第六十六話 満足感をどこに？
| デイセーラーの事ばかり強調していますが、別にクルージング艇が嫌いなわけではありません。何人かでゆっくりクルージングして回る事ができるなら、それもきっと面白いに違いないと思います。ただ、私以外の多くの業者が、クルージング艇を推進しているわけですから、全体のバランスを取るという意味でも、デイセーラーを強調しています。 広いキャビンに、充実装備、何人かで旅をするなら、クルージング艇はもってこいのヨットになります。しかし、どれだけ頻繁に行うかで、自分の気持ちのうえで、充実感が違ってくると思います。年に一回でも、その一回が、かなりのロングであるとか、ロングでは無いにしても、頻繁であるとか、そういう事が充実度にかかわるのかなと思います。 そのクルージング艇としての本来の充実感があればこそ、日常のピクニックセーリングや宴会等が余裕をもって迎える事ができるのではないかと思います。それが逆で、ピクニックや宴会が主になって、ほんのたまにクルージングに行くという事では、本末転倒と言いますか、ひょっとしたら、どこにも充実度が高まらないで、かすかな不満が残るかもしれません。 年に何回クルージングに行けば、どこまで行けば、満足するかは解りませんが、本来、楽しみたい事に集中して、そこに全てを合わせていく。今年は、ここに行きたい、あそこに行きたい、そういう事を実現しながら、その他は成り行きでも良いのかと思います。 例えば、年に二回、季節の良い春と秋に、数週間程度のクルージングができると良いですね。そこにもし、充実感を覚えるなら、日常では、メインテナンスしたり、近所のピクニックしたり、そういう事でも、何か心には余裕が持てるのではないでしょうか？ もし、そんな時間的余裕が無くて、そんなにクルージングには行けないとするなら、気持ちを切り替えて、日常のセーリングを主として、そこに満足感を得る方法を考え、そして、たまにショートのクルージングにする。 日常のセーリングに満足感を得る為には、もちろんピクニックセーリングをするも、やはり移動という事では無く、もっと感じれるもの、できれば、ピクニックだけでは無く、セーリングをも含めた日常の遊びの方が、面白くなると思います。それで、これがデイセーラーというヨットですよ、と申し上げています。簡単なピクニックにおいても、フィーリングは全然違います。 デイセーラーの別の呼び方として、ジェントルマンズボートという言い方があります。成熟した大人のヨットです。何となく、感じは解ります。 何の気負いも無く、マリーナにやってきては、ヨットを出して、その日のセーリングを味わってくる。快走はこうでなければならないという事も無く、快走だけを求めるわけでも無く、その日のセーリングがどうなのかという味わい。特別な事をしようという事も無く、競争も無く、あわてる事も無く、滑らかに、ヨットとの一体感を味わいながら、セールフィーリングを味わう。その為には、ヨットはそれなりの性能である事が必要で、そういうデイセーラーを、ジェントルマンズボートと言います。 従って、同じヨットには違いないが、クルージング艇とデイセーラーの目的とするものが異なります。オーバーラップする部分もありますが、主たる軸になるものが異なります。要は、旅とセーリングとどっちを充実させるかの問題になると思います。 両方だという方もおられるでしょう。そうなりますと、レーサークルーザーという選択もあります。但し、日常のピクニックやセーリングにおいても、クルーが不可欠でしょう。そのクルーさえきちんと確保できるのなら、そういう選択もあります。ただ、このクルー不足が、今問題なんですね。来たり、来なかったり、チームでやりますと、おそらくレースという目標を持たなければ、全体のハーモニーが取れないかもしれません？ みんな共通の興味ある方向に向かないと、面白く無いという人が出て、来なくなったりするかもしれません。共同で動くというのは難しいですね。統一した方向性を与えて、目標を掲げる。これが何となくになりますと、バラバラになりかねません。それで、レースというのは、格好の目標になるというわけです。 あるヨットは普段はみんなで釣りにいかれます。クルージングしない時は、みんなで釣りに行く。これもみんなが釣り好きで、同じ目標をもっておられます。それでうまく行ってます。普段から一緒に楽しんであるからこそ、旅でもレースでも、一緒に遊ぶ事ができます。たまの、何かある時だけでは、こうはいきません。集まらないかと思います。そうなりますと、もはやクルーとは呼べませんね。 |