第八十話 エレクトリック

最近では、時代の流れか、電動というのが珍しい事では無くなりました。電動ウィンチはもちろん、メインやジブのファーリングシステムそのものが、電動や油圧だったりします。実に便利な世の中です。エンジンの他に、電動のバウスラスターがあり、マリーナから出るのも、入るのも簡単。ボタンひとつでメインを出して、ボタンひとつでジブも出る。ステアリングとボタンさえ押しておけば、セーリングを遊ぶ事ができます。そしてボタンひとつでセールを収納できます。

風向風速計があって、スピード計があって、GPSがあって、そのうち、コンピューターがセールトリミングの指示を出してくれるようになるかもしれません。シートを何センチ引けとか、誰もが理想的なセーリングができるようになるかもしれません。そして、その次は、適切な量を自動的にシートが引かれたり、リリースしたりという装置も、実は既にあります。便利の究極は、何もしないで良いという事になります。

もし、こうなったら、簡単に誰でも最高の走り、それこそプロの走りを体感できますね。一度、こういうヨットに乗って見たい気もします。でも、反面、こんなヨットでは、ちっともうまくならない。遊びとしての表面的なセーリングを体験できますが、内側の進化が無いので、楽しいかもしれませんが、面白くは無い。せめて、調整の裁量は、自分の中におさめておきたいと思います。ここで、引くべきか、出すべきかは、自分の裁量で行う。それが面白さの基本ではないかと思います。便利になればなるほど、工夫はしないし、考えもしない。そこに進化はありません。進化の無いところに、面白さは無い。うまいのが面白いわけでは無く、うまくなっていくのが面白いと思います。

さて、電気はバッテリーが基本です。 そのバッテリーも2個、3個、と増えていきます。そうしますと、エンジン用、その他用分けて使うようにして、いついかなる時もエンジン始動はできるように、エンジン用バッテリーは確保しておく必要があります。という事は、エンジン用以外のバッテリーを使う事と、充電をちゃんとする必要があります。エンジンのオルタネーターで充電する時、選んだバッテリーのみが充電されます。或いは、全部ONの状態であれば、全部に充電しますが、どれかが満タンになりますと、充電を完全ストップしますので要注意です。こういうのを避けて、ひとつづつ充電できる装置もありますし、バッテリーモニターなる機械もあります。

ある艇ですが、桟橋に長期間係留しっぱなしで、その間陸電によるバッテリー充電をし続けていたわけですが、バッテリーは何も使わなくても自然放電をします。それで、陸電を通じて充電器で放電と充電を長期間に渡って実行していたわけですが、それで、ある日久しぶりにオーナーが来られて、エンジン駆けようとしてもかからない。オーナーは充電には安心していたわけですが、実は、バッテリー液が無くなってしまっていました。これも要注意ですね。

これからは益々バッテリーの重要度が高まっていきます。エンジンさえ駆けていれば大丈夫というわけにもいきません。第一、アイドリング程度ではたいして充電もしない。エンジンはオイルの循環という意味では、アイドリングで5分も回しておけば充分かと思いますが、充電目的なら、回転を上げて、長くする必要があります。電気消費が多いヨットなら、バッテリーモニターとか、そういう装置で管理した方が良いかもしれません。電動ウィンチを使うからと言って、エンジンを駆けっぱなしというのも無粋ですし。

ところで、冷蔵庫がついたヨットは最近では珍しくありませんが、これも家庭用冷蔵庫と違って、船に来てからスイッチを入れても、すぐには冷えない。まして、航行中にスイッチオンのままならバッテリーが心配、かと言って、これもエンジン駆けっぱなしも嫌ですね。あるいは、陸電で常に冷蔵庫を冷やしっぱなしというのは、前述しましたようにバッテリー液が無くなるかもしれません。つまり、あまり役には立たないのです。ロングをエンジンで走る時なら良いのでしょうが。それで、エンジンドライブの冷蔵庫というのがあります。これは1時間とか2時間とかエンジン駆けて、冷蔵庫のコンプレッサーを回しておけば、その後1日ぐらいは、スイッチを切っていても、冷えているという優れものです。でも、これは値段が非常に高いです。でも、ロングにも役立ちますね。

ところで、バッテリーの劣化は硫酸鉛が電極板に結晶化して付着するのが原因だそうですが、これが電気を通さず、電極板を覆ってしまうからだそうです。それで、この硫酸鉛を分解する装置を開発したとかで、ホームページを見つけました。これで、かなり高寿命になるそうです。真偽の程は確かめていませんので、興味ある方はご覧になられたらいかがでしょう。無責任ですが。あしからず
HP: http://www.hi-grove.com/

いずれにしろ、我々の生活に電気は不可欠、特にバッテリーは、携帯電話をはじめいろんな所で使われますから、ますます開発が進みます。電気自動車も注目ですね。そういう意味では、優れものがどんどん出てきて、そのうちバッテリーの心配は不要になるかもしれません。そう期待したいですね。そのうち、ディーゼルエンジンに代わって、電気モーターになる日も来るでしょう。実は、7〜8年ぐらい前ですか、アメリカで既存のヨットに電気モーターを設置してたのがありました。ヨットはコンパック27、確か、船底にバッテリーを8個ぐらい積んでいたと思います。これで、7〜8時間走れる。気になるのは充電でした。バッテリーさえ心配無いなら、静かで良いんでしょうが。でも、燃料のように、容量を見て解るようにならないと安心できませんね。

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