第四十九話 無計画の薦め

もっと、もっと気楽にピクニックセーリングを楽しんで頂きたいと思います。ゲストを招待しても、ご馳走なんか考えずに、3時間程度ですから、喉を潤す飲み物さえあれば充分に楽しんでいただけるのではないかと思います。その気楽さの中にもいろんな変化があり、その変化を味わいに行く。

おしゃべりという変化があり、無言があり、風があり、快走があり、ヒール感覚があり、波があり、変化の流れを意識していますと、いろんな変化があり、必ずしも楽しい感覚のみではありませんが、少なくとも変化がいろいろ感じられます。その変化を感じるという事が、全てを生み出す原動力ではないでしょうか。

先日のピクニックは、今にも雨が降り出しそうな感じでした。でも、降っても良いやね。寒いわけじゃなし。雨が降れば濡れたら良い。そう思えば気楽です。同乗した娘も、笑ってます。風が吹きすぎると思えば、帰れば良い。無風で、どうしても漂うだけが嫌なら、エンジンかけて帰れば良い。何のことは無い。

自然の中を走るというのは、自分でもコントロールできないと解っている状態に繰り出して、自然にこっちが合わせる事になります。ちょっと考えて見ますと、いつも何かを自分の思い通りにいかせる為に、いろんな事を計画、実行するわけですが、実際は思い通りにならずに、イライラしたり、悩んだりします。たまに、うまい事行ったら嬉しいわけですが、冷静に考えてみますと、そういう事の方が少ないのではないでしょうか。

ヨットに乗りますと、風や波をコントロールしようとは思いません。できないのは解っていますから。ですから、誰でも、快走はしないでも、思い悩む必要は無いわけです。それって、とっても楽な事ではないでしょうか?風が吹くと、肉体的には多少は疲れるかもしれませんが、精神は楽なのであります。恐怖を感じたとしても、悩んでいるわけではありません。こんな事は陸上には無いわけで、だから、自然の中に居るという事が癒しになるのかもしれません。健康的ですよ。心の洗浄になります。

そこに何かコントロールしようという考えが出てきますと、うまくいかない事があるわけですから、それは陸上と同じになりますね。ピクニックは、何も計画しない行為です。来た風に対応するのみ。
だから、ストレスが溜まるどころか、スッキリします。

今日、無風だったら、また今度行けば良い。1日の単位には無風も強風もありますが、1ヶ月単位、半年単位で、変化の流れを見ますと、いろいろあって、それも良い。

ピクニックセーリングの効用は計画をできるだけしない事だと思います。計画が無いから、その場の状況に合わせて走るのみ、今日のセーリングはどんなかな?ところが、そういう事がなかなかできないんですね。陸上生活ではいつも予定を組んで行動します。それが上手く行くかどうかで、いつもイライラ。そんなやり方では、せっかくのセーリングも台無しです。人はできるだけ多く楽しもうと思って、いろんな計画を立てます。それはイライラ原因を作るようなものではないでしょうか?

ピクニックセーリングは無計画ができる遊び。これが最大の効用を生み出す。どこどこまで行かねば、こんなセーリングをしなければ、そういう事は自然任せですから、それをどうこうしたいと思った瞬間にストレスが生まれる。これでは、日常の生活と変わりません。遊んでいるように見えて、ちっとも遊んでいない。

何も考えずに、今日のセーリング、今日の変化を味わう。快走かもしれませんし、そうでは無いかもしれません。でも、また今度。という余裕があります。最初から、最後まで、気分は軽い。

意識はいつも何かを求めています。快走を求めています。良い気持ちを求めます。それで、どうしたら良い気持ちになるのかを考え、計画します。それが良いと誰もが思う。でも、それらを全て捨てて、それこそ風の吹くままという姿勢を持つと、どんなにか、気が楽になれるか。セーリングでは、遊びでは何も達成する必要など無いわけですから、そういう受身的な姿勢は、案外、味わいを深くします。達成感という強烈な喜びは無いかもしれませんが、でも、あるがままの深い味わいはあります。

是非、ピクニックセーリングをしてください。どうこうしようでは無く、ただセーリングする。変化を感じてくる。合わせるけれども、何もコントロールしようとは思わない。それだけで、何かスッキリ感が出てくるような気がします。

ピクニックセーリングに誰も重きを置きません。誰もすごいとは思いません。人はピクニックセーリングしながらも、いつかは、遠くへと夢を見ます。気持ちは解らないわけではありませんが、それが今のピクニックセーリングという味わいを減じています。想像して、ピクニックセーリングなんかたいして面白く無いと思うかもしれません。でも、この考え方は間違いです。何故なら、自分の頭の中で、面白い事は何かすごい事と想像しています。大きな変化こそが面白さだと思っています。でも、大きな変化には、大きなストレスがある事も覚悟しなければなりません。

それも良いかもしれませんが、何も求めないで居ますと、小さな変化にも気付きます。それが案外楽しい。そこに良い風吹いてきたら、快走を楽しめます。一気に気分が変化します。この変化に、何もストレスは要らない。いつも気楽で、穏やか。そして味わい、楽しむ。ピクニックセーリングとはそんなセーリング。

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