第二十九話 割り切り

クルージングは旅をします。それが長距離だろうが、近距離だろうが、船旅を楽しみます。その為に、良いヨットは何か?という事で、今日まで発展してきました。前話で書いた通り、ボートに近づきつつある?

モーターセーラーというのがあるわけですが、考えてみましたら、スピードは水線長に制限されます。これを超えるには、プレーニングしないと越えられません。でも、ヨットにはキールという大きな抵抗もある。船艇形状がフラットで、軽いならプレーニングし易いものの、それではクルージング艇にはちょっと向かない。

ですから、ヨットである以上、クルージングするも、ゆったりと時間をかけて行うのが常道という事になります。もっと速く行きたいなら、セールを諦めるしかない。つまり、ボートに移行するしかない。

もし、15ノットで航行するなら、ヨットの2倍の速さ。100マイルの距離なら、7時間弱、でも、ヨットなら14時間かかってしまう。もちろん、旅ですから、ゆっくり行けばいい。それが常道であります。
しかしながら、エンジンで走る事が多い昨今、やっぱり速く到着するに越した事は無い。

長距離になればなるほど、この時間差は広がる一方です。一方、ボートはと言いますと、燃料の問題があります。燃料がどんどん消費され、しょっちゅう給油?これも困りもの。それで、ヨットマンズボートは、長距離走行を考慮して、足を延ばす事ができる。

到着してしまえば、同じ事。その地を散策し、温泉を楽しみ、ご馳走にありつく。要は、ここまでの手段が違う。確かに、ヨットで来たというのと、ボートで来たというのでは、趣が違うかもしれません。
でも、そこを割り切って考えれば、ボートの方が快適であります。もちろん、どれでもでは無く、ゆったり感、静けさ等々を演出するヨットマンズボートです。

基本的にボート嫌いなのですが、その理由はエンジン音がうるさい事。それに、波に当たるショックが大きく、体が疲れる事です。同じように思う人居るんでしょう。そういう所から、ヨットマンズボートが生まれてきたのではないかと思います。セールが無いのは寂しいのですが、でも、クルージングという旅にスポットを当てて考えれば、はるかに使いやすいと思います。

ヨットの場合は、デイセーラーに割り切りました。そしてクルージングなら、ヨットマンズボートに割り切る。そう考えています。どちらも、何でもできる万能ではありませんが、でも、割り切る事によって、その本来の目的においては、割り切る以前より遥かに面白く、遥かに快適であります。

デイセーラーに割り切ると言っても、クルージングが出来ないわけじゃありませんが、ボートに割り切りますと、セーリングは全く無しになります。ですから、ひょっとしたら、この割り切りはもっと難しいのかもしれません。でも、それが出来ると、遥かに快適さが得られます。セーリングなら、面白い方が良い。クルージングなら快適が良い。そう思っています。

たまに、ヨットにエアコンなんか、と言われる方がおられます。昔からヨットやってる本格派の方はそう思うかもしれません。でも、クルージングなら、あった方が快適ですから、全然構わない。できるのならそうした方が良いと思います。クルージングには便利と快適があった方が良い。セーリングを楽しむのなら、話は別です。

割り切るというのは、難しい事が多い。でも、それができれば、大いに楽しめる。ヨットやボートが進化、発展してきて、細分化されていく今日、ますますひとつで何でもオールマイティーというのはできません。むしろ、ヨットやボートの方が割り切りを見せている。発展は専門性が出てきて、細分化され、これは作り手がそのジャンルで、もっともっと進化させようとするからです。それは同時に、他方を犠牲にしていきます。つまり、割り切ってきています。ですから、使う側も割り切っていく必要性があります。その方が、昔より、より面白く、より快適なのです。それを、あれもこれもと、昔のまま考えますと、そういうヨットが無くなっただけに、不満が残るかもしれません。

という事で、何を目指すか、そこをじっくり考える必要があります。造船所はボールをオーナーに投げた。そこで、オーナーはどのボールを受け取るか?選択を迫られています。それで、私、デイセーラーとヨットマンズボートというボールを受け取る事にしました。誰が、私が投げるボールを受け取って頂けるか?不安もあり、楽しみもあり。

こだわり過ぎとも言われます。私から言えば、割り切り過ぎ?でも、割り切った方が絶対面白いし、楽しめる。そう思っています。その割り切った部分が、人一倍楽しめるからこそ、他のジャンルはそうでも無くても、ぜんぜん気にならなくなります。自分の楽しみを持っているからです。それが無いと、どうしても、全部に要求をしたくなります。それは無理な話です。ですから、不満が残る。

デイセーリングで、本当に楽しめれば、クルージングにあまり興味が無くなる。行くにしても、友人のヨットで行きましょうという事になり、私のはデイセーラーが良いという事になります。自分の面白さが解っているからです。キャビンで宴会がしにくいとしても、それなら、コクピットがある。他のヨットもあります。

ヨットマンズボートにしたら、セーリングが全くできなくなる。それはそうですが、旅というジャンルに焦点を当てると、どれほど快適になるか。そうすれば、気楽にもなれるし、回数も多く行けるようになる。どっちを取るか?クルージングを最重要テーマにするなら、ボートの方が良い。

理想は、デイセーラーとヨットマンズボートの両方を所有する事です。あくまで理想ですが。

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