第五十三話 夫婦セーリング

日本の世の奥様方はヨットに乗られない事が非常に多いですね。本当は熟年になって、夫婦でセーリングできるのが理想的かもしれません。そこで、オーナーは考えます。奥様の為にゆったりしたキャビンがあった方が良いだろうと。奥様もそう考えてしまいます。

でも、乗らない奥様が遠くにまで行くはずも無く、ましてキャビンに居たのでは酔うかもしれません。本当は違うのではないか?奥様は良い気分を味わいたいだけなのです。それなら、キャビンでは無く、風に吹かれてコクピットに居た方が爽快であります。

でも、コクピットに座っているだけでは持って30分。美しい景色にも見とれるのは最初の30分かもしれない。まして何度目かになりますと見慣れた風景になってしまう。 心地良い風を楽しめるのも30分かもしれませんね。何も自分が好きで始めたわけじゃない。旦那に付き合ってるだけです。そこで、奥様の為にキャビンというのはちょっと違うような?

大きなギャレーがあろうが、温水が出ようが、オーブンまでついたコンロであろうが、そんな事には興味が無い。奥様はヨットに来てまで炊事なんかしたくも無い。炊事をすれば後片付け、それなら自宅に居るのと変わらない。変わらないなら自宅の方が慣れていて、快適であります。ところが、奥様はヨットの事は解らないので、キャビンを見る、ギャレーを見ます。それで、造船所もそっちに苦心するわけです。でも、実際は殆ど使っていないのが現状です。

夫婦セーリングは、奥様にいかに楽しんでもらうか?異次元の世界を味わってもらうか?そういうところにあるような気がします。あるオーナーは奥様に舵を持たせて、自分がセールトリミングをされる。これは最も良いパターンではないかと思います。ヨットの操船なんか、世の奥様方は殆どした事が無い。でも、ご存知のとおり、簡単です。一旦、この面白さを味わって頂ければ、異次元の入り口をくぐってしまえば、その後はもっとバリエーションも出てくるでしょう。

こんなヨットには、大きなキャビンヨットよりも、デイセーラーがピッタリです。奥様は気付かれないかもしれませんが、キャビンが世の女性を魅了するかもしれません。でも、どんなキャビンでも、自宅の方が快適なのです。快適キャビンがほしいなら、自宅に居た方が良いかもしれない。ヨットは異次元を体験する、非日常を味わう道具であります。それはセーリングが最適なのです。

是非、奥様に舵を頼んで、その味わいを感じてもらいましょう。できるだけ良い時に。乗せてもらっているという感覚から、乗っているという感覚を味わってもらいましょう。真っ直ぐ走るのが難しいかもしれません。怒鳴ってはいけませんね、その難しさを楽しんでもらいます。そして、上手になっていく様を味わってもらいましょう。

誰もが、奥様や家族、友人を招待する時に、快適さを、爽やかさを、楽しさを味わってもらいたいと思います。それはそれで良いのですが、楽しさはどこにあるのか?広いキャビンに広いコクピット、そこにはテーブルがあって、飲み物があって、云々と考えます。しかし、それらは、みんな陸上でも味わえる。場所が違うという少し違う空間ではありますが、全く違うわけではありません。

楽しさとは、異次元を味わう事、非日常を味わう事ではないでしょうか?それはキャビンには無い、コクピットにも無い、それは操船に参加して、載せてもらってる感覚から、少しでも乗っている感覚を味わう事ではないか?セーリングというヨットでしか味わえない感覚をより感じる事ではないかと
思います。ならば、それがやり易いヨットという考え方もあるわけです。

ヨットに泊まるのが目的なら、大きなキャビン、でも、セーリングして非日常を気軽に味わうならデイセーラーかと思っています。それで、奥様はだいたい遠くにまで乗っていきたくないし、泊まりたくも無い。女性はいろいろ大変なんです。それで、夫婦セーリングには気軽なデイセーラーが良く合うというのが、私の結論であります。

そのデイセーラーは抜群の安定感と、イージーハンドリング、そして良く走る事。舵は女性に、そして私はクルー、ご夫婦でのピクニックセーリングを味わってみては如何でしょうか?ファミリーセーリングは無い。でも、これからは、夫婦セーリングはおおいにあり。天気が良い時に、夫婦でセーリングとしゃれてみては如何でしょうか?

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