第七十二話 テーマ

本当に楽しむというのには、集中力を要し、その緊張感とその後の緩和も楽しむ事ができると思います。そうならば、何に集中するかです。何をテーマに遊ぶかという事になると思います。

特に、シングルでは無く、クルーと一緒にヨットの運営をされている場合、みんなが何に興味があって、何をしたいのか?或いは、オーナーがどんなヨット運営をテーマとしているのか、それが明確に出てこないと、ただ、弁当持って、そこらを走るか、どこかに上陸して飯でも食うか、そういう事になり、まあ、最初は楽しかったのに、何だか物足りなさを感じたりするかもしれません。

それで、このヨットは、基本的にどんな事をして遊ぶかをテーマとして、それ以外ももちろんやるでしょうが、基本的テーマはこれです。とみんなが共通した意識を持つ事は重要なチームワーク形成になると思います。

チームワークは、この場合、できるだけヨットに行きたいと、みんなが思う、その気持ちです。この重要度が低いと、今度は来れませんとかになりますね。

このテーマの代表例がレースへの参加でしょう。たとえば、月一のレースに参加する。それがテーマだとすれば、レース以外でも、セーリングするに真剣度が異なります。これは集中力を要します。
3時間のデイセーリング中でも、1時間集中して走るとか、セーリングに対するみんなの意識が違ってきます。みんながこの時は同じ方向を向いて、セーリングを楽しむ事ができます。もちろん、のんびりする事もあるでしょうが、メリハリが効いてます。

レース以外のテーマでももちろん良いわけで、みんなが楽しみたい何かを、メインテーマにしておく。ゲストが来たら、臨機応変に違う使い方もできます。でも基本は何か?

このテーマが無く、何となく毎回乗っていきますと、一年目ぐらいは良いにしても、それ以降、気持ちが持たなくなる。クルーばかりでは無く、オーナーもですね。

テーマをクルージングにするなら、毎年一回はどこかに行く。次の年はあそこ、その次はまた違うところとか、そういうテーマを考えても良い。兎に角、何となく出して、セーリングして、おしゃべりして、ピクニックばかりしますと、メンバーは変わらないので、マンネリになりかねないのではないでしょうか?毎回ゲストが違えば、それはそれで楽しいかもしれませんが。

さて、この事はシングルでも同じだろうと思います。シングルですから、いつでも自由に出す事ができます。ピクニックセーリングをお奨めしていますが、最初はこれでも良い。これも毎回ゲストが変われば、もっと長く続けられる。でも、毎回同じゲストか、毎回シングルなら、それでピクニックだけでは飽きるかもしれません。

ならば、やはりここに自分のテーマを設定してはどうでしょうか?基本的な自分の乗り方、面白さの追求はこれですという何か?そこに集中した時は、面白さを感じる。その何か?この一点を持つかどうかは大きく違うと思います。

そのテーマのひとつとして、シングルでしたら、自分なりのセーリングを追求してみませんか?とお誘いしています。意識の軸はそこにある。それが明確なら、他の違う何かをしている時でも、退屈なんかしません。ゲストが来て、のんびりでも、退屈なんかしない。場合によっては、そのセーリングの面白さをちょっとゲストに味わってもらうこともできます。

あらゆる趣味を考えますと、例えば、絵画、陶芸、ダンス、楽器演奏、何にしても、集中して、そこをうまくなろうと集中します。テーマは簡単。上手くなりたいんです。スポーツでも同じです。チームでやるスポーツでも、うまくはなりたいわけです。プレーできる事が最初の目標で、プレーできたらお終いでは無く、もっとうまくなりたくなります。テーマが明確です。だから、飽きないし、長く楽しむ事ができます。

でも、ヨットに関しては、セーリングできるようになるまではみんな楽しみます。でも、一応セーリングができるようになったら、それでお終い。テーマが消えてしまいます。或いは、滅多に行けない遠くを思います。滅多に行けないなら、日常はどうするの?という感じですね。滅多に行けないなら、それをテーマにするのはどうか?

とりあえずセーリングができるようになったというのは、テニスで言えば、とりあえず打ち返せて続くようになったというぐらいでしょう。テニスの面白さは、この先にあるのではないでしょうか?わずかでも。進歩が見えてくる。そういうテーマが必要なのではないでしょうか?テニスはプレーするだけでも上手くなれる。意識はプレーにあります。

とりあえずセーリングが出来るようになったら、誰かを誘ってピクニックセーリングをします。何度もします。もっと体も意識も慣れます。さて、そのままで良いか?このまま続けるのは、ピクニックセーリングよりも、ゲストに興味がある時でしょう。毎回ゲストが違うなら、それはそれで楽しいし、ゲストとの会話がいつも面白いというのも、続ける要素になります。意識はセーリングでは無く、ゲストの方に向いてます。それはそれで悪いわけじゃない。何らかのテーマを持って楽しんでいるには違いない。自分が既にピクニックに慣れてしまってますから、ヨット以外の興味という事になります。

通常はこうは行きません。毎回誰かが来るとは限らない。毎回ゲストが違うとは限らない。結局、変化がゲストになるか、その他ヨット以外なのか?或いは、ヨットそのものになるのか?

外部の事はなかなか自分の思い通りに、いつもなるわけではありません。それで、テーマを他の趣味と同じように、上手になる事として、自分なりのペースで、セーリングに面白さを求めてはどうでしょうか?

それで、よりうまくプレーできるようになったら、まずは、自分の感覚的な変化にある種の満足感が湧き、ゲストを招待した時に、余裕ができ、ヨット談義も遊ぶ事ができ、いろんな変化を味わっていることに気付きます。セーリング以外にも、いろんな場面で余裕を感じる。そして、またもっと知りたくなります。上手くなるという事の喜びを感じる事は、非常に重要なテーマですね。そうすれば、退屈なんてことは無い。それしかしないのでは無く、何でもします。気持ちは余裕です。

是非、自分のテーマを見つけて頂きたいと思います。そのテーマを決めた途端、心に変化が生じます。ワクワクした感じが生まれると思います。テーマはひとつで無くても、年に1回クルージングに行きます。そして日常はセーリングをテーマにするとかもできますね。ここでも、日常というのは大事なテーマだと思います。

いろんな遊びをもちろんしますが、自分がヨットをやる最も大きな理由、何を最も味わいたいかのメインテーマですね。これさえしっかり持てば、あとはどうにでもなるような気がします。

テーマが無いと、単なるレジャーとなり、レジャーで楽しいと感じれる間は良いが、そのうちそうでも無くなる。そこから先はテーマとレジャーの両刀使いで、両方を高める相乗効果が生まれると思います。メリハリですね。

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