第三十五話 視点

デイセーラーに関する考え方は前話の通りですが、クルージングについては、二種類あると思っています。ひとつは、日本一周を含む沿岸の旅、そして、何日も陸には寄らない外洋の旅、全ての方々が、デイセーリングに興味があるとは思えません。旅に対して、その面白さを見出す方々も多いものです。

私も含めてそうなのですが、クルージングに行く場合、どこどこまでと行き先を決めます。そして、できれば明るいうちに到着して、そこで、いろいろ楽しみたいと考えます。道中の仲間との会話、食事、いろんな楽しみがありますが、セーリングという点においては、風の都合が良い時にのみ展開します。それもエンジンを駆けたままの機帆走です。それ以外はエンジンで走る。そうしないと、計算どおり、明るいうちに目的地に到着しないからです。これはこれで良い。

そこで考えました。沿岸の旅を主として考える場合、それもエンジンで殆ど走る事が多いわけですが、それならいっその事、ゆったり走れるボートはどうか?高速ボートははっきり言って疲れます。波に強いボートでも、高速で走れば、それなりの衝撃があります。よって、クルージングスピードを15ノットから20ノット以下、それもエンジン音が煩いのも嫌なので、エンジンを1基がけにして、操船をし易いようにバウスラスターを設置する。そうすれば、ヨットの2倍、3倍のスピードで、その分、行動範囲も広くなります。もちろん、ヨットだからという良さもありますが、一方では、沿岸の近場の旅としては、ボートも悪く無いような気もします。それに、潮流とか、一部では潮のスピードが速くて、ヨットで潮待ちしなければならない場合もありますが、ボートなら、それも不要です。

スピードが遅いと、ボートもゆったり感が出ます。ヨットのように。波に叩かれる事も少なくなる。ヨットのエンジンで行くのなら、ボートの方が良いのでは?これも一案。

同じように沿岸の旅をされる方でも、旅では無い時はセーリングを楽しむ。そういう方々には、いっそのこと、クルージング艇でも、帆走性能の高い、レーサークルーザーの方が面白いのではないかと思います。旅はエンジンで走る。日常はセーリングを楽しむ。セーリングを楽しむとなったら、移動手段という事では無い場合は、やはり帆走性能が高い方が面白いと思います。たまに、レースなんかに出る方にとっても、面白いと思います。

そして、沿岸の旅を長期に楽しまれるのであれば、通常良くある沿岸用のクルージング艇、キャビンは広いし、装備も充実、ジブファーラーはもちろん、メインもファーラーにしても良いかと思いますね。エアコンなんか装備しますと、仮に発電機まで設置する余裕が無くても、行き先にマリーナの陸電があれば、快適にキャビンで泊まれますし、それも良い。

この長期沿岸クルージングをボートでやりますと、いくら燃費が良いとはいえ、ヨットに比べればかなりの燃料は必要です。これが気になら無い方は良いですが

さて、もうひとつは外洋です。外洋は必然的に長期になります。長期になりますと、時化ても逃げれない事もありますから、そういう状況に耐えるヨット、いわゆる外洋艇が必要です。これにも二種類あると考えて良いと思いますが、ロングキールを持つ、重いヨットで、みるからに頑丈そうなヨット、セーリングには鈍いですから、その分、多少ほっといても真っ直ぐ、勝手に走ってくれる。軽風では弱いです。でも、時化ても安心です。

もうひとつは外洋と言っても、帆走性能をある程度は高めたヨットです。頑丈な船体はもちろんですが、帆走性能を高める事で、行動範囲を広くする事ができます。外洋ではありますが、国内沿岸のように、できるだけ島伝いとか、陸によりながらとか、でも一回の帆走は非常にロングになります。夜間航行もあるし、エンジンでは燃料が持たないので、帆走です。

こうしてみますと、考え方次第では、違う使い方も見えてきます。例えば、デイセーラーですが、沿岸セーリングで、1回の航行距離を短くとれば、どこにでも行けます。ウィークエンドに限る事もないし、毎日キャビンで泊まるのが嫌なら、たまにホテル泊まりでも良いわけです。また、外洋艇を沿岸クルージングに使えば、時化ても楽さは全然違います。波たたきも全然違います。

ただ、沿岸クルージング用を外洋には使わない方が良いし、デイセーリングに使っても良いが、帆走性能という面においては、ちょっと劣るので、どうしても、移動にはなりやすいかな?

いろいろ書きましたが、どれが正しく、どれが間違いという事はありません。あくまで考え方の違いです。考え方で、どのようにでもなる。私はこういう風に考える。賛同するか、反対するかは、また別の考え方になります。

考えてみれば、世界は現実にあると思いがちですが、本当は世界は考え方の中にある。だとすれば、考え方はバーチャルです。現実という事実を、バーチャルという仮想で見ています。そして、我々は考え方から逃れて、現実を理解する事ができない。という事は全ては仮想であるとも考えられます。つまり、この事は正しいも間違いも無いという事になるのかな?現実だと思っていることは、自分の理解した現実という仮想である。

デイセーラーは、誰かが、デイセーラーという名前をつけました。だから、我々は、使い方はこうだと理解しました。でも、それは真実ではありません。デイセーラーという言葉を知らない人が見れば、ただのヨットであります。そのヨットをどう考えて、どう使うかは自由です。体験から少しづつ導き出します。そう考えますと、我々はあまりにも名前に捉われています。本当は自分の体験から導き出すのが真実なのでしょうが。でも、名前は全くかけ離れているわけではありませんので、参考程度にはなりますね。

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