第七話 クローズというセーリング 続き

さて、クローズの繊細な走りに慣れたところで、今度はコースという事を考えて見ます。風向が0度から変っても、目標点は0度のまま。そう決めていました。

走り出した時の風向は0度でしたから、右でも左で条件は同じで、とりあえず左からアプローチし、320度で走っていました。そこで、風向が変ります。0度から、355度の方向に変りますと、ヨットは上りすぎになりますから、320度から315度に変針しなければなりません。そうなると、目標点0度から5度分、離れてきます。これは都合が悪い。という事で、ここでタックをします。すると、右舷側では、35度で走れる事になりますから、5度分近くなる。タックをいつするかの判断ができます。

この反対に、風向が0度から10度に変りますと、320度で走っていたののが、330度で走れるようになります。これは目標点0度からしますと、30度ですから、ここはタックはせずにそのままの方が目標点に近くなる。

クローズの走りは、目標点に対して、一直線に走れませんから、ジグザグで近づいていきます。という事は近づいていく角度稼ぎという考え方になります。いかに、目標点のある角度に近い角度で走れるか?右が良いのか左からの方が良いのか?どっちが良いかで、風向の変化具合を観察して、タックのタイミングを見ます。常に有利な方はどっちか?

もし、ブイでもあるなら、その角度を測っておきます。270度? その時の風向は何度?風に真っ直ぐヨットを立てれば、そしてコンパスを読めば風向がわかります。そして、自分のヨットが、風上に対して、何度で上っていけるのかも確認します。風向を読んで、何度かタックを繰り返して、その時の上れる角度をコンパスで読む。仮に40度で上れるとしましょう。風向が、270度なら、40度を足して310度で右側からのアプローチ、或いは、270度から40度を引いて、230度で左からのアプローチ。どっちでも条件は同じ。でも、風向が300度だったとしたら、左舷からアプローチすれば260度で走れます。目標点のブイから10度しか違わない。310度だったら、ぎりぎりダイレクトに狙える。つまりは、風向が310度から、230度の間では、目標点に対してクローズの走りとなり、角度稼ぎの帆走となります。それ以外の角度では、ダイレクトに目標点を狙える。という事は角度は不要。ダイレクトに、一直線に真っ直ぐ走る。

つまり、角度稼ぎのセーリングか、ダイレクト狙いの走りかで、走り方が違ってきますね。角度稼ぎは風向の変化に舵で追随して、風向の変化によっては、タックをして、効率の良い方向を常に頭に入れておく。セール操作は不要のセーリングです。一方、ダイレクト狙いは、舵は目標点に真っ直ぐ狙いを定め、風向が変っても、針路は変らない。その代わり、風向が変る度に、セールの開き具合の角度を調整して走る。このふたつは違う帆走の質を持っています。

質が違うという事で、遊び方も違うわけですから、そこの違いを十分に解って遊んだ方が面白いという事です。セーリングに走る角度という要素を取り入れますと、少し複雑になります。しかし、それが面白さの要素にもなります。取りあえず、頭の中だけでも理解しておいても損は無い。実際のセーリングの時に、ちょっと思い出して、遊んでみてください。

セーリングを遊ぶに、こんな面倒くさい事を考える必要は無いのですが、時に、こういう事を理解しておけば、それらの知識を遊ぶ事ができます。自分の遊びのバリエーションが広がるのではないでしょうか?道路にはいろんな道路があります。真っ直ぐのスピードを出せる道路、山道、下り、カーブをしていたり、それらがバリエーションにもなってくれます。ヨットは風がバリエーションですが、もうひとつ、道の無い海に、自分でコースを引いてみると、もうひとつ深いセーリングも楽しむ事ができるのではないでしょうか?

風向の変化の他に、風速の変化もありました、この変化に遊ぶ事もできますが、もう一歩踏み出して、この変化だらけの中に、変化しないコースという設定をしますと、より風向と風速の変化が強調されます。これがセーリングの面白さではないかと思います。ある一定のコースを走りたいのに、動力である風が常に変化します。その変化をどう活用していけるかが、ゲームとしての得点になり面白さかと思います。

そして、レースでは無いこのセーリングには、相手が居無いので、駆け引きの面白さはありません。しかし、今走っている感触を充分に味わう事ができる。ですから、レースとも違うセーリングだと思います。

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