第33話 楽しんでいる奴等にはかなわない

何をやるにしても、楽しんでやっている人が居ます。必死に何かを達成しようなんて考えず、
ただ、楽しんでいる。楽しいからどんどんやる。逆に、何をしても楽しめず、必死に何かを求め
ている人がいる。前者は楽であり、後者は苦となる。仮に、何かを達成できても、喜びは一瞬
感激も冷めていく。前者はプロセスを楽しんでいるから、達成する事にこだわらない。だから、
達成しても、すぐに冷めてしまう事が無い。

達成する事を否定はしませんが、あまりこだわらない方が良い。ヨットはプロセスを楽しむのが
良い。何を達成しようとも、日頃、楽しくて仕方が無いと思っている人にはかなわない。かつて
世界一周した人より、今、デイセーリングをしょっちゅう楽しんでいる人の方が充実しているよう
な気がします。

人は頭で考える。楽しさは心で感じる。頭は心にはかなわない。何故なら、頭は本当の自分で
は無いからで、心は私自身なのではないでしょうか。頭は過去の集積です。他人から学んだ理
性です。でも、心は頭さえ邪魔しなければ、本当の自分です。頭では自分自身になれませんが、
唯一、心で自分自身を感じる事ができる。心は楽しむ、頭は不安をもたらす。

前にも書きましたが、ヨットに乗ると頭を使うより、心の方が多く動き出すような気がします。心が
勝つと本当に楽しめる。理想は体が操船を覚え、頭脳は停止、心で感じる。これができると本当
に最高のセーリングができるのではないかという気がします。もちろん、航海術には頭脳が必要
ですが、できるだけ使わない方が良い。必要な時だけで良い。でも、これは日常で行うには非常
難しい、ヨットなら、比較的やりやすいような気がするんですが、どうでしょうか。

社会は頭脳至上主義ですが、海は感じるもの、自然は感じるもの。頭脳では楽しめない。この場
面は楽しい場面だから楽しもうなんて思う奴はいない。それこそ、自然に感じる。楽しさは理屈で
は無い。それで楽しむ人は感じる事を話し、頭脳の人は事実を話す。どちらが面白いかは明白な
ような気がします。

感じる人はもっと感じる為に頭脳を使う。それに終わりが無い。社会では感じる事が疎んじられて
きたような気がします。海では誰でも、通常よりは心が動き出します。だから楽しい。より多く感じ
る人は、より多く楽しんでる。楽しんでる奴等にはかなわないのです。

目次へ         次へ