思います。それで、時折、セーリングに集中して、それを確かめてみるというのはどうでしょうか?過去にはそういう経験もあると思いますが、レースするわけじゃないからと、そんなにセーリングを真剣に考えた事は無い方も少なくないと思います。レースをお奨めしているわけではありませんが、走りをいかに効率良く、気持ちよく味わうかを、是非試していただきたいと思います。セールカーブを観察する、シート操作、バング、バックステーアジャスター、トラベラー等々、今まであまり使ってこなかった装備を動かして、どう変わるかを味わう。それは案外今までに無い面白さを提供してくれるかもしれません。ちょっとしたスポーツをやる気分で。

ヨットをやる上でも、便利は必要です。手軽さが大事になります。パッときて、パッと出せる手軽さ、少人数でも、できればシングルでもできる手軽さが必要です。便利は良いのですが、便利さばかりを求めてもちっとも面白くはならないと思います。便利さとのバランスは考える。便利で、手軽で、さっと出せて、縦横無尽に走り回る。それが大事。これが面白くなれば、稼動率はグンとと上がる。クルージング回数も多くなるかもしれません。

セーリングにしてもバリエーションがあります。ゆったりのピクニックセーリングから集中して走る真剣セーリングまで。その時々の風の状態や気分の状態によっても使い分ける事ができる。それに何といっても、遠くに行かないでも遊べる事です。これなど、忙しい方にはピッタリ。サロンクルーザーで2,3時間走り回るより、2,3時間のセーリングは実に充実します。是非、デイセーリングをご検討頂きたいと思う次第です。

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