第九十四話 山ガール

最近では、若い女性の山登りが流行っているらしい。何故かは解りませんが、先日、テレビで富士山に登る人達の取材をやっていましたが、実に若い女性が多い。それにしても、富士山には大勢が登る。まるで都会の人ごみのように、列をなして、老いも若きも登っている。

若い女性にとって、山登りの魅力がどこにあるのか解りませんが、何にしろ、そういう人口が増える事は悪く無い。何もみんながみんな、しんどいのは嫌、紫外線が嫌、そういう事でも無いようです。

そういう事をみますと、ヨットは登山に比べたらまだ楽な方です。自分の足で歩かなければ到達しない登山とは違い、乗ってればヨットが運んでこれる。普通に考えたら、その若い女性達がヨットに、もっと来てもおかしくないはずなのに、何故か、少ない。

彼女達にとって、紫外線とかしんどいとかそういう問題では無いのかもしれません。ヨットに行って何があるのか?人は楽しい一時のみを求めるわけではありません。楽だけを求めるわけでは無い。楽が良いのなら、エアコンの効いた部屋で、のんびり映画でも見てた方がましです。でも、人は、エアコンの効いた部屋を出て、何かを求めます。

その何かがヨットにあるのか?そこが問題であります。

女性だからと言って、コクピットに何もせずに座っているだけでは面白く無いんです。登山が好きな女性のように、人は何か面白さを求めます。面白ければ、エアコンの効いた部屋から出てきます。

最初はピクニックセーリングでも良いかもしれません。最初は物珍しさもあります。でも、二度目、三度目になりますと、ヨット独自の面白さを発見しないと、たいした事は無いという事になります。

宴会をします。でも、そんなもんはヨットの面白さではありません。ただコクピットに座っているのも、たいした事は無い。ヨットの面白さは、自分で操船して、その変化を見るところにある。ヨットをいかに走らせるかに魅力があると思います。ですから、山ガールならぬ、海ガールという事になるかもしれません。

男であれ、女であれ、何かをするなら、その魅力が無いとできません。エアコンの効いた部屋から出てでも、やってみたいと思う気持ちが湧いてこないとできません。問題はヨットの魅力なんだろうと思います。

オーナーがまずはその魅力を心から感じ、自分が楽しむ事が第一。そうでないと人には伝わりません。いかにもゲストという感じで乗せて、最後に宴会というパターンは多いのですが、それではヨットの魅力が無い。ヨットの上というBGMが流れているに過ぎません。

ヨットの魅力は操船と、その走りの変化にある。その変化の一部をい自分が起こしているという事にある。自分次第でその変化をコントロールできるところにある。そういう部分を体験的に感じてもらうのが良いんだろうと思います。その上で、宴会がある。宴会が主役になったら、ヨットはBGMなのです。

多くの方々に、外観としてのヨットだけでは無く、操船の実感を得ていただきたいと思います。ひとりでも多くの人が、ヨットの魅力を感じていただければ、その人は自分の体験を誰かに話しますね。5人に話すとしたら、もし、10人の体験者が居たら、50人が聞く事になります。そうやって、全体の気運が少しでも高まれば、ヨットに対する意識も変わる。

でも、まずは、オーナー自身が、ヨットの魅力を存分に体感する事ではないかと思います。もうそれだけで、影響が出てくる。

次へ       目次へ