第五十一話 ヨットに対する価値観

レースもあるし、クルージングもあるし、そのレースにしてもどの程度かもあるし、厳密に言えば、いろんな事情と、性格があって、一概に言う事はできません。そのいろんな状況において、現在、最も多いのがキャビンヨットであります。その欧米から来たキャビンヨットは、欧米では活躍出来ているのだろうと思いますが、日本では、そうでも無いように見えます。ですから、違う使い方を提案しております。 その違う使い方においては、データを得て、計算し、理解するやり方です。相対的ではあるんですが、でも、客観的な理解はできます。

まずは、自分が何を望んでいるのかです。キャビンを望んで、キャビンを有効利用したいのか?それは、これまでを見れば明らかなように、感情的にはあこがれたものの、実際は使えなかったというのが多くの事実ではないかと思います。でも、クルージングとしては使えたかと思います。

つまりは、多くの方々は、クルージングを楽しみたいと考え、実際に、たまにだろうがクルージングを楽しんでこられた。 年に数回のクルージングを楽しみ、残りの日数は使わない。それが実情ではなかったかと思います。それで良いでしょうか?というのが、私の疑問であります。欧米人はそのクルージング以外の時間を別荘として使っている。なのに、同じキャビンヨットで良いのか?

では、クルージング以外の時にどうするか? それもいろいろあるんでしょうが、私の提案としては、デイセーリングを楽しみましょうという事です。そして、今日の事情であるクルー不足を考慮しますと、シングルかダブルハンドで楽しめるようにする事。

セーリングをターゲットにしていきますと、これまでとは違う見方になります。セーリングそのものが目的になるからです。クルージングでは旅先が目的だったかもしれませんが、セーリングはセーリングそのものが目的になります。すると、どんなセーリングか?という事が重要になります。ただ走れば良いにはなりません。それを、数学的に理解しようという事です。

ただ、人間ですから、理屈で全てが割り切れるものではありませんので、人間の感情と数学的データとの折り合いをどこかでつける事になりますが、それは各個人の感情が絡みますから、オーナー判断という事になります。どんな性能が高くても、嫌いな物は嫌いですから、逆に、好きな物は理屈を超えて好きになります。それはそれで良いと思いますが、客観的なデータを理解しておいたうえで、判断をすると、解ったうえの事ですから、割り切っているのですから、その後の遊びにおいて、ストレスも少ないかと思います。あまりよろしく無いのは、解らないで、勘違いして判断してしまうと、こんなはずではと思うかもしれません。

ヨットの資料を見る時、その仕様が記載されています。全長とか水線長とか云々。詳細なデータまでは出ていない事もありますが、少なくとも、セーリングを意識しているヨットには、サイズ以外にもバラスト重量とか、セールプランとか、そういうデータは出ています。

まず見るのは、バラスト比です。走る物はヨットに限らず、重心が低い方が良い。車もそうです。ですから、全体重量の中で、バラスト重量がどれぐらいあるのか?その比率を確認します。その際、上部構造の重心位置はデータがありませんので、姿を見て、上部構造が大きいか小さいか、高いか低いかで推測になります。そのうえでのバラスト比を考慮して、腰が強いかどうかと推測します。
特に、この事はショートハンドセーリングでは重要なポイントになると思います。

バラスト重量÷排水量= ? % 

次に見るのは、セール面積です。仕様書には、そのヨットの標準仕様であるメインとジェノアの面積が書かれている事があります。これはどんなセールかによって違ってきます。できれば、I J P Eから計算した数値を基本として、さらに、標準仕様でのセール面積との両方を出した方が良いと思います。基本的には、標準セールをそのまま使うでしょうから。基本数値は基本性能が解ります。

セール面積(フィート単位) ÷ (排水量ポンド ÷ 64)3分の2乗= ? 
大きい数値の方が、排水量に対してのセール面積は大きい。

そのヨットが重いか軽いかの判断をする場合、そのヨットのサイズが関係してきますが、走るうえにおいて関係するのは、水線長です。その水線長に対して、排水量がどれだけあるかで、重いか軽いかを判断します。

(排水量(ポンド) ÷ 2,240) ÷ (0.01 x 水線長(フィート))3乗= ?
大きい数値の方が、水線長に対して重い

2艇以上のヨットのデータから、上記を計算して数値を得ます。その比較になります。1艇のみの計算では意味が無いのですが、でも、だいたい他のヨットがどうかと知っているなら、それでも、そのヨットの位置が解ります。コンセプトの違うヨットのデータを計算して、それぞれがどういう性格かと比較するのも手ですし、同じコンセプトの中で2艇を比較するのにも性能差が推測できます。
一番良いのは、現在自分が乗っているヨットのデータと比べる事かと思います。そうしましたら、実感として違いが解るかと思います。

これに加えて、スタビリティーにはフォームスタビリティーというのがあって、幅が広い方が、安定性が高い。でも、どれだけの影響があるのか、数値的にはデータがありません。従って、ここでは、解らない。でも、ちょっと頭の隅にでも、置いておく事にします。さらに、キール形状も異なります。確かに、同じバラスト重量でも、最下部に砲弾型の重りを配して、スタビリティーを高める手法もありますが、これもどれだけ効果を発揮るするのかデータがありません。ですから、これも片隅に置いておく事にします。実際、バラスト比は小さいが、バルブキールで、重量を最下部にしているから、安定性は高いと言われて買ったオーナーが、実際はそうでも無かったという話もあります。基本はバラスト重量だろうと思います。ただ、そういうプラス効果はあるだろうと片隅に置いておきます。

そして、最後には、船体の硬さが重要になりますが、これも数値的なデータはありませんので、せいぜい、構造、工法からの推測という事になります。仕様書には、そういう内容が少し記載されています。

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