第四十九話 デイセーラー三種類

現在、デイセーラーには三種類があります。デイセーラーとしての特徴を持ちながら、セーリングの方法において少し違う考え方を持っている。共通なのはセルフタッキングジブにして、メインセールを大きくする事ですが、違いはそのセルフタッキングジブにあります。

セルフタッキングジブにジブブームを持つアレリオンは、シングルハンドにおいてでも、セーリングにおける最大の課題であるダウンウィンドが効果的に、且つ、容易に可能となります。一方、セーバースピリットはジブブームを持たず、ダウンウィンドにおいてはジェネカーを使うという考え方です。そして、ハーバーヨットにおいては、この両方を設置可能としています。

ジブブームはシングルにおいても、容易にダウンウィンドを含めたあらゆる方角でのジブセールの展開が効果的に行えますが、ジェネカーという大きなセールを展開するならば、もちろん、その方がエキサイティングではあります。ただ、この場合はシングルハンドにおいては、少し労力を要することにはなりますが、よりエキサイティングなセーリングを求める方には良いと思います。この場合、シングルの方にはジェネカーファーラーをお勧めしますし、或いは、クルーが居る時に展開するかとなるでしょう。

ハーバーヨットではジブブームが標準ですが、別途、バウポールを設置して、ジェネカー装備も可能です。こうなりますと、ジブブームとジェネカーを、時に応じて使い分ける事ができます。この三つのモデル以外にも多くのデイセーラーがありますが、全て、この三種類のどれかに属しています。同じデイセーラーというジャンルでも、セーリングに対する考え方の違いです。

ジブブームというのは、結構昔からあったのですが、以前の物はただ真っ直ぐな棒をジブの下に設置した物でしたが、アレリオンにおいて初めて設置されたジブブームはブームそのものがデッキに設置され回転するものです。オートマチックのウィスカーポールという考え方です。それは絶大な効果を発揮しました。これによって、シングルハンドが容易になったばかりか、セーリングとしての効果も大きなものです。

それでも尚、ジェネカーという大きなセールエリアを持つセールの展開はよりエキサイティングなセーリングを実現します。但し、これには、それなりの技術も必要とします。或いは、クルーの手助けも必要かもしれません。どちらが良いかという問題では無く、何を求めるかという事になります。ジェネカーをファーラーにするというのは、大きな助けになります。しかし、それでも、シングルの場合でしたら、ジブブームでの帆走とは違う緊張感があります。

ダウンウィンドセーリングを気軽に味わいたいという事であれば、ジブブーム。メインとジブの2枚であらゆる角度を容易にシングルで走る事ができる。もっと、エキサイティングなセーリングを求められるのであればファーリング方式のジェネカーを使う。今のところ、このふたつの方法が最も容易に、ダウンウィンドセーリングを味わえる方法かと思います。

ダウンウィンドとまではいかなくても、従来のメインとジブだけでは、上りは良いにしても、徐々に落としていきますと、ジブが思うようには展開できません。セーリングを味わう事を主としたデイセーラーでは、これを何とか克服する必要がありました。そうでなければ、セーリングの半分は大きな労力を使うか、諦めるかのどちらかになります。そして、多くのクルージングの場合、後者の諦めの部分が多かったのではないでしょうか?

そこを解決したのが、ジブブームであり、ジェネカーのファーラーシステムではないかと思います。ジェネカーファーラーはジブブーム程容易ではありませんが、確実に速い。さて、どちらを取るか?

クルージングというジャンルにおいて、セーリングそのものをあまり重要視してこなかったのかもしれませんが、デイセーラーは、セーリングにスポットをあてて、それをどのように取り扱うかを考えています。クルージングであっても、セーリングそのものが面白いと思えるセーリングは、本来全てのヨットが持っていても良い使い方ではないでしょうか?是非、セーリングそのものに集中して乗る時を意識してはいかがでしょうか?レースだけがセーリングでは無い。

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