第六十六話 小型ヨットの必要性

日本社会の高齢化、ヨット界も例外にもれずどころか、もっと早く高齢化が進んでいるような感じがします。それは若い方々の新規参入が非常に少ない事が原因です。それは、多分、我々が今のヨットの有り方を決めてきたわけですが、そこに一因があるような気がします。

ヨットには、キャビンがほしい、広いキャビンがほしい、独立トイレがほしい、温水が出れば良い、船外機よりインボードが良い、あれが良いこれが良いと言いつつ、気軽さを失ってきたのかもしれません。ひとつ何かがほしいと思う度に、気軽さを失う。それが無いと遊べないかのように。それが当たり前になりますと、ヨットはそこそこ大きなサイズにならざるを得無い。そうすると価格も上がるし、係留料も上がる。若い人達には狭き門にならざるを得無い。

もし、小さくても、セールがあれば最低セーリングして遊べると思うなら、事は簡単です。そういうヨットもたくさんあったら、参入しやすくなるだろうと思います。誰が、船外機は駄目と言ったのだろうか?欧米じゃ、エンジン無しで乗るのも多い。小さなヨットならエンジン無しでもできるだろう。何もディンギーまで行かなくても。聞くところによると、ハーバー20という小さなヨットが、ニューポートというところに150艇もあるらしい。キャビン無しのヨットです。欧米は大きなヨットばかりが目立ちますが、小さなヨットも実に多い。

ヨットに泊まったりしないで、気軽にセーリング遊びをするなら、そういうヨットの方が気楽で良いかもしれません。かえって、家族なんかでちょっと遊ぶにも、費用もかからなくて、若い世代には良いのかもしれません。そういう世界を失いつつあるヨット界、そうしてきたのは我々かもしれません。
バブル期に一気に大きくなったヨット。それを歓迎してきたわけですが、裏にはそういう状況も進行してきたのかもしれません。

大型化もさる事ながら、これからは、もう一度、小型ヨットの普及を考えた方が良いのかもしれません。若い世代が気軽に参入できる世界にする事が必要かもしれません。若いサラリーマンが夫婦で遊ぶ、家族で遊ぶ、家族で旅行なんかするぐらいならよっぽど安い経費で遊べる。そういう環境を創る必要はあるだろうと思います。でも、経費が安いだけでは駄目で、意識が、そんな気軽なヨット遊びを良しとしなければならない。大きなヨットなんか、年寄りが乗るもんだ、極端な言い方ですが、それぐらい必要かもしれません。若い奴らはもっとアクティブに遊んだ方が面白い。そうしたら、年寄りだって、若ぶって、小さいにのあえて乗ったりして。

彼らも、いつかはでっかいキャビンのヨットに乗るぞと思う。それで良いと思います。でも、今は若い時は、小さなヨットでアクティブにセーリングした方が面白い。すると世代交代はスムースに進むようになるのかもしれません。日本全国でそういうキャンペーンなんかも必要かもしれません。若いんだから、そんなキャビン付のヨットで年寄りみたいに遊んでどうする、なんて意識ができるとヨット界の敷居も低くなるのかもしれません。それは、我々が意識を変えなければならない。マリーナの保管料もそういう小さなヨットには特に安く、小型船舶の検査も登録のみにして、その代わり、航行区域の制限をする。まあ、本当は自己責任でも良いのでしょうが。

若い時に、セーリング経験を持てるという環境作り。これからは、そういうのが必要な気がします。そうしますと、マリーナに若い人達がぐんと増えますね。そうしますと活気づきます。雰囲気が変わってしまう。それは既存のオーナー達にとっても、良い事ではないでしょうか。

日本はどういうわけか、大きければ良い、大きいのが良いという風潮が定着してきました。誰がそうさせたのか?誰かが買い換えて小さくしたら、何で?と思う。それこそ何で?大きなお世話なのです。小さいのからピラミッド型で、大きいのまである。それが健全な姿なのではないでしょうか?
そういう事で、これからは、小さなヨット、カヌーなんかも含めて、そういう世界を何とか広めたいものです。小さいヨットはキャビンが無い。けれどもセーリングするには面白い。気軽だし、水面は近いし、そんな意識が広まってほしいと思います。

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