第85話 これからのヨット

昨日、デンマークのノルディックフォークの造船所から連絡がありました。この2ヶ月で半年分の
艇が売れたそうです。ノルディックフォーク25は新艇ページに紹介しておりますが、ますますオリ
ジナル仕様が求められ、アルミマストとか船内機とか、そういう物を求める方々は皆無になって
きたようです。キャビンは狭い、でもこれが不思議とステータスのような、ヨットを知る者が乗ると
いうような、そんなイメージとなってきた。

もちろん、一般的なヨットも売れていると思いますが、一方で、このようなクラシックなデイセーラー
が数多く建造されているのは、求めているものが明確になっていったせいではないでしょうか。
一般的なヨットは使い方も一般的、まあ、悪くは無い。でも、乗り込んでいくと、もっとこういう部分
がほしいという風になっていくのでしょう。でも、求めた反対側にあるものをあきらめなければなり
ません。これがあきらめられないから一般的になってしまう。でも、乗りこむと必要無い事がわかる
そうなると、コンセプトを絞り込んだヨットの方が面白くなってくる。こういう具合でしょうか。

扱いやすい、セーリングして面白い、クラシックで手入れするほどに美しくなる。ヨットはセーリング
して面白いのが何よりです。セーリング以上に他を優先すると飽きやすい。セーリング以外は他の
事でも穴埋めできるのです。でもセーリングだけはヨットでなければ味わえない。

ヨットを何として乗るか、別荘? それなら居住性重視となるのは解ります。でも、それならヨットで
無くても良いわけです。ただ、数年毎にマリーナを変えておられる方がおられました。これなら移動
する別荘の価値がありますね。これもこれからの乗り方のひとつです。ある場所を目指して、遠くか
らヨットに乗ってくるなんてとんでもない。その場において、飛行機できて、周辺をクルージングし、
そして数年たったら、また別のマリーナへ移動する。実に合理的です。なるほど、こんな使い方もある
のかと思った次第です。

或いは、現役で仕事をしているうちは遠くへは行けない。それなら、現役のうちは近場のセーリング
気軽に出せるヨットに徹する。大きなキャビンよりシングルハンドの気軽さと帆走性能の高さを求め
る。外洋へは引退したら、と希望を抱いている。

仕事を引退した人達には、時間がたっぷり。それなら、ちょっと遠出も考えられる。遠出といっても
沿岸沿いで、のんびり、時間を気にしなくていい。それでもシングルハンド仕様が良いです。こんなに
時間がある人は多くは無い。せいぜい奥様と行ってください。

さて、いずれにしろ、シングルハンド/ダブルハンド、復元性の高いしっかりしたヨットが良い。そして
最も大切な事は。ヨットはしょせん遊び、決して生産財ではない。それでいかなる機能や性能に優先
すべきは好きになること。美しさは必要です。手入れをすればするほど、応えてくれる。それなら、誰
でも手入れしたくなる。手入れすると自分のヨットに習熟する。習熟すれば何があっても安心です。
だから、どんどん乗ります。どんどん乗ると、ますます自分のコンセプトが明確になる。明確になると
どうしたらもっとも楽しめるかが解り、その為にはどんなヨットが良いかが解る。こうなってくると誰より
も充実したヨットライフが楽しめるのです。

ヨットに乗るのは究極的にはヨットを通じて、どれだけ人生を楽しめるか。ヨットが全てでは無いですが、
大きな位置をしめてくる。本当は価格が問題でもなければ、見栄が問題でも無い、速いや遅い、頑丈
や復元性、そんな事は二の次なのです。、最も自分が楽しめる、充実したヨットライフは何か、これを
いち早く発見する。そして楽しんでしまった人が勝ちです。彼らの人生は多いに盛り上がる。
何か一点、こだわってみるのも良いかと思いますね。売れてるから、人が買っているから、そういうのは
やめましょう。自分で一点にこだわってみる。

次へ       目次へ