第十九話 時間

いろんなエンターテインメントを時間という面で見ますと、だいたい2時間から3時間で完結します。例えば、サッカー、野球、テニス、映画、お芝居、コンサート、2〜3時間というのは、誰もが、ひとつの事に集中して楽しめる時間なのかもしれません。

これ以上長い場合は、それに見合うような面白さが必要で、時間を忘れさせるようなエキサイティングな何かが必要なのかもしれません。そういう事が無い場合、長い時間、同じ事を続けるというのは、苦痛になってくる。という事は、通常は、2〜3時間で、一区切りをつける方が良いのかもしれません。

クルージングは2〜3時間では終わりません。長い、長い時間やります。ですから、クルージングしながらも、何か違う事をします。食事をする。おしゃべりをする。音楽を流す等々。何も無いと苦痛になります。苦痛は我慢です。忍耐が必要です。

2〜3時間のデイセーリングをやるのは、理にかなっています。例え、それがたいしてエキサイティングな日では無かったとしても、ある程度、場面によっては集中してセーリングをする事はできます。その集中できた場面には、それなりの何かを感じていたはずです。それが4時間、5時間にもなる時は、きっとエキサイティングな何かがあった時でしょう。それが無いのにやりますと、きっと苦痛をどこかに感じるのではないでしょうか?

通常はこの短い時間を、さっと準備して、セーリングしてきます。集中もできます。特別な何かがある時は別にして、通常はこの2〜3時間を集中して走る事を意識するのはどうでしょう?集中した、短い時間のセーリングを主として、それが済んだら、別な事をしても良い。マリーナに戻って、ゆったりしても良い。兎に角、2〜3時間の集中セーリングが、きっと面白さを生み出すし、長い年月に渡ってヨットを続ける秘訣かもしれません。

昔ですが、午前に2〜3時間、一旦戻って、午後から2〜3時間と、集中セーリングを楽しんだ事もあります。とっても面白かったのを思い出します。長くすれば良いわけでも無く、本当に楽しむには、集中が必要です。濃縮した時間を持つ事は、面白さを得る良い長さなのかもしれません。

時を忘れるくらいに夢中になれるなら幸福です。でも、そんな事はしょっちゅうは無いし、意図してできるものでもありません。いつものように、2〜3時間のつもりで出て、夢中になって、気がついたら5時間も経っていた。なんて事が、たまにはある。それだけ面白さを得た事になりますが、普通は2〜3時間程度が良い。無理に4〜5時間続けて、苦痛に耐えるくらいなら、2〜3時間で切りあげて、帰ってお茶でもしながら、ヨット談義に花を咲かせる方が良い。その代わり、この短い時間には、できるだけ集中力を発揮したい。長さよりも、濃縮度という事になりますか。

ただのセーリングはそれに値するのか?もちろんでありますね。ただ走っているだけでは無く、集中すれば微妙な変化も感じ取れますから、その感じの変化を楽しんでいるわけですから、またその感じを感じ取るには集中力が必要で、その集中力を苦痛無くできるのが、2〜3時間ではないかと推測する次第です。

ですから、デイセーリングをうまくやれば、ヨットは気軽に楽しめるスポーツになります。シングルでやるも、たまには、同じヨット二艇で、一緒に走るとか、そういう演出なんかも面白いでしょうね。別に競争なんかじゃなくても良い。一緒に走るのも楽しいし、同じヨットならそうは差がつかない。これぞまさしくデートセーリング。

2〜3時間というのは良い時間です。あっという間に過ぎてしまう時もありますね。気楽にデイセーリングを楽しみましょう。セーリングの妙を、セーリングのスピードを、船体のヒールを、飛沫を、波と風の音を、自分の腕を、自分の感じを楽しみましょう。

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