第73話 文化

日本は長い歴史があります。そして、時代の文化がある。衣食住という基本的な文化も
ありますが、それらが満たされると、さらにそれ以上の文化が広がる。建築物や伝統工
芸品、その時代の技術のレベルが伺えます。そういう物がどんどん途絶えていくのはどう
かと思いますね。文化は国の誇りでもある。ただ、資本主義という経済効率一辺倒の時代
になってからは、そういう経済効率の宜しくない文化は消えつつある。経済万能主義は古い
日本の文化を見捨ててしまうようです。でも、ここ何十年かはそれで良いかもしれませんが、
数百年という長い歴史で見れば、そういうのはどうかと思いますね。もし、過去の文化が無
かったとしたらどうでしょうか。日本は自分達が何者であるかさえも解らなくなるかもしれま
せん。

と言っても、人間が生きている間は文化はあるのです。ただ、どんな文化だったのかというだ
けです。今なら車やコンピューター、建築物、などなど、経済万能主義のもたらし文化が後世
に残るわけです。そして未来の日本人はこの時代を見てどう思うのか。どう思おうと知った事
では無いのですが、でも、やはり日本が長い歴史の中で築き上げた文化を誇れるものにした
いと思うのです。日本は世界に誇る先進国になりました。これは誇りです。それに相応しい、
今度は文化を築いて、残していけば、未来の日本人は世界に誇れる国際人になる。共産主義
は崩壊してしまいましたが、では資本主義が万能かと言うとそれはどうか?資本主義も近いう
ちに崩壊するという人も居ます。資本主義が必ずしも幸福をもたらすものでは無いという事でしょ
う。それに皆が気づけば、次には資本主義にとって代わる何かが生まれる。

世界を見渡せば、日本はまれに見る豊かさを享受しています。経済的豊かさです。でも、文化的
にはそれ程でも無いようです。文化は心の豊かさを表しています。技術は経済効率を高める為に
だけあるし、経済を無視した技術は育たない。でも、こういう技術は心の高さ的には高い物が多い
ように思います。文化が高いというのは、その時生きてきた人達の幸福度でもあるような気がしま
す。心の時代と言いながら、長い不況でそれどころでは無い。でも、考えてみれば、過去より確実
に経済的には豊かになっている。日本は豊かなのです。

それで、再び不況が終わり好況になってくると、経済効率を追いかけることになるのでしょうか。そ
こで、少しは文化的発展も考えていけば、日本人は心も豊かになる。ヨット界を見ますと、安いもの
が売れる。あたりまえですが、お金を持っている人も同じように安い物を買う。そこで、お金を持って
いる人は技術の高い物、本当に良い物を買う義務があると思うのです。彼らは社会的に成功した。
それは皆のおかげなのですから、彼らが良い物を導入していけば、通常は予算が無くて変えない
人達も中古なら買えるわけです。そしてもっと予算が無い人でも、そのまた中古は買える。良い物
は長く、長くもちますから、こういう事ができるのです。本当に良い物を認め、そしてこれらを後世に
伝えていく。皆がその本物の技術を味わう事ができる。これが文化の高さになっていく。未来の日本
人は、過去を見て、この時代の日本人は見る目があったんだなと思う。それが輸入物でも良いのです。
何を導入していったのか、これが文化となっていく。そしてこういう文化が育てば、国内の造船所でも
良い物を造れる。そして過去の日本がそうであったように、ヨットを世界に輸出することもできるように
なるのです。

それで結論です。自分のできる範囲で良い物を買い、大事に乗る。そのヨットを大切に扱い、後世に
残していく。経済効率も大切ですが、全てをそこに判断の基準にするにはどうか。生きているのがロ
ボットならそれでも良い。でも、人間ですから、心を持った人間ですから、心を豊かにするものを基準
にしても良い。だから、皆さん、できる範囲で良いヨットを買いましょう。謙遜なんかする必要無い。
これは自分の為であり、日本全体の文化の為、後世の為、社会の為、未来の為、皆を幸せにする為
なのです。安物、おおいに結構、でも良い物も育てましょう。

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