第百話 世代交代

最近良く感じるのは、オーナーの高齢化と、それに対して次世代の参入が少ない事です。ぼちぼち、高齢化によって、ヨットをやめてしまうかたも増えてきました。世代交代がぜんぜんうまく行ってません。このまま後10年も経てば、どうなるんでしょうか?そら恐ろしい。

高齢化と言いましても、できるだけ長く乗っていたいという希望もあります。ならば、遠くに行かなくても、簡単に操船ができて、気軽にセーリングが楽しめるヨットが良い。誰もが、できるだけ現役で居たいはずです。それが原因かどうかは解りませんが、デイセーラーが求められる所以かもしれません。アメリカでは、ビッグボートからの乗り換えでデイセーラーを求める人が最も多いと聞きます。

日本の高齢化も、できるだけ長く乗り続けるには、デイセーラーはもってこいなんですがね〜。

世代交代がうまく行かないのは、ヨットに魅力をあまり感じないから。フェラーリを買えば、何となく想像できるものの、ヨットではどうか?最近の不況でも、フェラーリは売れているらしい。車は最も身近な男のおもちゃですからね〜。それは解る。でも、ヨットだって、良いおもちゃになりえます。

ヨットの魅力が薄れた理由のひとつは、あまりにもキャビン重視になりすぎたのではないか?そんな気もしないではありません。大きなヨットは魅力的かもしれませんが、キャビンは確かに魅力的かもしれませんが、でも、実際、そこで行う事は家とあまり変わらない。特別な楽しさがキャビンにあるわけでは無い。快適だと言っても、家ほどじゃない。それが、ホテルのように、誰かがサービスしてくれるなら別かもしれませんが、全部、自分が動かなければなりません。キャビンが面白さにはならないと思います。

そういうキャビンを持つヨットで、どこかに旅をするからキャビンが生きてくる。ならば、キャビンよりも、先に旅を強調すべきだし、そこらをちょっとピクニックするぐらいなら、キャビンはあまり楽しいものでは無くなる。

そういう事で、現役オーナーの方々のほとんどが、そういう状況に陥り、ヨット稼働率を下げています。現役があまり乗っていないのに、次世代が魅力を感じて来るなんてのは、ありえない。という事で、これから先の十年、現役の方々が、いかにヨットを楽しんで、稼働率が高くなっていくか?世代交代はそこにかかっているのではないかと勝手に思っています。

キャビンは捨てましょう。べつに撤去するわけではありませんが、この際ですから、重視しない。今さら、旅する人が増えるなんてことも考えられない。それができるなら、これまでもできたはず。一部の方々は行きます。でも、ここでいうのは、一般です。ほとんど動いていないヨット、オーナーです。

稼働率を上げるには、面白さを味わう必要があります。面白いと感じたからこそ、また乗りたいと思います。その面白さは宴会じゃないし、寝泊りでも無い。これは今までで証明されてきました。こんな事はしょっちゅうはやれないものです。

それで、面白さを味わう方法として、デイセーラーを導入してきました。気軽に出せる事、シングルでも行ける事、高い安定性で安心できる事、そして帆走性能が良い事。これまでの、キャビン重視から真反対のヨットです。キャビンヨットが合わないのなら、セーリングヨットはどうでしょうか?という提案であります。

半日あったら、楽しめる。誰かが来なくても楽しめる。出たら、良いフィーリングを楽しめる。ただ、キャビンが狭いというだけです。これまでキャビンを使えなかったのなら、セーリングをもう一度取り返して、セーリング重視で遊んでみたらどうでしょうか?キャンピングカーを買ったが、滅多に、どこへも行かなかったというなら、スポーツカーを楽しんでみませんかてな具合です。

それも、難しいどころか、キャビンヨットよりも、操作は簡単で、帆走性能は高い。セーリングを楽しむにはもってこいなのです。キャビンライフを除いてはですが。

雑誌を見ますと、クルージングスポットが紹介され、たまに男の料理とかも紹介されます。でも、それをやる人は少ないんです。少ないところに焦点をあててもしょうがない。これからは、セーリングに焦点をあててもらいたい。雑誌の力は、私が及ぶところではありませんから。

どうやって、セーリングそのものを気軽に楽しむか?そこが重要ですね。ひとつは、操作が簡単である事。セルフタッキングジブですから、タックも舵操作ひとつ。それで、タックして、何度やっても疲れません。おまけに、高い安定性ですから、強風になっても恐怖感が湧いてこない。重要です。
キャビンボリュームが小さいので、出す時の風圧面積は小さいし、何といっても気軽でいられます。
そして、高い帆走性能を味わえる。

操作が簡単なだけなら、誰でもすぐに乗れるようにはなります。しかし、それだけでは面白くない。
だんだん解ってきましたら、その分、感覚が鋭敏になってきました。鋭敏になってきた感覚に合わせて、ヨットも動いてくれないと面白くない。そこで、大きなメインセールを調整して、いろいろやってみます。すると、それに応じて反応をしてくれる。簡単に動かせるヨットを、求めれば、もっと反応してくれます。スイスイ走れるようになって、ヨットと一体感を感じて、自由自在感を感じて、そのうえ、風が毎日変化します。

その変化に応じて、セーリングのバリエーションが出てきます。そこに至るや、快走だけを狙っているわけでも無く、いかようにも変わる風や波の変化に対して、どういう風に対応していくかという、風と波対、ヨットと自分という遊びが出てきます。これがセーリングの面白さ、ゲーム性ではないかと思います。それを、何人も必要とかでは無く、自分だけでもできる。知識を得れば簡単に試す事ができる。試せば、反応が解ります。その反応はどうだったのか?ゲームですね。ゲームは面白い。
仕事だって、面白い時があります。それはゲーム化しているのではないでしょうか?心の中で。

こうして、ああして、こういう走りを体験して、いろいろ感じて、次は風も違うから、違う事して、またああでも無いこうでも無い。また、いろいろ体験して、感じて。それらを簡単操作でできる。それがデイセーラーです。キャビンを犠牲にした理由はここにあります。

これからも、セーリングの魅力について、書いていこうと思います。最終的には乗らなきゃ感じ得ませんが、1回でも多く、1人でも多く、セーリングをやってみようかなと思われるなら幸いです。

でも、世界はキャビン重視です。最新のヨットは、もっとキャビンがでかくなってきました。だからと言って、それに追随したのでは、これまでと同じ事、最初は乗っても、2年目ぐらいからは、ぐっと乗る回数が減る。これまでに既に体験した事です。そんなに良いなら、もっと乗るはずです。欧米人はそこに面白さを感じる人種です。でも、日本人は違います。証明済みです。

という事で、私が言っている事は、逆行します。一般常識からは離れています。それに、これがメジャーになるとも思えません。マイナーです。でも、マイナーはいつも、メジャーよりも楽しいんです。
メジャーは無難になってしまうからです。

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