第六十三話 結局、面白いのは何か?

面白いのは何か?と問われても、まず第一に面白さを求めているのかどうかが問題かもしれません。 ?知らない事を知る事、未知なる体験、要は冒険です。それが面白さだろうと思います。冒険は人を興奮させるし、緊張もしいる事もあります。不安を伴う事もある。でも、それが面白さとセットになっているからには仕方が無い。全部を取るか、全てを諦めるかのどちらかしか無いだろうと思います。面白さを感じたいならば、全部引き受けるしか無い。

知らない事を知る事、新しい何かを経験する事、それらによって成長、進化する事、それら以外に面白さがあるとは思えません。誰かに合って、その人独特の見方を知る。それを面白いと感じる。
面白いね〜、と言う時、それは新鮮な何かに出会った時。それ以外で面白い事は無い。

面白さは自分が良い事と感じている事に対して使う事が多い。新しい何かを見たり、聞いたり、体験したりする時、それを良いか悪いかに分けて、良い方を面白いと言う。面白さが、新しい何かであるなら、知らない事はみんな面白い事になるかもしれません。考え方、捉え方次第で面白さはどうにでもなるのかもしれません。

人は案外、一見たいした事無いような事にでも、面白さを感じる場合があります。でも、その方にとっては、何か新しい発見だったり、進歩だったりするわけで、そういう小さな発見、進歩の積み重ねがエネルギーを生み出す。

これに相反するのが便利さです。便利な機械に出会うと面白さを感じる事もあります。しかし、その便利な機械は、徐々に、面白さを奪い取る。もちろん、体力の衰えを電動ウィンチという便利な機械で補うという事は、役に立つ。それは仕方無い事でしょう。セールを上げるのがしんどくて、仕方なく電動ウィンチにする。仕方なく、便利な機械を導入する。充分に体力があるなら、そういう機械は無い方が面白い。

便利な機械を導入したからと言って、それで、新しい何かができるわけではありません。ただ、自分の手で引いていたのを、ボタンにしただけです。という事は、そこに新しさは無い。よって、面白さをキープするには、便利な機械を導入したら、その分、何か新しい事をした方が良い。便利な機械は面白さを奪い取りますから、その分、何か面白さを見出さなければ、やがては退屈な乗り物になってしまう。楽した分、少し突っ込んだ事とか、何か先に進めるような事を考える。それを導入したから、楽になっただけでは無く、ひとつ先の、これができるようになったと思えるような事をしたい。
ボタンひとつでできるのなら、ならば、今までしなかった微妙な調整など、どんどんできる。これなら、面白さが先に進んだ事になります。

オートパイロットを採用したから、コクピットに座っているだけなら、やがては退屈してきます。それは徐々に、気付かないうちにやってくる。要注意です。舵をオートパイロットに任せたのなら、ヨットはその設定されたコースを忠実に守って真っ直ぐ走る。ならば、その時の風に合わせて、セールトリムに専念する。風向が変わったら、合わせる、風速が変わったら合わせる。これで、先に進んだ事ができる。

面白さは自分の頭や心や体が動く事から得られる。便利は楽をもたらす。楽は動かないという事ですから、楽になっった分、頭や心や体が動かない。それは面白さが減衰することになります。それだけではありません。楽になってしまうと、今度は動く事が、新しい事が面倒になる。これも要注意ではないでしょうか?自分で舵を握って、集中してセールトリミングして走っている。そこにスプレーを浴びても、たいして嫌な気分では無いと思います。しかし、オートパイロットに任せて、コクピットで座っていると、そこにスプレーを浴びると嫌な気分になります。便利は確かに良い。しかし、便利は人を楽にし、そこに留まると、面白さを奪うので、要注意。便利さは、ヨットに限っては、仕方無いから採用する。それによって、次の新しい事ができるから採用する。そういうのが良いのでは無いでしょうか?

本当はシンプルが最も面白いのかもしれません。しかし、クルーや自分の体力などの事もあるので、それを補う為に便利を採用する。採用したら、それを充分に使って、次の事をする。セーリングだけでは無く、冷蔵庫を設置したら、それを使って、冷えたビールを味わうべきなのです。温水が出るようにしたのなら、それを使ってシャワーを浴びて、その便利さを味わうべきです。広いキャビンを採用したなら、それを使って、泊まったりするべきです。 そして、さらに次の何かを考える。

昔、福岡から東京に出張するのは、泊まりだった。しかし、今では日帰りができる。便利になったから、次の仕事をしています。でも、遊びでは、そういう事を考えないで、便利になったからその分何もしない。本当は反対であるべきです。仕事はゆったりできて、遊びは先の面白さを得る事ができる。次の仕事をするとストレスが増える。でも、遊びでは次の事をしないとストレスが溜まる。

という事で、新しい何かを発見したり、出合ったり、行動したりが面白い事。それをする為にオーナーをサポートするのが便利さ、便利はあくまで面白さの為に。

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