第四十九話 能動的セーリング

我々がいつも求めている事は五感への刺激だろうと思います。刺激を受けて、慣れて、また刺激を受けて。難しい事にチャレンジしても、何度もやるうちに慣れてきますが、この慣れると同時に、刺激も徐々に薄れ、やがては飽きる事になります。きりがないですね。

そこで、ひとつ。慣れて、飽きてしまったとは言いながら、本当にすべてが解ったのかと言いますと、実はそうでもなかったりします。単純な事でも、新たな発見も無いでは無い。セーリングに慣れてしまいますと、どこかに行きたくなります。それは新たな刺激であります。でも、もうひとつの方法があると思います。

慣れてしまったかと思えるただのセーリングに対して、多分、ここまでは、風を受けて、セーリングして、そこからやってくる感じを得て、良いの悪いのと評価してきたわけですが、一歩進んで、積極的に感じる事に集中してみてはどうでしょうか?これは受動的なフィーリングに替えて、積極的なフィーリングを求めるという事になります。

どんなに単純なセーリングであっても、ヨットはすごい変化をしているわけですから、その微妙な変化を感じられないなら、もっと集中して、その微妙さを感じ取る。最もやり易い方法は、舵を持つ手に神経を集中させる事かもしれません。それには、ティラーの方が感じやすいかもしれませんね。

慣れれば慣れる程に、意識は散漫になりますから、そこを敢えて、舵に全神経を集中してみます。
すると、これまでに感じえなかった事が必ず感じるようになる。変化が解るようになる。すると、自分の感性がどんどん磨かれて、人が気付かないような繊細な変化さえも感じられるようになる。
それは積極的に、五感に刺激を与えている事になります。

ヨットの運営方には二つあり、ひとつは外へ外へと刺激を求める方法です。あっちに旅したり、こっちに行ったりです。それともうひとつは、内側の刺激を求める方法かと思います。クルージングは外に刺激を求め、セーリングは内側に求める事かと思います。

デイセーラー推進派としては、積極的な刺激を内側に求め、神経を集中して、微細な変化さえも感じられる感性を鍛えていく事になるかと思います。すると、外から見たら、単純に見えるセーリングも、本人からしたら、すごい変化している事が解る。

ただ、感じていたセーリングを、もっと感じるセーリングへと進む事で、また別の味わいがあると思います。受動的セーリングから能動的セーリングへと変わる。意識がいつも、そこにあります。すると、普段は気付かない事にも気づいてしまう。ネジが緩んでいた。そんな事さえ気付く事があります。

そうやって、感性を研ぎ澄ませていくと、例えば、メインセールをちょっとツイストさせただけでも、その変化が解るようになるのではないでしょうか?わずかな調整の変化が、わずかな変化を造り、その変化を感じる。セーリングして、この変化が感じ取れるという事程、面白い事はありません。

変化こそが面白さですから、その変化を積極的に感じる事で、面白さが増えていく。どこまで感じる事ができるかは、センサー次第なのでしょうが、でも、これは相当なる集中力を要しますね。
でも、これも慣れていきますと、簡単に集中できるようになるかと思います。集中すればする程に、変化を感じ取れる。波の当たり具合、微妙なヒール、ありとあらゆる感覚を総動員して、感じるセーリングほど、面白い刺激は無いと思います。

という事で、ただ感じるという事から、一歩進んで、能動的、積極的に感じようという、そういうセーリングはいかがでしょうか?変化が解るから面白い。変化が解るから、セール調整もわかってくる。解ってくるから、また面白くなり、もっと感じるようになる。そういう循環を得たいな〜と思います。

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