第一話 レジャーから趣味へ

楽しそうだと思ってヨットを始めます。ちょっと練習すればすぐに、動かすぐらいならできるようになる。家族と仲間と、楽しいひと時。ヨットレジャーの開始です。天気の良い日に、仲間を集めて、海に出る。何と気持ちの良い事でしょうか。そういうヨットの魅力がどんどん知られて、ヨット人口が増加していけば良いのですが、でも、最もそういう場面を手軽にできる小型ヨットに受難がありますね。維持費ですね。これを何とかならないか、と思います。

こういう方々がたくさん増えて、ヨット界の基礎になる。そして、やがて、何年かそうやって過ごして行きますと、何か物足りなさを感じてきます。そのレジャーの先に何かを求めたくなります。そこでやめてしまう人達も居るかもしれません。そこに留まり続ける人達も居るでしょう。でも、そこから先へ進んで行く人達も増えてくる。それがレジャーから趣味へと移行していく人達と言える。

趣味になりますと、ただ楽しいだけでは済まない。もちろん、これまで通り、家族や仲間との集いも楽しいものですが、1年は365日もあるわけですから、やはりもっと何かをヨットに求める。それは面白さという事になります。面白さには、楽しさも含み、ちょっとしたチャレンジなんかも含む。何かにチャレンジして、新しい何かを得る。そこに面白さを感じてくる。

それで、人は旅に出る。レースに興じる。或いは、もっとセーリングに深く入っていく。レジャーがレジャーである時、しょっちゅう海に出る欲求は薄れていく。しょっちゅうやっては楽しさが楽しさではなくなってくるから。新しい発見も無くなるから。月に1回程度でも使えないかもしれません。数ヶ月に1回程度になるかもしれない。

そこで、レジャーから趣味に転じ、新しい発見をしながら、面白いヨットライフを築いていこう。それが、今後の長いヨットライフを面白くする唯一の方法ではないかと思います。その方法は旅でも良いし、レースでも良いし、セーリングでも良い。他の何でも良い。そこには、何らかのチャレンジがあり、発見があり、新しい世界がある。そういう進化をしていかないと続かない。いかにディズニーランドが楽しい場所であっても、毎週毎週は行けません。何年も。それができるのが、趣味に転じる事かと思います。

趣味になりますと、もっと詳しく知りたくなります。ですから、学びが出てくる。それも嫌々やるわけでは無く、積極的に求める学びです。面白さでもあります。ナビゲーションを学び、アンカーの打ち方を学び、気象を学び、操船を学ぶ。或いは、セールを学び、理論を学び、レースのルールを学び、戦術を学ぶ。そこには新しい発見があります。新しい世界があります。

長く続けるには、常に新しい世界を見ていく新鮮さがほしい。10年も20年も、新しい世界を見続ける必要がある。その中で、特に、セーリングそのものに面白さを見出す事を力説してきました。ジブシートとメインシートだけでセーリングもできます。レジャーならそれでOKでしょう。でも、趣味に発展させていく為に、観察をし、バングを使い、バックステーアジャスターを使い、トラベラーを使う。その事は、ただ走っているだけでは無く、いかに走らせようかというオーナーの意図が生まれます。そのいかにを問う時、ヨットはレジャーから趣味になる。

いかにを意識した途端に、レジャー的楽しさから面白さへと変わる。そんな事を考えて、長い間、このTALKを書いてきました。繰り返し同じ事を書いてきました。長い期間に同じ事を続けるというのは、そういう事ではないかと思います。

それはヨットに限らず、何をするにしても同じ事ではないかと思います。いかにを問わないと、面白さは湧いてこない。いかにを問うだけで、全ての扉が開かれる。人は向上心というのがありますから、乗り続けるだけで、そういう気持ちが湧いてくる。続ける事さえすれば、自然にそうなる。乗る回数が減る方向になると、そういう気持ちが出てこなくなります。まずは、回数多く乗る事が重要でしょうね。そうしますと、何気なく乗っているだけでも、そのうち何か新しい発見が必ずあります。そこが突破口になって、趣味の世界に入っていく。新しいフィーリングを感じたら、何か宝を発見したような気分になるかもしれません。

ですから、最も手軽にできるデイセーリングを推進しています。しょっちゅう乗って、新しいフィーリングを得て頂きたいと思います。しょっちゅうできるようにする為にもシングルハンドも薦めています。レジャーと趣味とを使いわけて、楽しさを味わい、面白さを味わって頂きたいと思います。そうしますと、これからの10年は別な意味を持つようになると思います。どうせやるなら。

シートとは別にもうひとつ別の艤装を使う。それが何の意味があるかを知り、使って、観察して違いを知る。もうひとつ増やす。また、もうひとつ増やす。使う艤装は何十個もあるわけじゃ無い。数個です。しかし、それらは相互に関連しあってもいます。深く入れば入る程、その複雑さや深さも解る。もうそこにチャレンジがあります。深さが解るという事は、それだけ鋭い感覚にもなっていますし、観察力も育っていることになります。自分自身も変わっているんですね。つまりは、進化していく自分を面白がっていく事になります。年は取って肉体は衰えるかもしれませんが、でも、自分自身は進化し続ける事ができる。年はとっても、進化を楽しむ事ができる。それはとっても良い事かと思います。

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