第三十六話 楽と楽しさ

便利は楽であります。その楽と同じ字を使って、楽しいと言いますと、また別なニュアンスになります。楽しさを味わおうと思ってヨットをやり始める。しかし、楽をしたいと思うのが人情です。楽しさを得るには何か行動し、エキサイティングな面白さを得るには、もっと何かをしなければならない。しかし、一方では楽をしたいと考える。この二つは同じ字でありながら、180度方向が違う。

GPSを使うと便利です。楽です。それを使わないで、海図を使って、位置を出し、そういうのは楽では無いが、それを使えるようになれば楽しさを味わう事ができるかもしれません。オートパイロットを使えば楽です。でも、それが無いから、自分で工夫して、それ無しでもできるようになったら、楽しさ、面白さが出てくるかもしれません。便利さでは味わえ無い、別の楽しさです。

何も、便利を拒否する必要はありません。単なるわかり易い例としてあげただけですが、このように、人には楽をしたい気持ちと、楽しみたいという気持ちの両方があり、いつも綱引きをしているような状態かもしれません。遠くへ旅をするのは、楽じゃないかもしれませんが、それに見合う楽しさもある。楽をしたいなら、旅なんかしない方が楽です。強風の中をセーリングするのは楽じゃない。しかし、その中を走り抜いた時の気持ちはどうでしょうか?

結局、その綱引きを自分の中でやって、どっちが勝つか?どっちでも良い、勝手な話ですが、そこらあたりを意識してみるのはどうでしょうか?意識して、設置するものは設置する。意識していれば、そこまで、という歯止めをする事もできます。これ以上やったら、面白味に欠けてくるとか、これなしでやってみたいとか、無闇と便利を採用すれば良いというものでも無い事が、意識的にわかるのではないでしょうか?

楽を求める部分と、楽しさを求める部分を意識的に分けておくと、自分の楽しさは十分に確保しつつ、楽する事もできる。オートパイロットを使います。でも、シングルでセールあげる時以外は殆ど使わないようにするとか。本当は、あらゆる部分において、この綱引きが行われている。こうした方が良い。でも、解っていながら、面倒くさいという気持ちもでますね。仕方ありません。意識的にさぼりましょう。意識しておく事が大事かと思います。

楽と楽しさとを意識していきますと、きっと、その先には、自分が本当に楽しみたいのは何かという事が、あらためて認識できるのではないかと思います。意識するというのは、そういう効果がある。という事は、何でも意識してやるとどうでしょうか?疲れますかね?

いらいらしている時、嬉しい時、ドキドキする時、恐怖を感じている時、スリルとして感じている時、何でも意識する。やる気満々の時、面倒くさい時、いつも意識している。それがいつもちゃんと意識できるようになったら、何かがその先にあるような気がします。多分、自分の事が良く分かるのかもしれません。すると、何が面白いのか、少なくとも、他人と同じようにする必要は無くなるし、同じで無いという不安も無くなるかもしれません。自分独自の選択、独自の行動、独自の遊び、そういうのが明確になるのかもしれません。

すると、デイセーラーを選択するのは、何でも無い事になる。実は、かなり多くの方々からご興味をいただいておりますが、多くのケースで、気に入ってはいただいてはいるものの、いまいち踏み切れない方々が実に多い事に気づきます。その一歩が出無い。良いんだけれど、果たして、本当に間違い無いのか?先々で、しまったと思わないか?

押し付ける気持ちは毛頭ありません。押し付けて売れるものでもありませんし、でも、、自分独自の、自分の中から出た気持ちを大事にして頂きたいと思います。遊ぶのは自分ですから。他人じゃない。

楽に出来るというのは大事な事、それで、気軽に出す事ができます。でも、楽だけでは面白くありませんから、やろうと思えば、いろんな走りが出来る。そこが重要。楽は何もしないで良い楽と、もっといろんな事が楽にできるというのとありますね。

次へ       目次へ